【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆悩ましい供給過剰問題◆
[16/10/16]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 経済総合
〇原油相場の強弱観対立、悩ましい供給過剰問題〇
9月28日、予想外の「OPEC減産合意」で1バレル50ドル台に乗せてきた原油相場の強弱観が対立している。サウジを中心とした産油国の価格引き上げ思惑を重視し、「年内60ドル、来年央70ドル」(ヘッジファンドのアンデュラン・コモディティーズ)との見方がある一方、協調体制に懐疑的で、減産までは至らず、イランやナイジェリア、リビアなどの大幅増産が市況を圧迫する(日量70万バレル程度の観測がある)との弱気が対立する。
12日にOPECが発表した加盟国の9月の産油量は日量3339万バレル、前月比22万バレル増。アルジェリア会合で合意した日量3250万−3300万バレルの上限を上回る。一方、8日から13日まで、トルコ・イスタンブールで「世界エネルギー会議」が開催され、この裏で主要産油国間の非公式会合が重ねられていると見られる。今月28−29日に専門家会合、11月末にOPEC総会が開催予定で、合意具体化に向けた動きが続く。ロシアやメキシコが協議に加わっており、ロシアは増産凍結(減産しない)に賛同する姿勢を見せている。
これらを睨みながら、売りも買いも最高水準に膨らんだ(ネットでは買いが増勢とされる)投機筋の攻防が続く。今までは、買戻し相場の色彩だったが、商品相場への影響力が大きい米GSは、買い残が膨らんできているとし、第4四半期の価格予想を43ドル(17年は52ドル)とし弱気派の代表的スタンス。原油相場の動向は米国の「12月利上げ」シナリオにも影響すると見られる。
原油だけでなく、素材・商品相場全般にグローバル経済化による供給過剰感が大きな圧迫要因になっている。国内市場中心であれば、不況カルテルや協調減産が論議されるところだが、OPECと言えども非加盟国が増え、統制力の低下は否めない。需給アンバランスには、新興国・資源国での開発促進だけでなく、IT化などによる在庫水準の一変、物流網の発達(皮肉にも海運も過剰だが)、さらに金融規制強化による商品相場への投機資金流入制限(投資銀行規制)などが複雑に絡む。また、需給変動に中国の影響が大きく、政治攻防(腐敗追及で石炭の令計画一族の山西閥崩壊が代表的)も加わって一層読み難くしている。
ただし、下落一方の局面ではなく、OPECのような協調体制の動き、中国の国営企業集約化の動き(鉄鋼減産の成果は上がっていないが、大きな注目点)、韓国・韓進海運破綻によるバルチック海運指数の急騰など、変節点と見られる動きが交錯し始めている。商品市況の短期的な変動が激しくなっていると受け止められ、高騰が伝えられる石炭相場に、最も懐疑的なのは鉱山会社とされる。為替変動要因も加わるため、市況・素材関連株の売買は短期変動の繰り返しと想定される。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/10/13号)
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