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コラム【新潮流2.0】:好き・嫌い(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆)

注目トピックス 経済総合
◆どこまで世界をひっかき回すつもりなのか。保護主義に走り、貿易戦争を仕掛ける。パリ協定から離脱し環境問題に背を向ける。中央銀行の独立性を尊重しない。セクハラ疑惑のあった人物を最高裁判事に任命する。今度は中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄を表明した。世界平和も脅かしかねない。主語はなくても通じる。米国のトランプ大統領である。

◆冒頭、「どこまで世界をひっかき回すつもりなのか」と書いたが、問題は、ひっかき回されて不快に感じる人もいれば、喜ぶ人もいるという点である。少なくとも米国では半数がそうだ。いや米国だけではないかもしれない。英国はEU離脱を選択した。イタリアではポピュリスト政党が財政規律を緩めようとしているし、ドイツでも反移民感情から州議会選で与党が大敗を喫した。すごく荒削りの喩えをすると、「大衆が、偽善的な優等生にNOを突きつける」構図であろう。

◆民主主義とは多数決だから、政治家は多くの票を求めて八方美人に振る舞う。しかし八方美人は誰からも嫌われないかわりに誰からも心底愛されない。全員から好かれることは無理だから、特定の層に狙いを定めるやり方は、マーケティング的には「ターゲット・マーケティング」というが、すでに時代遅れ。今の時代、「誰に好かれるか」より「誰に嫌われるか」を明確にしたほうがいい。『嫌われる勇気』がベストセラーになったのも、そんな時代を反映してのことだろう。

◆そう考えるとトランプ大統領の戦略はマーケティング理論からは極めて有効である。「好き」の反対は「嫌い」ではない。「無関心」である。これまでの政治家は、「好き」か「無関心」の間の票取り合戦をしていた。ところがトランプ氏は、「嫌い」な部分を際立たせることで「無関心」層を「好き」「嫌い」の票取り合戦に引っ張り込んだ。トランプ「嫌い」の反対のトランプ「好き」を作ることに成功したのである。中間選挙まであと2週間。共和党の劣勢が伝わるが選挙は水もの。下駄を履くまでわからない。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆
(出所:10/29配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より抜粋)




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