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宇宙資源開発の現状と展望【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】

注目トピックス 経済総合
10月12日から14日の3日間にわたって開催されたオンラインの「国際宇宙会議」において、政府は月や火星探査に関わる国際的枠組みである「アルテミス合意」に署名した。アルテミス計画は、2024年までに月面に人間を着陸させることを当面の目標としているが、将来的には月面に基地を設置し、月での宇宙資源を活用しながら火星探査を目指していくものである。参加国は米国、オーストラリア、カナダ、日本、ルクセンブルグ、イタリア、アラブ首長国連合、イギリスである。

合意のポイントは(1)平和目的の宇宙活動、(2)政策や科学データの透明性の維持、(3)相互運用性、(4)宇宙滞在者への緊急援助、(5)宇宙資源の採取と利用、(6)宇宙ゴミ(スペースデブリ)への対処、などである。NASA長官のジム・ブライデンスティンは、「本日の署名により、パートナー国と協力して月の探査を行い、すべての人類が楽しめる宇宙で安全、平和そして豊かな未来を創造する重要な原則を確立していこう」と語った。

フォーブス誌によると「2040年には月面での人類の定住がはじまり、年間1万人が月旅行を楽しむ」という未来図が描かれるという。現在までに判明している宇宙資源として、水、レゴリス(月表面の砂)、鉄などの鉱物及びヘリウム3の存在が見積もられている。月の南極付近はマイナス190℃と極めて低温で、数億トンの氷の塊が地中に眠っていると推定されている。レゴリスはセメント材料としての使用が見込まれている。含有が確認されている鉄や鉱物は、機械材料としての使用も期待されている。

太陽系には300万個の小惑星があり、80万個の軌道が判明しているが、地球近傍にも多数分布していることが判明している。また、小惑星にも注目が集まっている。小惑星の価値を算出する米アステランク社によると、日本の「ハヤブサ2」が探査した小惑星「リュウグウ」には鉄、ニッケル、プラチナが埋蔵しており、その価値は830億円と推定されている。

月、火星や小惑星には、人類の生命を維持し、人類を豊かにする多くの鉱物、水、ガスの存在が見積もられ、巨大な商業空間が生まれようとしている。日本では、政府関係者、国会議員、一部の企業で注目が高まりつつある。日本は、今後、月の周回軌道上に打ち上げられる「ゲートウェイ」宇宙ステーションの居住モジュールの建設や補給物品の提供等の支援を計画している。また、JAXA(宇宙航空研究開発機構)とトヨタ自動車<7203>の共同による月面有人ローバー「ルナークルーザー」(燃料電池車)などの開発協力が決定し、月面におけるモビリティーシステムの整備にも参画している。日本としては、これらの計画を通じて、日本人宇宙飛行士を初めて月に着陸させ、今後の月資源探査等の足掛かりにする計画だ。

JAXAによると、日本は、2022年にはSLIM(Smart Lander for Investigating Moon)と呼ばれる小型月着陸実証機の打ち上げを計画しており、2024年には火星の衛星であるフォボスへの探査を計画している。JAXAはすでに探査衛星「かぐや」を月周回軌道に乗せて各種の調査を行うとともに高度な姿勢制御技術の試験を行っている。萩生田文部科学大臣は、アルテミス合意の署名の際に「各国や民間企業と協同しながら、安全かつ持続的に宇宙探査活動を行い、署名各国と、より一層協力を深めたい」とコメントした。アルテミス合意の精神である「平和目的」、「透明性」や「相互運用性」に基づいた我が国の宇宙開発の発展に期待したい。なお、バンクオブアメリカの試算では、2040年には、宇宙関連ビジネスの市場規模が300兆円規模に成長すると見積もられている。



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