【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆イノベーションETF◆
[17/12/17]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 経済総合
〇イノベーションETFはバブルの兆候の一つか 〇
ロイターは、イノベーションETF(上場投資信託)が米市場を 席巻していると伝えている。アマゾンが小売業界を、エアビー アンドビーがホテル業界を、ウーバーがタクシー業界を破壊的 に変革しているが、それら旧ビジネス手法を揺るがす企業に集 中投資していると言う。破壊的イノベーション企業への投資は 従来はベンチャーキャピタル、プライベートエクイティ(PE) ファンドが行ってきたが、その利益を取り込む動きで、自らも 資産運用業界で破壊的になろうとしているのかも知れない。
代表的なものは、「ARKイノベーション」(17年年初からの運用 利回り86.5%、14年設定からの年平均は23.6%。運用ARKインベ ストの運用資産は27億ドル)、「Knowledge Leaders Developed World」は研究開発に巨額投資している世界的企業に投資し、保有株 の1/3は日本株(年初来の運用利回り26.3%)、最大資産運用会社 ブラックロック傘下のiシェアーズ「エクスポネンシャル・テクノロ ジーズ」はモーニングスター・エクスポネンシャル・テクノロジー 指数に連動する仕組み(年初来の運用利回り37.8%、15年発足で運用 資産15億ドル)など。
運用形態としては別に珍しくない。古くは日本の高度成長期に主力産 業の主力銘柄に集中投資したオープン投信、オイルショック後は資源 株ブームがあった。ネットバブル期にもIT関連への集中投資が持て 囃され、持合い解消売りの対象となった石(重厚長大産業)は沈んだ。 如何に、「目利き」が重要か、NTTなどが「目利き」を集めたシンクタンクを作ったように記憶している。
好成績は、運用規模が大きくないことも影響していると見られる。巨大 化すると、自らのポジションが足枷となって身動きできなくなるケース が間々ある。言わば、時代の光と陰を膨らませることで、流れを加速さ せる役割を持つ。日本市場では、こういった偏った特徴を持つファンド は生まれ難く、表面上は「公平公正」を謳わなければならない規制がキ ツイ。日経平均やTOPIXに連動する指数ファンドが中心だ。話題を集める株式投信が出て来ないのも、日本の特色と言えなくもない。
通貨とは言えない乱高下をするビットコイン、ダヴィンチの絵画の高額 入札なども、バブルの兆候との見方がある。イノベーションファンドが 一段と跋扈するようだと、バブルの色彩の一つに加わる可能性がある。 国内景気がなかなか浮上しない、あるいは景気が悪いと認識している 国民が多いのは、この産業構造が破壊的になっている面がある。まだ 多くの雇用を、破壊対象産業の企業が抱える。株式投資では、破壊対象 の企業がどう経営革新するかも重要なテーマだが、収益改善の遅れが出 易い面がある。
来年は、株価バブル論とその中身を問う議論が活発化するものと考えられる。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/12/13号)
<CS>
ロイターは、イノベーションETF(上場投資信託)が米市場を 席巻していると伝えている。アマゾンが小売業界を、エアビー アンドビーがホテル業界を、ウーバーがタクシー業界を破壊的 に変革しているが、それら旧ビジネス手法を揺るがす企業に集 中投資していると言う。破壊的イノベーション企業への投資は 従来はベンチャーキャピタル、プライベートエクイティ(PE) ファンドが行ってきたが、その利益を取り込む動きで、自らも 資産運用業界で破壊的になろうとしているのかも知れない。
代表的なものは、「ARKイノベーション」(17年年初からの運用 利回り86.5%、14年設定からの年平均は23.6%。運用ARKインベ ストの運用資産は27億ドル)、「Knowledge Leaders Developed World」は研究開発に巨額投資している世界的企業に投資し、保有株 の1/3は日本株(年初来の運用利回り26.3%)、最大資産運用会社 ブラックロック傘下のiシェアーズ「エクスポネンシャル・テクノロ ジーズ」はモーニングスター・エクスポネンシャル・テクノロジー 指数に連動する仕組み(年初来の運用利回り37.8%、15年発足で運用 資産15億ドル)など。
運用形態としては別に珍しくない。古くは日本の高度成長期に主力産 業の主力銘柄に集中投資したオープン投信、オイルショック後は資源 株ブームがあった。ネットバブル期にもIT関連への集中投資が持て 囃され、持合い解消売りの対象となった石(重厚長大産業)は沈んだ。 如何に、「目利き」が重要か、NTTなどが「目利き」を集めたシンクタンクを作ったように記憶している。
好成績は、運用規模が大きくないことも影響していると見られる。巨大 化すると、自らのポジションが足枷となって身動きできなくなるケース が間々ある。言わば、時代の光と陰を膨らませることで、流れを加速さ せる役割を持つ。日本市場では、こういった偏った特徴を持つファンド は生まれ難く、表面上は「公平公正」を謳わなければならない規制がキ ツイ。日経平均やTOPIXに連動する指数ファンドが中心だ。話題を集める株式投信が出て来ないのも、日本の特色と言えなくもない。
通貨とは言えない乱高下をするビットコイン、ダヴィンチの絵画の高額 入札なども、バブルの兆候との見方がある。イノベーションファンドが 一段と跋扈するようだと、バブルの色彩の一つに加わる可能性がある。 国内景気がなかなか浮上しない、あるいは景気が悪いと認識している 国民が多いのは、この産業構造が破壊的になっている面がある。まだ 多くの雇用を、破壊対象産業の企業が抱える。株式投資では、破壊対象 の企業がどう経営革新するかも重要なテーマだが、収益改善の遅れが出 易い面がある。
来年は、株価バブル論とその中身を問う議論が活発化するものと考えられる。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/12/13号)
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