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REITへの賃料減額要請に法的根拠はあるのか?【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】

注目トピックス 経済総合
コロナショックによる業況悪化の影響はREITにも及んでいる。日経不動産マーケット情報(2020年7月号)によると、賃料減額の要請は、「店舗により異なるが、平均すると3ヵ月間、20%くらいの減額」(全国チェーン飲食店)、「減額要請は商業施設で6割、ホテルでほぼ全てのテナントから減額要請。オフィスはごく一部に限られ、住宅や物流施設はない」(総合型REIT)、「最終的に減額に応じるケースは10〜20%程度、減額期間は2〜3ヵ月」(不動産仲介会社)だそうだ。

5月決算のREITを対象に見る限り、多くのREITにとって賃料を巡る交渉は未だ継続中と見られる。アクティビア・プロパティーズ投資法人<3279>は、ポートフォリオのうち新型コロナの影響を受けやすい商業テナントが約4割を占める。商業テナントにおける賃料構成では『アパレル』が最多であるが、(賃料に関する)要望件数の最多は『飲食』で約4割を占める。商業テナントでは要望の約8割が「固定賃料の一時減額」であり、合意が完了した交渉は約5割にとどまる。

大和証券オフィス投資法人<8976>では、賃料支払猶予または賃料減額の打診テナント数は全体の15.5%にあたる81件である。うち合意件数は26件で全て支払猶予となっている。ユナイテッド・アーバン投資法人<8960>では、休業要請対象業種に該当するテナントが83%、本投資法人の判断により休館した商業施設における対象業種に該当するテナントが43%である。休業の影響を大きく受けたテナントからの減額等要請に対して、原契約の条件変更等による将来の賃料収受を念頭に対応・協議中とされている。

5月8日、金融庁は「賃料の支払いに係る事業者等への配慮について(要請)」を公表した。そこでは、保有資産の管理・運営を委託されている資産運用会社やプロパティ・マネジメント会社等の外部業者が適切に管理・運営を行い、投資家の利益を害することがないよう善管注意義務及び忠実義務を負うことについて、「投資者の目先の利益のみの最大化を求めるものではなく、投資者にとって何が最善の利益かは、個別具体的な状況に即して判断される」、「テナントの状況を十分に勘案し、賃料減免もしくは賃料支払いの猶予に応じるなど、長期的な視点に立って柔軟な措置を実施することが合理的と考えられる場合には、金融庁の検査・監督で問題視することはない」などと言及されている。

これは「投資者保護上問題のない範囲で」賃料の減免もしくは賃料の支払い猶予に応じるなど、テナントへの配慮を促すものと解釈されているようだ。REITに対する賃料減額要求についても、「投資者保護上問題のない範囲で」、「必要に応じ投資者に対する説明責任を果たしつつ」という条件のもとで、「社会情勢を考慮すると受け入れるべき」という論調が支配的なようであり、一定の説得力を持つようにも感じられる。もっとも今回の場合、テナントの休業が行政の要請に基づくものであることが話を複雑にしている面がある。法律に基づかない「要請」に多くを依拠するという「法の運用面の問題」を象徴する事例のようにも感じられる。

(株式会社フィスコ 中村孝也)



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