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【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆ドル建て日経平均の上昇が課題◆

注目トピックス 経済総合


〇165ドル近辺の揉み合い脱せず、ドル建て日経平均の上昇に課題〇


先週末は中国軍による米艦艇のドローン調査機回収事件、週明けはベルリンでのトラック突っ込み事件、チューリッヒでのイスラミックセンター発砲事件、トルコでのロシア大使銃撃・死亡事件など、地政学リスクをキッカケに、為替相場を含め米株市場は、高値揉み合い局面に移行している。既に、年末年始の休日モードに入っており、小動き・揉み合いと表現してもおかしくない状況と見られる。

日本株は上昇が止まると、ドル建て日経平均の鈍さが話題になる。昨日は165.26ドル、波乱場面の160ドル割れからは回復しているが、165ドル近辺の揉み合いを脱し切れていない。戻り待ちの多さ、トランプ旋風への警戒ムードを投影している、などと見られることが多い。一般的にドル建て日経平均はファンダメンタルズを投影しているとされ、上昇力の鈍さの要因として、国内成長率の低さ、中国リスクの投影、日本企業の収益力の低さ(経営戦略の差や自社株買いの少なさなどが指摘されることが多い)、さらに国内投資家の層の薄さ、そもそも日経平均の構成内容の悪さなどが指摘されることがある。悲観的な論調に使われることが多い。

その一端で、日銀新型ETFの低迷がある。9月の長期金利固定策導入で劇的なドル高円安効果をもたらしたところで、本日まで開催されている今年最後の金融政策決定会合は無風との見方で話題にもならないが、4月に導入した設備・人材投資支援の新型ETFの成果をどう見ているか、聞いてみたいところだ。新型ETFは日銀が連日12億円購入し続けているが、設定されたETFは6本、16日時点の時価総額は1792億円にとどまる(50%の購入上限があるので、買いきれず、他の指数連動に購入が振り向けられていると言われる)。最も規模の大きい「MSCI日本株人材設備投資指数」ETFの組入れは、医薬品11.8%、通信11.7%、銀行7.3%など、ディフェンシブ系に傾いていたことも運用低迷の一因と見られる。総じて、日本企業は日銀の意気込みに応じていない印象を受け、政府の成長戦略も空回りしている観がある。

ただ、昨日、大型M&Aが相次いだ。一つはキヤノンの東芝メディカル買収が完了したこと、もう一つは石油精製業界のJXHDと東燃ゼネラル石油の経営統合、出光石油の昭和シェル石油株取得を公正取引委員会が認めたこと。二つとも中国の影がある。キヤノンの買収が遅れたのは中国独禁当局の審査遅れではないかと噂され、石油業界で国内50%超のシェアを容認したのは、中国などとの競争激化(中国政府は来年、独立系石油精製業者の燃料輸出規制枠を撤廃する。鉄鋼に続き、安値競争となるリスクがある)への対抗措置を意識した可能性がある。中国は、トランプ対抗策の意味合いもあるのだろう。英国に外交トップを派遣、ノルウェーと関係正常化(2010年のノーベル平和賞以来、凍結されていた)、海外自動車メーカーへの規制をチラつかせ、反腐敗問題では独立新機関設立への動きなど、展開を速めている印象だ。

日本企業への見方を投影するドル建て日経均には、中国情勢なども含めた総合的な評価の観点で見る必要があろう。当面、日経平均は165ドル×ドル円115円=18975円、170ドル×120円=20400円のゾーンが目安になると考えられる。


以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/12/20号)




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