【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆通貨攻防と新興国不安◆
[18/07/29]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 経済総合
〇人民元中心の為替攻防と新興国不安〇
トランプ大統領がドル高牽制、利上げ批判を行うなかで開催された週末のG20は、「世界経済は貿易の緊張の高まりなど下振れリスクが増大している」との声明を発表した。1年前の7月G20では「保護主義と戦う」、今年3月には「通貨安競争を避けるべき」とした合意も継続確認した。
19日、米シティグループが今後1年程度の見通しで、世界の株上昇は3%にとどまり、新興国株は6%下落すると予想。「貿易戦争のリスクや足元のドル高が足かせになる」との見方だ。
新興国の対象が微妙だ。今までも、トルコ、アルゼンチンなど危機的状況にあるが、世界経済への影響は限定的。メキシコや韓国、そして中国が対象となると事は変わって来る。
トランプ大統領がドル高を牽制したことで、週末のドル相場はほぼ1年ぶりの高値水準(主要6通貨バスケットに対する指数)から反落。新興国不安が一気に高まることを回避した格好。
ただ、人民元相場には神経質な展開になりそうだ。対ドルで直近3カ月間に約8%下落、一時、1ドル=6.81元台と1年1ヵ月ぶり水準を付けた(円ベースでは16.5円前後)。中国当局自身が15年夏のような「キャピタルフライト(資本逃避)」を招かないよう神経質になっていると見られ、その攻防を見極める展開と考えられる。
20日、銀保監会(中国銀行保険監督管理委員会)は商業銀行の理財業務に対する規制強化案を発表、統制強化で対処する方針であろう。
20日発表の米GE4-6月決算は純利益が30%減。引き続き電力事業の19%減収が重荷で、新興国不安と重なる。独VWはブラジルでの減産を発表。昨年に設備更新計画を発表したが、南米市場不振が重荷。
ロイター7月企業調査(日本企業約250社が回答)によると、売上減見通しは、短期的には19%だが、中長期的には42%(製造業44%、非製造業40%と大差ない)に上る。設備投資については4社に1社が様子見、海外投資では製造業の29%が消極姿勢に変わりつつある。米中が自国生産を求める場合など、サプライチェーン見直しを迫られる展開に最も警戒的な様だ。
「不安の中の拡大」と言われるように、足元の貿易統計などは変調を来していないものの、先行き不透明感は強い。株式市場は売り方優勢相場である程度織り込んでいると見られるが、今週から本格化する4-6月期決算発表での個別反応は目まぐるしくなると思われる。
基調としては、日経平均22000〜23500円のボックス圏が長引く展開になりそうだ。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/7/23号)
<CS>
トランプ大統領がドル高牽制、利上げ批判を行うなかで開催された週末のG20は、「世界経済は貿易の緊張の高まりなど下振れリスクが増大している」との声明を発表した。1年前の7月G20では「保護主義と戦う」、今年3月には「通貨安競争を避けるべき」とした合意も継続確認した。
19日、米シティグループが今後1年程度の見通しで、世界の株上昇は3%にとどまり、新興国株は6%下落すると予想。「貿易戦争のリスクや足元のドル高が足かせになる」との見方だ。
新興国の対象が微妙だ。今までも、トルコ、アルゼンチンなど危機的状況にあるが、世界経済への影響は限定的。メキシコや韓国、そして中国が対象となると事は変わって来る。
トランプ大統領がドル高を牽制したことで、週末のドル相場はほぼ1年ぶりの高値水準(主要6通貨バスケットに対する指数)から反落。新興国不安が一気に高まることを回避した格好。
ただ、人民元相場には神経質な展開になりそうだ。対ドルで直近3カ月間に約8%下落、一時、1ドル=6.81元台と1年1ヵ月ぶり水準を付けた(円ベースでは16.5円前後)。中国当局自身が15年夏のような「キャピタルフライト(資本逃避)」を招かないよう神経質になっていると見られ、その攻防を見極める展開と考えられる。
20日、銀保監会(中国銀行保険監督管理委員会)は商業銀行の理財業務に対する規制強化案を発表、統制強化で対処する方針であろう。
20日発表の米GE4-6月決算は純利益が30%減。引き続き電力事業の19%減収が重荷で、新興国不安と重なる。独VWはブラジルでの減産を発表。昨年に設備更新計画を発表したが、南米市場不振が重荷。
ロイター7月企業調査(日本企業約250社が回答)によると、売上減見通しは、短期的には19%だが、中長期的には42%(製造業44%、非製造業40%と大差ない)に上る。設備投資については4社に1社が様子見、海外投資では製造業の29%が消極姿勢に変わりつつある。米中が自国生産を求める場合など、サプライチェーン見直しを迫られる展開に最も警戒的な様だ。
「不安の中の拡大」と言われるように、足元の貿易統計などは変調を来していないものの、先行き不透明感は強い。株式市場は売り方優勢相場である程度織り込んでいると見られるが、今週から本格化する4-6月期決算発表での個別反応は目まぐるしくなると思われる。
基調としては、日経平均22000〜23500円のボックス圏が長引く展開になりそうだ。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/7/23号)
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