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【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆習統制強まる◆

注目トピックス 経済総合

〇有力後継候補失脚、金融統制強める〇

事前の報道は少なかったが、14-15日、中国は5年に一度の全国金融工作会議を開催した。毎年末に開催される中央経済工作会議に比べて注目度は低いと見られてきたが、15年夏の天津大爆発、人民元切り下げ、株価大暴落などの混乱を防ぐため、金融システムの管理強化を打ち出すと見られていた。通常は首相が仕切るが、習主席の演説予定がアナウンスされ、緊張が高まっていた。

大きなニュースとなったのは、14日夜、会議に参加していた重慶市トップの孫政才氏が拘束・解任されたこと。孫氏は表面上、無派閥。団派の胡春華・広東省トップと並んで、習後継の有力候補の一人とされていた。後の報道を見ると、温家宝前首相に近い、あるいは夫人が既に失脚した令計画氏夫人と密接などが伝えられている。後任には習主席側近の陳敏爾・貴州省党委書記(習主席とは浙江省で部下)が任命された。

今秋の共産党大会では、常務委7名のメンバー交代とともに、習主席の5年後の後継候補も指名されると見られているが、習主席は後継候補を指名せず、独裁体制を強化するとの見方もあった。今回の動きはその見方を強めることになる。小平が敷いた10年交代路線を崩すものだ。その最大の敵は江沢民派・上海閥と見られてきたが、団派(共産主義青年団)にも矛先が向かっている。11日には、胡錦涛氏に近いとされた前甘粛省トップの王三運氏が規律違反で調査を受けていると報道された。

金融工作会議では、国務院直轄の「金融安定発展委員会」を設け、銀行、保険、証券と分かれた監督体制を一括する体制を敷いた。膨れ上がっているシャドーバンキングの規制強化(成都の調査会社によると、第2四半期の理財商品発行本数は2万9947本、1‐3月比16%増)、国有企業改革(12日付日経報道によると、国有企業の9割が不正会計)、一向に進まない「ゾンビ企業処理」、金融リスクを見逃した担当者の処罰などを掲げた。その一環か、不動産最大規模の大連万達集団に激震が走っている(手持ちレジャー施設売却、海外事業頓挫など)。

習主席は、「市場開放を加速させ、海外からの投資を促進するため行政上の障害を取り除き、リスク回避へ金融規制を強化する必要がある」と演説。輸入を拡大、輸出を安定維持、人民元の安定、中国経済の高度化、消費者の権利保護、外国企業の公正な取り扱いなども主張した。開放分野は乳児関連製品、高齢者ケア、建築デザイン、会計、監査、物流、電子商取引などを挙げた。

米国との通商摩擦、「100日計画」を相当意識したものと思われるが、額面通りに進めば、期待して良いのかも知れないが、往々にして、言っていることとやっていることが異なる、随所に摩擦が発生するなど危険な状況とも言える。香港株は6日連続上昇しているが、先週だけで約90億元(13.3億ドル)の資金が本土から流入していると言う。規制されれば、暴落リスクがある。また、中印国境の緊張、日本の領海侵犯多発などの軍事リスクも出ている。表面上のGDP統計、貿易統計などは一見良好だが、夏相場の安定にはチャイナリスクから目が離せない状況が続くものと考えられる。


以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/7/18号)



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