【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆中国の安寧を願う◆
[17/09/17]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 経済総合
〇北朝鮮リスク後退、中国の安定推移に関心〇
米市場、ドル円、日本株など、ほぼ北朝鮮の核実験前(9/1水準)を回復した。もちろん、単発的な暴発リスクは残るが、中ロが賛成した国連制裁で、元々物資補給能力を欠く北朝鮮が全面戦争を行う能力は著しく殺がれたとの見立てによるものと思われる。リスクが薄れたことで、日本経済の堅調および日本企業の好調評価に移ると思われるが、現状の企業業績を支える要素に中国要因が大きいと考えると、中国情勢に関心が高まる可能性がある。
例えば、日本の7月輸出額は前年同月比+13.4%、うちアジア向けが+14.8%で牽引。米国向け+11.5%を上回り、中国向けやその恩恵を受ける東南アジア向けが牽引している。8月の中国新車販売ではホンダ+20.6%、トヨタ+13.2%など、THAAD問題で韓国・現代自バッシングもあるが、日本車の好調が続いている。中国自身の8月輸出はドルベースで+5.5%、輸入は+13.3%。8月のPPI(生産者物価指数)は+6.3%、CPI(消費者物価指数)は+1.8%。人民元高が続いている。日本の証券系調査機関3社が17年度企業業績予測を相次いで引き上げたが、為替安定とともに、電機、自動車、機械、化学など中国経済拡大の恩恵を受けやすい業種が中心だ。
12日、李克強首相が中国経済の見通しと基本方針について記者会見を行い、「6.9%成長」を下半期も維持できると自信を見せた。失脚説もあった李首相が記者会見を行うのは久々の印象だが、「構造改革の推進と積極的な財政政策、安定的な金融政策を進める」とした。
10月18日の第19回共産党大会(19大)に向け、人事抗争に一定の決着がついた可能性がある。流れが変わったのは9月6日。この日、故国務院副総理・姚依林氏生誕100周年記念イベントが開催され、最高指導部メンバーの半数が出席したと言う。姚依林氏は渦中の王岐山氏の義理の父。その前後で、CCTV(国営中央テレビ)は再々、紀律検査委員会関連のニュースを流し、王岐山氏の様子を流したと言う。8月24日に読売新聞が、次期指導部リストを報じ、王岐山氏の名前がないと伝えた。失脚説やら特別ポスト創設説やらが入り乱れていたが、一応、権力構造内に残る公算が強まった。
人事抗争が一段落すると、経済面でも攻勢を掛けて来る可能性がある。現在の焦点は、「国進民退」と呼ばれる国有企業優先の流れ。国有企業は素材、エネルギー、インフラなど上流産業を支配し、過剰設備削減やコモディティ価格上昇、財政支出拡大などさらにの恩恵を受ける構図にある。さらに巨大化を目指し、電力、自動車などで再編統合の動きにある。9月2日にパソコンメーカー・レノボを傘下に持つ投資会社がルクセンブルグ国際銀行の買収を発表し、海外M&Aを再開した可能性がある。エコカー、金融など12分野を外資に開放する(9月末までに案をまとめる)予定とされるが、企業への共産党の締め付けは強化されている。トランプ米大統領の11月訪中、訪日計画が報じられたことで、建前的な経済自由化の流れは維持されると思われるが、どういう不具合が発生するか関心を集めよう。
中国情勢の安寧が、日経平均2万円台相場の条件の一つと考えられる。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/9/13号)
<CS>
米市場、ドル円、日本株など、ほぼ北朝鮮の核実験前(9/1水準)を回復した。もちろん、単発的な暴発リスクは残るが、中ロが賛成した国連制裁で、元々物資補給能力を欠く北朝鮮が全面戦争を行う能力は著しく殺がれたとの見立てによるものと思われる。リスクが薄れたことで、日本経済の堅調および日本企業の好調評価に移ると思われるが、現状の企業業績を支える要素に中国要因が大きいと考えると、中国情勢に関心が高まる可能性がある。
例えば、日本の7月輸出額は前年同月比+13.4%、うちアジア向けが+14.8%で牽引。米国向け+11.5%を上回り、中国向けやその恩恵を受ける東南アジア向けが牽引している。8月の中国新車販売ではホンダ+20.6%、トヨタ+13.2%など、THAAD問題で韓国・現代自バッシングもあるが、日本車の好調が続いている。中国自身の8月輸出はドルベースで+5.5%、輸入は+13.3%。8月のPPI(生産者物価指数)は+6.3%、CPI(消費者物価指数)は+1.8%。人民元高が続いている。日本の証券系調査機関3社が17年度企業業績予測を相次いで引き上げたが、為替安定とともに、電機、自動車、機械、化学など中国経済拡大の恩恵を受けやすい業種が中心だ。
12日、李克強首相が中国経済の見通しと基本方針について記者会見を行い、「6.9%成長」を下半期も維持できると自信を見せた。失脚説もあった李首相が記者会見を行うのは久々の印象だが、「構造改革の推進と積極的な財政政策、安定的な金融政策を進める」とした。
10月18日の第19回共産党大会(19大)に向け、人事抗争に一定の決着がついた可能性がある。流れが変わったのは9月6日。この日、故国務院副総理・姚依林氏生誕100周年記念イベントが開催され、最高指導部メンバーの半数が出席したと言う。姚依林氏は渦中の王岐山氏の義理の父。その前後で、CCTV(国営中央テレビ)は再々、紀律検査委員会関連のニュースを流し、王岐山氏の様子を流したと言う。8月24日に読売新聞が、次期指導部リストを報じ、王岐山氏の名前がないと伝えた。失脚説やら特別ポスト創設説やらが入り乱れていたが、一応、権力構造内に残る公算が強まった。
人事抗争が一段落すると、経済面でも攻勢を掛けて来る可能性がある。現在の焦点は、「国進民退」と呼ばれる国有企業優先の流れ。国有企業は素材、エネルギー、インフラなど上流産業を支配し、過剰設備削減やコモディティ価格上昇、財政支出拡大などさらにの恩恵を受ける構図にある。さらに巨大化を目指し、電力、自動車などで再編統合の動きにある。9月2日にパソコンメーカー・レノボを傘下に持つ投資会社がルクセンブルグ国際銀行の買収を発表し、海外M&Aを再開した可能性がある。エコカー、金融など12分野を外資に開放する(9月末までに案をまとめる)予定とされるが、企業への共産党の締め付けは強化されている。トランプ米大統領の11月訪中、訪日計画が報じられたことで、建前的な経済自由化の流れは維持されると思われるが、どういう不具合が発生するか関心を集めよう。
中国情勢の安寧が、日経平均2万円台相場の条件の一つと考えられる。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/9/13号)
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