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中国経済シナリオvol.1 中国版オレンジ計画が表面化【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】

注目トピックス 経済総合
◆フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
シークエッジ グループ代表 白井一成
フィスコIR取締役COO 中川博貴
フィスコ取締役 中村孝也

【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】は、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世界各国の経済状況や金融マーケットに関するディスカッションを毎週定例で行っているカンファレンス。主要株主であるシークエッジグループ代表の白井氏も含め、外部からの多くの専門家も招聘している。それを元にフィスコの取締役でありアナリストの中村孝也、フィスコIRの取締役COOである中川博貴が内容を取りまとめている。2016年6月より開催しており、これまで、この日本経済シナリオの他にも今後の中国経済、朝鮮半島危機を4つのシナリオに分けて分析し、日本経済にもたらす影響なども考察している。

◇以下は、フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議で議論したことをもとにとりまとめをしている。今回は中国の行方について、シークエッジグループ代表の白井一成氏に話をうかがい、複数回に分けて配信する。


今後の中国を占う意味では、ZTE(中興通訊)へのアメリカの制裁に注目しておく必要がある。ZTEは中国・深センに本社を置き、通信設備および通信端末の開発および生産を事業とする企業である。世界で携帯電話端末を発売しており、2017年にスマートフォン世界シェアが9位(IC Insights調べ)。2017年の売上高は1,088億元、普通株主帰属純利益は45億元となっている。2010年にイラン政府系通信会社や北朝鮮に禁輸措置品を納入し、またその事実を隠ぺいしたことから、トランプ大統領はZTEに7年間米国製品の販売を禁止すると表明(7年間という期間は5Gが普及するまでの期間であるともいわれている)。ZTEはスマートフォンの半導体をインテル、クアルコムに依存しており、企業存亡の危機に立たされた。制裁は期限付きで一部解除されているが、突然かつ厳しい措置の背景には、アメリカによる中国ハイテク企業の成長抑止の思惑もあろう。

同様のことはファーウェイ(2017年スマートフォン世界シェア3位、IC Insights調べ)にもいえる。ファーウェイは中国人民解放軍出身者によって設立された経緯がある。中国人民解放軍の関与が疑われているという説の真偽は不明であるが、ある程度の企業規模になった時点で共産党の関与はあると考えるべきだろうか。ファーウェイ製品を使用することによる安全保障上のリスクについては、前々から話題になっていたが、2018年11月22日付のウォールストリート・ジャーナルにおいて、トランプ政権が同盟国に対してファーウェイ製品を使用しないように求めたと報じられている。12月6日にはアメリカが経済制裁を科しているイランに対して製品を輸出した疑いにより、ファーウェイの孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)がアメリカの求めに応じてカナダ当局に逮捕されている。これと呼応するように12月10日、日本政府は安全保障上のリスクがあるシステム機器を調達しないように各省庁で申し合わせを行っている。また同月14日、総務省の電波監理審議会は5Gの電波を通信キャリアに割り当てる指針案を答申している。明示こそされていないが、サイバーセキュリティの確保が求められているということで、ファーウェイなど中国系企業を事実上排除する可能性が高い。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天は既に5G通信網の構築において、中国製を採用しない方針を表明しているとされる。

影響はハードウェアにとどまらないだろう。ハードウェアとソフトウェアは一体であり、ハードウェアだけを制裁の対象にしたところで何の意味もない。中国系のシステム企業には、ZTE、ファーウェイと同様のことが起こり得ると考えるべきだろう。

太平洋戦争まで約35年をかけて日本を叩き潰す案を練り上げたとされるオレンジ計画同様、中国を叩き潰し、新たな世界通商体制を再構築する戦略の一環として、十分に想定される内容だ。今後についても同様のケースが起こり得る可能性が十分にあり得ることから、投資、貸出、業務提携を問わず、中国と関係している外資系企業にビジネスリスクを認識させるに十分な出来事となった。このような中国企業の資金繰りは、当然厳しくなることが予想される。今よりもZTE、ファーウェイがシェアを落とした場合、その影響力の低下から更に厳しい制裁が可能になることも覚えておきたい。


◆話し手
シークエッジ グループ代表 白井一成




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