日本経済シナリオ:第4次産業革命の与えるインパクトとは【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】
[17/12/01]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 経済総合
日本経済は1990年代のバブル崩壊後、崩壊前の水準に回復することなく伸び悩みに直面している。他の先進国に先駆ける形で少子高齢化による労働人口の減少が進み、国内需要は縮小傾向にある。
このような状況下において今後の日本経済に大きな転換点となる可能性があるのは、きたるべき「第4次産業革命」だ。この技術革新の波に国家としてどのように対処するかが、今後の日本経済の行く末を大きく左右することになろう。
本シリーズでは、日本経済が取り得る未来について考察し、「ゆでがえる」「格差不況」「シェアリング」「黄金期」という4つのシナリオを紹介してゆく。導入となる本稿を含めて計9回にわたって、日本経済が取り得る未来と第4次産業革命が経済面に与えるインパクトを考察したい。
■第4次産業革命による第分岐が起こる
世界はこれまでに3度の産業革命を経験してきた。第1次産業革命は18世紀後半の蒸気による工場の機械化、第2次産業革命は20世紀初頭の電力活用による大量生産、第3次産業革命は1970年代から始まった電力とITによる工場の自動化だ。
そして今、現実社会と仮想空間が一体となるサイバーフィジカルシステム(CPS)を基とする第4次産業革命への期待が広がっている。第4次産業革命は農業中心から工業中心に世界経済が大きく分岐した第1次産業革命時と同じくらい大きな変革をもたらすという。
米歴史学者ケネス・ポメランツ氏の著書『大分岐中国・ヨーロッパ、そして近代政界経済の形成』によると、16〜18世紀のヨーロッパとアジアには、第1次産業革命が起こるまで経済発展の度合いに差がなかった。しかし、その後に機械的生産方式を導入した欧米諸国と導入しなかったアジアおよびアフリカ諸国は経済発展の程度で大きな差が生じたという。
歴史に学べば、第4次産業革命によって日本は長期停滞から脱却し、大きく成長する可能性があるということだ。日本は果たしてこの波に乗れるのだろうか。
経済産業省が発表した日本の経済成長戦略では、日本に「痛みを伴う転換」か「安定を求めたジリ貧」という2つの未来が示された。この戦略をデザインした官庁、並びに有識者たちも、日本は第4次産業革命の波に乗らない限り、「安定を求めたジリ貧」の未来しかないという見解だ。しかし、果たして日本の将来には2つの道しかないのだろうか。
2040−50年ごろの日本の未来(姿)を考えてみたい。まず、経済成長モデルの構成要素である「資本」「労働」「全要素生産性(以下TFP)」を観察した。日本の資本効率は低下し続けているが、今後、潤沢な資本が成長分野へ向かうだろうか。人口は中長期に減少傾向であり、労働生産性の伸びには期待できない。TFPも低下傾向である。また、日本の物価水準はデフレの状態のままだろう。
一方、潤沢な資金が成長分野へ向かい、さまざまなイノベーションを起こしてTFPの向上を実現、経済成長を力強く牽引する未来もある。第4次産業革命を機にビジネスモデルのイノベーションに成功した日本企業が新規雇用を創出、国民所得と税収の増加、財政も健全な水準を達成するというバラ色の未来のシナリオだ。
だがしかし、惨めな未来も想定される。第4次産業革命の到来にてAIやブロックチェーン技術が社会に浸透し、雇用代替が著しく進む。またそれらを活かしてビジネスモデルのイノベーションに成功した企業がグローバル競争の勝ち組となり、その他多くの日本企業が負け組に落ちぶれる。企業倒産が相次ぎ、雇用は崩壊。経済格差が拡大する。
上のような思考経路をたどると、2040−50年に日本が迎える未来には4つのシナリオがあると考えられる。次回より、順を追ってご紹介していく。
(つづく〜「日本経済シナリオ1:ゆでがえる【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」〜)
■フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
フィスコ取締役中村孝也
フィスコIR取締役COO中川博貴
シークエッジグループ代表白井一成
【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】は、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世界各国の経済状況や金融マーケットに関するディスカッションを毎週定例で行っているカンファレンス。主要株主であるシークエッジグループ代表の白井氏も含め、外部からの多くの専門家も招聘している。それを元にフィスコの取締役でありアナリストの中村孝也、フィスコIRの取締役COOである中川博貴が内容を取りまとめている。2016年6月より開催しており、これまで、この日本経済シナリオの他にも今後の中国経済、朝鮮半島危機を4つのシナリオに分けて分析し、日本経済にもたらす影響なども考察している。今回の日本経済に関するレポートは、フィスコ監修・実業之日本社刊の雑誌「JマネーFISCO株・企業報」の2017年冬号の大特集「日本経済シナリオ」に掲載されているものを一部抜粋した。
