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元外交官に聞く中国共産党によるオーストラリアへの浸透工作(1)

注目トピックス 経済総合
 オーストラリア(以下、豪州)メディアのフェアファクス・メディアとオーストラリア放送協会(ABC)時事報道番組「フォー・コーナーズ(FourCorners)」は6月上旬、双方の共同調査で、少なくとも5人の中国系人物が政治界への巨額な政治献金と賄賂を通じて、同国の内政に干渉したことについて、50分超の番組で報道した。

 この5人は諜報員、富豪、中国企業会長など。具体的には、米国と豪州情報機関が中国の諜報員とみなした厳雪瑞、豪州政界に巨額な政治献金を行う中国系億万長者の周沢栄と黄向墨、豪州軍事要衝のダーウィン港を99年間借りた中国企業の嵐橋(ランドブリッジ)集団会長の葉成。

 同調査によると、中国共産党は豪州にいる留学生や中国系住民のコミュニティや海外中国語メディアを操り、各国の政治家への政治献金などの金銭取引を通じて、豪州の主権と国家安全に害を与えた。豪州首相は、外国人による政治献金に関する不備に関して今後立法する方針を示した。

 豪主流メディアの報道に対して、駐豪中国大使の成競業氏は16日「雲をつかむような話だ」と非難した。中国外交部の華春瑩報道官も5日「根拠がない」と否定した。

■中国共産党は2004年から豪州への浸透戦略を制定

 このほど大紀元の取材に応じた、駐豪シドニー総領事館の元一等書記官でベテランの外交官・陳用林氏は、中国共産党がいかにオーストラリアに対して浸透工作を行ってきたのかを紹介した。

 陳用林氏によると、2004年8月から中国共産党が中国の周辺大隣国として戦略を立ててきた。「目的はおもに2つ。一つ目は豪州の資源だ。資源国である豪州を手に入れば、安定な資源供給を得られて、中国共産党にとって今後20年以上の経済成長を保障できる。この狙いからみれば、中国共産党はほぼ目標達成したと言える」と陳氏が話した。

 「2つの目的は、台湾問題をめぐる戦略的必要性から。中国共産党の短期的な目的はおもに、中国本土が台湾との間で軍事行動が起きた場合、豪州政府が台湾の同盟国である米国側につくことを防ぎ、米豪安保条約を発動させないようにする。中国当局は、豪州政府に対して、より独立した軍事外交政策を行うことを支持してきた」。

 この影響を受けてか、ポール・キーティング元首相を含めて、現在、豪州政治界では「米国との距離をとり、より独立した外交政策(実は中国共産党寄り政策)を行おう」とか、「米トランプ政権は豪州を捨てた」などの意見が聞かれるという。

■象徴的なダーウィン港の99年リース

 陳用林氏は、中国当局が欧米諸国の多くと戦略的パートナーシップを結んできたが、なかでも最も「成功」しているのは豪州だと指摘。典型的な例は、中国インフラ関連企業の嵐橋集団は2015年10月、豪州ノーザンテリトリー州との間でダーウィン港の99年のリース契約を結んだことだ。

 ダーウィン港とケアンズは、豪州北部の最重要な軍事基地だ。豪州の地理関係から、隣国は北部にあるため、ダーウィン港は外敵の侵入を防ぐ主要な要衝となっている。

 「しかし、おかしなことに、中国企業がダーウィン港のリースに関して、豪州政府と国防省はあっさりと承認した」と陳氏が言う。地元メディアが報道すると、豪州政府は「国家利益を売った」と国民から非難の声が集まった。

 近年、中国当局が南シナ海への進出や、フィリンピンとの間で対立が高まっているなか、豪州政府の動きは国民に不可解に映った。「中国当局の動きは米豪同盟関係、豪州本土にも大きな脅威であるはずなのに」。

 また、中国政府系ファンドである中国投資有限責任公司(以下、中投公司)はメルボルン港の主要株主の一人であるため、以前から豪州国民から関心が集まった。現在、同国西部と南部に多くの鉄鉱石などの資源土地や牧場は、中国の国有企業や高官子弟が経営する企業に買収されている。

