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【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆同居する高所恐怖症◆

注目トピックス 経済総合

〇方向感に不透明さ、高値警戒も残る〇

先週の日本株は、TOPIX上昇率0.28%、日経平均高低差259.82円の狭いレンジの攻防となった。前週比値上がり23業種、値下がり10業種。値上がりは、建設+4.51%、空運+3.02%、2%台で紙パ、医薬品、陸運、海運、不動産の5業種。総じて、買戻しないしは出遅れ物色の動き。値下がりは鉄鋼-3.36%、非鉄金属-2.92%、ゴム-2.68%。素材価格の下落が懸念された格好。前月比ないしは6ヵ月前比とは一致しないので、トレンドが形成された訳ではない。当面、個別物色地合いの高値揉み合いが想定される。

最も特徴的な動きは、買い進まれてきた米ハイテク5銘柄(アップル、フェイスブック、アルファベット(グーグル)、アマゾン、マイクロソフト)の調整。15日時点で約1200億ドルの時価総額を失ったが、市場全体は崩れなかった。週末にはアマゾンによる米高級スーパーホールフーズ買収(137億ドル)が発表され、アマゾン株が買われ、ウォールマートなどが急落した。5銘柄への集中買いは先行き不透明感の表れでもある。多少の波乱があったとしても、米代表5企業の躍進が続くとの安心感が集中度を高めたと考えられる。13日発表のバンカメ・メリルリンチの月間ファンドマネージャー調査では、「株式は過大評価されている」と見る投資家は44%(前月37%)、過去最高(ITバブル期を上回る)となった。ネット関連株が「割高」としたのは約57%、「バブル状態」は18%。「米株が最も割高」84%。ただ、それでも市場に付いていかないといけないので、ハイテク関連株「オーバーウェート」37%(前月33%)とポジションを増やしている。

調査は急落直前(2-8日)で、FOMCでの追加利上げも織り込んでいないが、現状でもそれほど大きく変わっているとは思われない。微調整が繰り返されながら「株式シフト」が続くものと考えられる。むしろ、5企業が代表するIT化、AI(人工知能)化の流れ、景況感(インフレ観)の攻防が強まる可能性も考えられる。

もう一つの攻防軸は米金利動向。週末の米10年物国債利回りは2.1531%。昨年11月のトランプ当選時1.8%水準から、0.75%の利上げ分を加算すれば2.75%、12月分を織り込んでいたとしても2.3%水準が妥当との見方からは低いレベル。この日は5月米住宅着工件数が年率換算で前月比5.5%減と8か月ぶりの低水準に落ち込んだことが要因。消費者物価指数、小売売上高など軒並み弱く、9月以降の利上げシナリオに懐疑的見方が強まった。債券が買われると利食い資金が株式にシフトするので米株の基調は崩れない。反面、米利回り低下はドル安を招くので、日本株などの基調は強くならない。が、一方的に流れる訳ではなく、債券強気派が目論んでいるとされる10年債2%割れに一気に持って行ける状況でもなさそうだ。

これらが高値膠着感の背景にあると考えられ、本日から始まるブレグジット交渉(1年前の大波乱要因)、米中外交・安全保障対話(21日)、EU首脳会議(22日)、都議選告示(23日)など、政治攻防の影響を測ることになろう。なお、安倍内閣の支持率急落が報じられている(日経49%、共同44%、元々低い毎日は10ポイント低下の36%)。加計問題、テロ準強行、憲法加憲提案などに高齢者を中心にアレルギーが強いためと見られるが、北朝鮮情勢の緊迫感が薄らいだこと、生活者レベルの景況感改善が進まないことなども要因と考えられる。内閣改造などの推測が飛び交い始めているが、衆院解散に向けての本格攻防は都議選後と見られる。



以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/6/19号)



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