<SI>
このような状況下において今後の日本経済に大きな転換点となる可能性があるのは、きたるべき「第4次産業革命」だ。この技術革新の波に国家としてどのように対処するかが、今後の日本経済の行く末を大きく左右することになろう。
本シリーズでは、日本経済が取り得る未来について考察し、「ゆでがえる」「格差不況」「シェアリング」「黄金期」という4つのシナリオを紹介してゆく。導入となる本稿を含めて計9回にわたって、日本経済が取り得る未来と第4次産業革命が経済面に与えるインパクトを考察したい。
■第4次産業革命による第分岐が起こる
世界はこれまでに3度の産業革命を経験してきた。第1次産業革命は18世紀後半の蒸気による工場の機械化、第2次産業革命は20世紀初頭の電力活用による大量生産、第3次産業革命は1970年代から始まった電力とITによる工場の自動化だ。
そして今、現実社会と仮想空間が一体となるサイバーフィジカルシステム(CPS)を基とする第4次産業革命への期待が広がっている。第4次産業革命は農業中心から工業中心に世界経済が大きく分岐した第1次産業革命時と同じくらい大きな変革をもたらすという。
米歴史学者ケネス・ポメランツ氏の著書『大分岐中国・ヨーロッパ、そして近代政界経済の形成』によると、16〜18世紀のヨーロッパとアジアには、第1次産業革命が起こるまで経済発展の度合いに差がなかった。しかし、その後に機械的生産方式を導入した欧米諸国と導入しなかったアジアおよびアフリカ諸国は経済発展の程度で大きな差が生じたという。
歴史に学べば、第4次産業革命によって日本は長期停滞から脱却し、大きく成長する可能性があるということだ。日本は果たしてこの波に乗れるのだろうか。
経済産業省が発表した日本の経済成長戦略では、日本に「痛みを伴う転換」か「安定を求めたジリ貧」という2つの未来が示された。この戦略をデザインした官庁、並びに有識者たちも、日本は第4次産業革命の波に乗らない限り、「安定を求めたジリ貧」の未来しかないという見解だ。しかし、果たして日本の将来には2つの道しかないのだろうか。
2040−50年ごろの日本の未来(姿)を考えてみたい。まず、経済成長モデルの構成要素である「資本」「労働」「全要素生産性(以下TFP)」を観察した。日本の資本効率は低下し続けているが、今後、潤沢な資本が成長分野へ向かうだろうか。人口は中長期に減少傾向であり、労働生産性の伸びには期待できない。TFPも低下傾向である。また、日本の物価水準はデフレの状態のままだろう。
一方、潤沢な資金が成長分野へ向かい、さまざまなイノベーションを起こしてTFPの向上を実現、経済成長を力強く牽引する未来もある。第4次産業革命を機にビジネスモデルのイノベーションに成功した日本企業が新規雇用を創出、国民所得と税収の増加、財政も健全な水準を達成するというバラ色の未来のシナリオだ。
だがしかし、惨めな未来も想定される。第4次産業革命の到来にてAIやブロックチェーン技術が社会に浸透し、雇用代替が著しく進む。またそれらを活かしてビジネスモデルのイノベーションに成功した企業がグローバル競争の勝ち組となり、その他多くの日本企業が負け組に落ちぶれる。企業倒産が相次ぎ、雇用は崩壊。経済格差が拡大する。
上のような思考経路をたどると、2040−50年に日本が迎える未来には4つのシナリオがあると考えられる。次回より、順を追ってご紹介していく。
(つづく〜「日本経済シナリオ1:ゆでがえる【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】」〜)
■フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
フィスコ取締役中村孝也
フィスコIR取締役COO中川博貴
シークエッジグループ代表白井一成
【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】は、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世界各国の経済状況や金融マーケットに関するディスカッションを毎週定例で行っているカンファレンス。主要株主であるシークエッジグループ代表の白井氏も含め、外部からの多くの専門家も招聘している。それを元にフィスコの取締役でありアナリストの中村孝也、フィスコIRの取締役COOである中川博貴が内容を取りまとめている。2016年6月より開催しており、これまで、この日本経済シナリオの他にも今後の中国経済、朝鮮半島危機を4つのシナリオに分けて分析し、日本経済にもたらす影響なども考察している。今回の日本経済に関するレポートは、フィスコ監修・実業之日本社刊の雑誌「JマネーFISCO株・企業報」の2017年冬号の大特集「日本経済シナリオ」に掲載されているものを一部抜粋した。
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