中国に対して協力を深化させる米台【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】
[20/11/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 経済総合
2020年11月22日にロイターが報じたところによれば、米インド太平洋軍の情報部門トップであるマイケル・スチュードマン少将が台湾を非公式訪問したとのことである。台湾の国営メディア「中央通信社」のニュースサイトであるFocus Taiwanの報道では、スチュードマン少将は、現地時間の午後7時に特別機で松山空港に到着したという。米国防総省はロイターの取材に対して、台湾訪問の事実関係についてコメントを発出していない。台湾外交部の報道発表では、訪問に関するコメントこそないものの、台湾に滞在中の「米国高官」のスケジュールが非公表であることが明らかとなった。
今夏、米国政府要人の台湾訪問にあわせて、中国軍機の中台中間線越境が繰り返されている。8月10日に、断交後に訪台した政府高官として最高位となるアレックス・アザー米厚生長官が台湾に対する強力な支援を表明した際には、中国空軍機2機が中間線を越え、台湾の地対空ミサイルシステムで追跡されるとともに、対応した台湾空軍機によって押し戻された。9月17日に訪台したキース・クラック国務次官は、断交後に訪台した現職国務省高官として最高位にあるが、蔡英文総統を表敬訪問した18日には中国軍が台湾海峡で軍事演習を行い、多数の戦闘機が中間線を越境した。
中国との貿易摩擦が継続しているトランプ政権は、台湾との協力関係を強化している。11月20日、米台間で新たに設けられた「経済繁栄パートナーシップ対話」の初会合がワシントンで開催され、米国からクラック国務次官らが、台湾から陳正祺・経済部政務次官らが出席し、台湾の王美花経済部長らもオンライン参加した。米国務省が推進する「ニュー・クリーン・ネットワーク」や第5世代(5G)移動通信システムに関連した安全保障、半導体などの分野における協力などが確認され、5年間の包括的な経済協力の覚書が署名された。
米台の協力関係は経済面にとどまらない。1979年に制定された「Taiwan Relations Act(台湾関係法)」に基づき、米国は台湾に多くの兵器を輸出してきた。同法第2条B項(5)によって、提供される兵器は防御的性格を持つものに限定されてはいるが、台湾の国防力を強化するうえで極めて大きな役割を果たしている。2020年10月以降だけで、HIMARS(High Mobility Artillery Rocket System)11台、ATACMS(Army Tactical Missile System)ミサイル64発、AGM-84H SLAM-ER(Standoff Land Attack Missile-Expanded Response)ミサイル135発、ハープーン沿岸防御システム(発射機100基、地対艦ミサイル400発、レーダー25台)、無人海上哨戒機「MQ-9」4機などの提供が決定され、その総額は47億8,000万ドルをこえる。
ストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute: SIPRI)が公表している兵器の移転状況を把握するデータに基づけば、台湾が2000年から2019年の20年間に輸入した主要兵器の総額の96%が米国からのものとなっている。兵器の種類別にみると、航空機、艦船、ミサイル、防空システム、センサーの順に多く、これら5種類の合計額は総額の93%にもなっている。対着上陸作戦を重視した戦力構成を図ってきた台湾の特性が、明確に表れている。
11月9日には、台湾南部の高雄市に所在する左榮海軍基地に米海兵隊の現役部隊を招き、4週間にわたる米台共同訓練を開始したことを台湾海軍司令部が認めた。断交以来、米台両国政府が軍事的交流を正式に認めたことはなく、台湾における米軍の活動が公式に明かされたのは初めてのことである。
今回導入が決定された新型兵器は、沿岸部における情報収集能力を向上させ、対着上陸作戦において洋上の艦船の破壊や着上陸部隊の制圧に十分な能力を発揮することが確実だ。正式に表明された米台の軍事協力は、高官の交流を含めて今後さらに強化されていくことが予想される。これらはともに、台湾海峡において行動を活発化させる中国軍に対して、大きな抑止力として働くだろう。
