【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆どこまで織り込めるか、中国温風◆
[17/04/23]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 経済総合
〇高めの中国GDP、日本企業に恩恵〇
中国の1-3月期GDPが発表された。巨大国で何故こんなに早く発表できるのか、地方政府の計画を集めただけではないか、と根強い批判があるが、目標の6.5%前後を上回る+6.9%となった。+21%の財政支出と+35.7%の個人向け住宅ローン残高が牽引する旧来型経済成長パターンが復活した。5年に一度の幹部人事が行われる秋の共産党大会に向け、経済成長を「演出」しているとか、国民の不満抑制のため成長優先に舵を切ったとか、やはり構造改革や「ゾンビ企業退治」には踏み切れない体質だとか、様々な指摘。批判が渦巻く。先行き明るい展望として、織り込めないのが市場の悩みであろう。
少なからず、日本企業の3月期決算でも押し上げ要因になると見られる。破壊的な鉄鋼安売りなどの一巡、資源・資材価格の押し上げ、中国スマホ向け電子部品の伸長など、アチコチで(間接的な東南アジア需要増を含め)輸出ないしはアジア子会社の成長として投影されるものと考えられる。14日時点のTOPIXベースの予想PER(株価収益率)は13.2倍に低下している。北朝鮮情勢などのリスク回避の圧力を強く受けているが、中国効果が加わった企業業績の好調持続を示す決算発表に向かうと見られる(3月決算が終了するのは5月22日の東芝決算まで掛かる)。
ただ、依然、中国経済の先行きに悲観論も強い。一つは不動産市場の過熱抑制。中国株で不動産株の一角は年初来上昇率が70%を超えているそうだが、政府が規制強化に動くなか、全国展開の大手が有利との見方が背景にある。鬼城(ゴーストタウン)が全国各地にあり、中国経済不調のスタートとなった15年8月の天津大爆発による天津新都心も工事中断、廃墟のままと言う。そこに新たな新都心計画(雄安特区)が加わる訳で、歪さは否めない。借金過多の構図も潜在的な大きな問題で、大手銀の新規貸し出しが絞り込まれ始めているとの見方が出ている。人民元安を防ぐ資本規制と相まって、余剰資金が中国国内に封じ込まれるミニ・バブル構図の動揺にも注意する必要があろう。
これに、米国との「100日計画」交渉が加わる。米財界には、今までの中国政策を見ると、100日では何も変わらないとの悲観的見方が強い様だが、中国側にもプランがある訳ではなさそうだ。成長優先で、ゾンビ企業退治すら棚上げになっていると見られており、対米輸出構造が大きく変わるか不透明だ。米中交渉が不調の場合は、日米交渉にも余波が及ぶと見られるので、予断を許さない。
北朝鮮情勢の不透明感も加わる。17日、米国務省高官は「中国が北朝鮮に圧力を加える明るい兆しが見られる」と発言したが、月末軍事行動説、金正恩亡命説など、様々な憶測が乱舞している。中国でも最も不況色が強いとされる東北部(旧満州)への影響が大きいだけに、北朝鮮封鎖状態にどこまで耐えられるか、極めて不透明だ。
個別には中国事業から撤退する企業、中国事業を強化・拡大する企業と明暗が分かれる。中国経済の影響が増しているのは変わらないので、全体評価と言うより、個別企業の業績評価として「中国温風」を見て行くことになると思われる。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/4/18号)
<WA>