 特に、同国の不動産市場では中国からのホットマネーが流入され、不動産価格が急上昇した。現在、ニューサウスウェールズ州やビクトリア州の住民だけではなく、中国系移民たちも、地元の住宅価格の急騰に不満を持っている。

■3つの中国の情報機関が豪州で活動

 陳用林氏は、中国当局が豪州で諜報ネットワークを築き、現在3つの情報機関がそれぞれ活動しているとの認識を示した。1つ目は人民解放軍の総参謀部。2つ目は国家安全部。3つ目は公安部だという。

 総参謀部はおもに、軍事戦略、先進技術武器、ハイテクノロジーの面で情報収集と人員育成で活動をしている。「総参謀部は密かに動くことが多いため、中国系富豪は総参謀部の人員であると考えられる。彼らははほとんど、単独で行動している」と述べ、国家安全部の人員である可能性もある。

 国家安全部の任務は反諜報・反スパイだ。これは、大使館と領事館と中国資本企業での反諜報活動、(高官らの)亡命や外国勢力の浸透工作、現地でのネットワークの設立などを含まれる。同時に、国家安全部は現地国家政府の政治状況、政府高官や議員らの個人情報も収集している。さらに、現地の中国系住民や留学生、特に1989年以降の新移民や富裕なビジネスマンから工作員を育成している。

 各情報機関が活動する際、費用不足が生じれば、高官子弟や富豪から費用を補ってもらうことがあるが、一般的には駐在大使館と領事館が「必要な資金を提供する」という。

 陳用林氏によると、現在豪州にいるプロの諜報員は約300〜500人で、大使館にも諜報員はいる。

 さらに「500〜700人のセミ・プロの諜報員がいて、普段はさまざまな組織、業界、豪州政府の機関など、別の仕事についている。他に一般的な情報ソースも数えきれないほどいる」と陳氏が話した。

■中共統一戦線部 クリントン元米大統領を招き、台湾統一への支持について講演させる

 人民解放軍の総参謀部、国家安全部、公安部のなかのそれぞれの情報機関は、中国共産党中央統一戦線工作部(以下、統戦部)と連携している。「統戦部はおもに、支配下のネットワークを他の情報機関に提供し、人員育成と拡大に有利な環境を提供している。統戦部の「平和統一促進会」はその一例に過ぎず、世界各国にある支部を通じて活動している」と述べた。

 豪州には「豪州中国平和統一促進会」と「シドニー中国平和統一促進会」がある。「今回、豪州主流メディアに取り上げられた中国系出身議員の王国忠は『豪州中国平和統一促進会』の副会長だ。豪州の3人の元首相はこの組織の顧問となっている。しかも、『豪州中国平和統一促進会』は過去30万ドルを使って、クリントン元米大統領を招き、中国当局による台湾統一への支持について講演を行った。」

 しかし、この3つの情報機関は、1つにまとまることがないという。なぜなら、1つにまとまると、諜報活動が明るみに出る可能性が非常に高いからだ。諜報員の中に、公に動いている者もいれば、密かに活動している者もいる。

 陳氏は「共産党が地下活動を最も好む。実に統戦部関係者は皆表で動いている。しかし、豪州メディアに報道されている中国人富豪の周沢栄のような人らは、普段『平和統一促進会』に参加していないが、秘密に動いている。諜報員たちはそれぞれ演じる役が違うが、暗に連携している。特別なプロジェクトでは合同に行動することもある」とした。

 どのような場面で、各情報機関が連携するのだろうか。陳氏によると、国内の社会安全を維持する面では、各情報機関が共同で動くことがある。「公安部による海外に逃亡した汚職官僚を中国に連れ戻す、いわゆる『キツネ狩り行動』では各情報機関が連携を行っている」という。

 さらに、陳氏は「汚職官僚が米国、EUなどの民主国家に逃亡した後、情報機関に派遣された工作員は、同官僚を帰国させるために、その親族に対して脅かし、特にその子供を拉致することがしばしばがある。公安部の海外情報ネットワークはおもにこのような任務を行っている」と明かした。

 陳用林氏はかつての経験から、中国当局が密かに豪州政治家に渡している賄賂の金額は実に、メディアに報道された政治献金の金額より大きいとしている。

(つづく)

(記者・駱亜、翻訳編集・張哲)

【ニュース提供・大紀元】




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