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コラム【新潮流2.0】:動かない(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆)

注目トピックス 経済総合
◆日銀による巨額の購入で国債市場が干上がって久しい。流動性が枯渇して、取引が成立しない日もある。そんなところに「イールドカーブ・コントロール」である。国債利回りを釘付けにするわけだから債券価格は動かない。これでは国債ディーラーの仕事はあがったりである。実際に、ディーラー職を削減しようという金融機関も出始めた。

◆株式のディーラーはとっくの昔に廃業の憂き目にあっている。東証の取引システム、「アローヘッド」が高速化し、いまや注文応答時間は 0.5ミリ秒未満。実際には猛烈な速さで価格は動いているのだが、人間の目にはまるで動いていないように見える。こうなると板にある「玉」をとらえて「1カイ2ヤリ」で売買してさやを抜くといった昔ながらのディーラーのやり方では機械に敵わない。なにしろ人間の視力では追いつけない速さなのだから。コンピュータによるHFT(高速高頻度取引)によってほとんどのディーラーは駆逐されてしまったのである。

◆ところがそのHFTもこのところリターンが出なくなっている。ひとつの理由はマーケットが波乱なく安定しているからだ。債券市場も株式市場もボラティリティは記録的な低水準にある。ボラティリティが低下すると取引量も減る。これは当たり前で、相場が動くからリターンをあげようと取引に参加するのである。動かないなら誰も取引しようがない。HFTが縦横無尽に稼げるのはじゅうぶんな流動性があってこそ。「板」がスカスカではHFTといえども、儲ける機会がないのである。

◆要は「動かない」のは人間にとっても機械にとっても困るのだ。流動性と変動性はマーケットの「空気」みたいなもの。「空気」がなくてはディーラーやトレーダーは息ができない。プレーヤーが窒息死してしまっては、マーケット自体が成り立たない。市場に「空気」を注入し、一刻も早くこの息苦しい相場を終わらせる必要がある。寝苦しい夜が続くが、熱帯夜は長くてもお盆過ぎには終わるだろう。相場のほうも8月下旬のジャクソンホールあたりが転機となりそうだ。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆
(出所:7/24配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より抜粋)



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