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コラム【アナリスト夜話】:金融緩和合戦の先にあるもの(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)

注目トピックス 経済総合
今週は日米の金融政策決定会合が相次いで開催されます。米国は市場の予想利下げ確率が9割を超えており、利下げはほぼ確実でしょう。日本も、今回はマイナス金利の深掘りはないという見方が一般的ですが、今後の欧米の金融政策や為替レート次第では、緩和圧力が高まりそうです。今週はそうした金融緩和合戦の行方を占う上で重要です。

一方、最近、世界中で金融市場の歪みが取り上げられることが多くなりました。ドイツでは、預金金利をマイナスにし、預けたお金を満期までに減額するという金融機関が増えてきました。このため、タンス預金ならぬ「マットレス預金」の増加が話題になっています。ちなみに日本のタンス預金は50兆円を超えていると試算さています。

また、8月には、あの財政難のイタリアの50年債に、募集額の5倍近い2兆円の買い需要が集まりましたし、米国の名門・ペンシルバニア大学の100年債も、民間過去最低の3.61%という利回りとなりました。先日、米国政府も、50年超の超長期債発行の可能性に言及しました。

このように、超低金利の継続で、世界中で、資金の借り手が強気になっています。一方、足元では、欧州の銀行が、投資家に販売するつもりで仕込んだ高リスクローンの売れ残りが積み上がりつつあります。日本では、マイナス金利でもおかしくない優良債券でも、それでは社内が通らないとして、投資家が敬遠する動きがみられるようです。資金の出し手としては、せめてお金を遣う権利を与える分くらいは、プラスの代償が欲しいと感じるのも自然だと思います。

このように、最近の市場では、貸し手と借り手の間に認識のギャップが生じている印象です。改めて、やはり健全な金利に立ち戻ることの重要性を感じざるを得ません。

先週、住宅価格上昇が著しいスウェーデンの中銀リクスバンクは、景気が減速しても12月には利上げして、5年続いたマイナス金利から脱すると発表しました。日本では、金利を戻すどころか当面は緩和方向でしょうが、まずは今週の金融政策のニュアンスを見守りたいと思います。

マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那
(出所:10/28配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)




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