サンタフェ総研上席研究員 米内 修 防衛大学校卒業後、陸上自衛官として勤務。在職間、防衛大学校総合安全保障研究科後期課程を卒業し、独立行政法人大学評価・学位授与機構から博士号(安全保障学)を取得。2020年から現職。主な関心は、国際政治学、国際関係論、国際制度論。
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今夏、米国政府要人の台湾訪問にあわせて、中国軍機の中台中間線越境が繰り返されている。8月10日に、断交後に訪台した政府高官として最高位となるアレックス・アザー米厚生長官が台湾に対する強力な支援を表明した際には、中国空軍機2機が中間線を越え、台湾の地対空ミサイルシステムで追跡されるとともに、対応した台湾空軍機によって押し戻された。9月17日に訪台したキース・クラック国務次官は、断交後に訪台した現職国務省高官として最高位にあるが、蔡英文総統を表敬訪問した18日には中国軍が台湾海峡で軍事演習を行い、多数の戦闘機が中間線を越境した。
中国との貿易摩擦が継続しているトランプ政権は、台湾との協力関係を強化している。11月20日、米台間で新たに設けられた「経済繁栄パートナーシップ対話」の初会合がワシントンで開催され、米国からクラック国務次官らが、台湾から陳正祺・経済部政務次官らが出席し、台湾の王美花経済部長らもオンライン参加した。米国務省が推進する「ニュー・クリーン・ネットワーク」や第5世代(5G)移動通信システムに関連した安全保障、半導体などの分野における協力などが確認され、5年間の包括的な経済協力の覚書が署名された。
米台の協力関係は経済面にとどまらない。1979年に制定された「Taiwan Relations Act(台湾関係法)」に基づき、米国は台湾に多くの兵器を輸出してきた。同法第2条B項(5)によって、提供される兵器は防御的性格を持つものに限定されてはいるが、台湾の国防力を強化するうえで極めて大きな役割を果たしている。2020年10月以降だけで、HIMARS(High Mobility Artillery Rocket System)11台、ATACMS(Army Tactical Missile System)ミサイル64発、AGM-84H SLAM-ER(Standoff Land Attack Missile-Expanded Response)ミサイル135発、ハープーン沿岸防御システム(発射機100基、地対艦ミサイル400発、レーダー25台)、無人海上哨戒機「MQ-9」4機などの提供が決定され、その総額は47億8,000万ドルをこえる。
ストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute: SIPRI)が公表している兵器の移転状況を把握するデータに基づけば、台湾が2000年から2019年の20年間に輸入した主要兵器の総額の96%が米国からのものとなっている。兵器の種類別にみると、航空機、艦船、ミサイル、防空システム、センサーの順に多く、これら5種類の合計額は総額の93%にもなっている。対着上陸作戦を重視した戦力構成を図ってきた台湾の特性が、明確に表れている。
11月9日には、台湾南部の高雄市に所在する左榮海軍基地に米海兵隊の現役部隊を招き、4週間にわたる米台共同訓練を開始したことを台湾海軍司令部が認めた。断交以来、米台両国政府が軍事的交流を正式に認めたことはなく、台湾における米軍の活動が公式に明かされたのは初めてのことである。
今回導入が決定された新型兵器は、沿岸部における情報収集能力を向上させ、対着上陸作戦において洋上の艦船の破壊や着上陸部隊の制圧に十分な能力を発揮することが確実だ。正式に表明された米台の軍事協力は、高官の交流を含めて今後さらに強化されていくことが予想される。これらはともに、台湾海峡において行動を活発化させる中国軍に対して、大きな抑止力として働くだろう。
サンタフェ総研上席研究員 米内 修 防衛大学校卒業後、陸上自衛官として勤務。在職間、防衛大学校総合安全保障研究科後期課程を卒業し、独立行政法人大学評価・学位授与機構から博士号(安全保障学)を取得。2020年から現職。主な関心は、国際政治学、国際関係論、国際制度論。
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