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中国の危ない現状、(3)不良債権の増大【フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議】

注目トピックス 経済総合
世界第2位のGDPを誇る中国。しかし、公表される経済指標について疑問を表明する機関も多く、その経済の実態はなかなかつかめない。

そこで、なぜ中国経済が崩壊の危機を迎えているのか、また経済崩壊のシナリオとはどのようなものかを明らかにすべく、全4回にわたって各トピックを提示、検証する。

本稿では、三つ目にあたる「不良債権の増大」に関する考察をご紹介する(※)。

※一つ目の「経済成長モデル」、二つ目の「GDP」は、別途「中国の危ない現状、(1)経済成長モデル【フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議】」「中国の危ない現状、(2)GDP【フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議】」を参照

■各調査機関が伝える中国の不良債権は公式統計の約10倍
日本総合研究所では2016年8月10日付のレポートで、中国の不良債権残高は12.5兆元(日本円で約190兆円)と試算、金融市場の一部で話題となった。中国の公式統計によると、 2016年3月末の商業銀行の不良債権比率は1.75%、不良債権残高は1兆3921億元であるが、同レポートでは、不良債権の認定基準の甘さやオフバランスの与信なども対象に加え、実際の不良債権は公式統計の約10倍の規模と試算している。

先には、CLSA証券が5月6日付のレポートで、中国の不良債権は公式統計の少なくとも9倍あり、潜在的な損失は6兆9000億〜9兆1000億元(約114兆〜150兆円)と述べている。上場企業の債務返済能力について開示されているデータを基に試算し、不良債権が昨年の与信残高の15〜19%だとの推計を示している。

そのほかにもゴールドマン・サックス証券では、中国当局が発表した2015年の社会融資総量が前年比19兆元(約300兆円)増なのに対して、24兆6000億元(約388兆円)が融資などの形で資金供給されていると分析している。みずほ総合研究所では、中国の過剰債務の規模は約50兆元(約750兆円)程度とのレポートを出していた。また、元英国格付け会社フィッチ・レーティングスの中国金融機関担当アナリストで中国金融の分析に高い影響力を持つシャーリーン・チュー氏も、2017年末までに中国の金融システムの不良債権は最大で約51兆元(約765兆円)に達するとみている。

また、ロイターでは、海外メディアが大手機関投資家対象に実施した月次調査において、中国政府が2年以内に銀行の救済を実施、約5000億ドルの資金を投入するという予想結果を紹介している。加えて、中国の銀行業を救済するには最大10兆ドルが必要だとの見方も浮上していると伝えている。 

■現在の中国不良債権はバブル期の日本に匹敵する!?
ここに来て中国の不良債権問題がクローズアップされてきているのは、IMF(国際通貨基金)の推計で中国の企業債務が2015年末にGDPの200%超に達し、バブル期の日本に匹敵する状況になってきていることなどが背景だろう。

一つの推計として、企業債務を基に考えた場合、企業債務対GDP比は日本のバブルが崩壊した水準にすでに達している可能性がある。日本のピークは1993年219.5%。このときの企業向け債務残高は670兆円の水準であり、このうちの15%(100兆円)が不良債権になった計算だ。2016年9月末の中国の非金融企業向けの債務残高は17.4兆ドル(約1790兆円)であり、日本と同様に15%が不良債権と考えれば、 270兆円程度と推定することもできる。今後の中国経済の行方を占ううえで、この不良債権処理がスムーズに進むのかが一つの焦点であることは間違いない。


■不良債権の存在を隠して蓋をする可能性も
この世界的に懸念が強まっている不良債権問題について、中国政府がどのような対応をするのか。「中国経済はどこまで崩壊するのか」(PHP新書)の著者で、丸三証券のエコノミストである安達誠司氏は次のように語っている。

「中国の不良債権問題に関しては、政府が抑え続ける可能性が高いと考えます。不良債権の存在を隠し続けて蓋をする、というわけです。その方法としては、銀行をバットバンクとグッドバンクに分離し、バッドバンクに不良債権を集めて切り捨てる、といったことが考えられます。その場合、世界各国の投資家などは損失を被ることになりますが、中国経済には影響を与えないようにしていくことが可能です。ただ、そのためには人民元の供給が必要であり、元安とのバランスをどうとるかという問題は残るでしょう」

いずれにしても、そう遠くない将来にそのような事態が起こってもおかしくないほどには、中国における不良債権問題は顕在化してきていると言っていいだろう。

つづく〜「中国の危ない現状、(4)不良債権の増大【フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議】」〜

■フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
フィスコ取締役 中村孝也
フィスコIR取締役COO 中川博貴
シークエッジグループ代表 白井一成(※)

※シークエッジグループはフィスコの主要株主であり、白井氏は会議が招聘した外部有識者。

【フィスコ 世界経済・金融シナリオ分析会議】は、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世界各国の経済状況や金融マーケットに関するディスカッションを毎週定例で行っているカンファレンス。主要株主であるシークエッジグループ代表の白井氏も含め、外部からの多くの専門家も招聘している。それを元にフィスコの取締役でありアナリストの中村孝也、フィスコIRの取締役COOである中川博貴が内容を取りまとめている。2016年6月より開催しており、これまで、今後の中国経済、朝鮮半島危機を4つのシナリオに分けて分析し、日本経済では第4次産業革命にともなうイノベーションが日本経済にもたらす影響なども考察している。今回の中国についてのレポートは、フィスコ監修・実業之日本社刊の雑誌「JマネーFISCO株・企業報」の2017年春号の大特集「中国経済崩壊のシナリオ」に掲載されているものを一部抜粋した。




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