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中国“第14次五ヶ年”規画の諸問題の紹介【中国問題グローバル研究所】

注目トピックス 経済総合
【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している孫啓明氏の考察をお届けする。

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中国共産党は中国の執政党であり、中国の特色ある社会主義事業の指導の核心である。『中国共産党規約』の関係規定に基づき、党の全国代表大会は通常5年ごとに1回開催する。党の全国代表大会は最高権力機関である。通常言うところの“十九大”とは、即ち“中国共産党第19回全国代表大会”の略称である。党の全国代表大会は選挙で中央委員会を選出する。党の中央委員会は通常毎年1回全体会議を開催する。一般的に、一期の中央委員会は全部で5〜6回全体会議を開催する。これを“×中全会”と称する。一中全会では中央機構を決定する。新しい政治局委員、書記処書記及び中央軍事委員会を選挙する。二中全会は国務院、全国人民代表大会、全国政協(中国人民政治協商会議全国委員会)、最高検察院及び最高法院の交代の為に組織準備を行うと共に、国家機関指導者の人選を決定する。三中〜六中全会は一般に経済改革、党の建設、社会経済発展五ヶ年規画、社会風気と党の建設等の問題をそれぞれ研究する。更に七中代表大会があるが、これは全体大会ではなく、通常は主に経験を総括し次回大会の準備をするものである。

中国共産党第19回五中全会が過去の五中全会と異なるのは、特に重要な歴史的意義を持つ点である。何故なら今回会議は党と国家事業の発展全局という高い視点に立ち、十九大(中国共産党第19回全国代表大会)に提出した、2つ目の百年(1つ目の百年は1921年-2021年で中国共産党成立100周年までに全面的に小康社会を完成すること、2つ目の百年は1949年-2049年で新中国成立100周年までに富強で民主的で文明的で調和のある美しい社会主義現代化強国を完成すること)の奮闘目標を実現する為に、2段階に分けて推進する戦略的配置を行い、中国社会経済発展の第14次五ヶ年規画(2020年-2025年)を策定したのみならず、更に2035年までの中長期発展規画をも統一的に策定したからである。“第14次五ヶ年”規画は2035年長期目標実現の為の基礎であり、2035年中長期発展規画もまた“第14次五ヶ年”規画の策定、実施及び方向性を牽引しているのである。

一、中国“五ヶ年計画(規画)”の性質と時期区分
“五ヶ年計画(規画)”は、中国国民経済計画(規画)の重要部分であり、長期計画・規画に属するものである。主に国家重大建設プロジェクト、生産力分布及び国民経済重要比率関係等に対する計画と規画であり、(“第11次五ヶ年”から、市場経済改革の需要に適応し、“五ヶ年計画”を“五ヶ年規画”と改めた)、国民経済発展の長期ビジョンの為の目標と方向性を規定するものである。これまで、中国は全部で14の“五ヶ年計画(規画)”を策定してきた。1つ目の五ヶ年計画は1953年−1957年、2つ目の五ヶ年計画は1958年−1962年である(1963年−1965年は国民経済三年調整期)。3つ目の五ヶ年計画は1966年−1970年、4つ目の五ヶ年計画は1971年−1975年、5つ目の五ヶ年計画は1976年−1980年、6つ目の五ヶ年計画は1981年−1985年、7つ目の五ヶ年計画は1986年−1990年、8つ目の五ヶ年計画は1991年−1995年、9つ目の五ヶ年計画は1996年−2000年、10個目の五ヶ年計画は2001年−2005年、11個目の五ヶ年規画は2006年−2010年、12個目の五ヶ年規画は2011年−2015年、13個目の五ヶ年規画は2016年−2020年である。中国共産党第19回五中全会の主要任務は即ち2021年−2025年の中国社会経済発展の第14次五ヶ年規画及びその2035年までの中長期発展規画を策定することである。

二、“第14次五ヶ年”規画から、中国社会経済発展は新段階に突入
“第14次五ヶ年”の時期は中国が小康社会を全面的に完成し、1つ目の百年奮闘目標を実現した後、その勢いに乗って2つ目の百年奮闘目標に向かって進む最初の5ヶ年である。国際的に見ると、世界は100年未曾有の大変局が加速的変革期に入り、新型コロナウイルス肺炎という疫病大流行の影響が広く深遠で、経済グローバル化が逆境に見舞われ、国際経済、科学技術、文化、安全保障、政治等の布陣が何れも深く見直され、中国の発展の外部環境が益々錯綜複雑化している。国内的に見ると、中華民族の偉大なる復興が緊要な時期に入り、中国社会の主要矛盾に変化が生じ、経済が高質な発展段階に転換し、中国は多方面の優位性と条件とに直面し、多くの困難とチャレンジにも直面している。中国が直面する不確定・不安定要因や各種リスクによるチャレンジは増え続けているものの、新段階、新理念、新布陣による牽引の下、中国の経済社会発展は引き続き上向きで、危機の中で不断に新たな局面を切り拓いている。中国共産党第19回五中全会は世界に向けて中国が将来15年以内に社会主義現代化を基本的に実現するとの固い信念を伝え、世界に向けて中国が開放発展の理念を堅持するとの決意をも広く示した。世界経済の低迷、世界政治の動揺が激化する環境において、中国の安定と発展は世界の平和的発展の重要な安定装置であり動力源である。中国の発展は世界のその他の国にとって、脅威ではなくチャンスである。

三、“第14次五ヶ年”規画は“第13次五ヶ年”で提起された中国経済発展の新理念を引き続き踏襲
中共第18次五中全会では初めて“イノベーション、協調、グリーン、開放、共有”の五大新理念が提起された。“第14次五ヶ年”はこれを基礎に更に新しい発展理念、“生存型”段階から“発展型”新段階へと引き上げた。“幸福指標システム”にこだわり、人本位に重きを置き、“全公民への恩恵”を提起、“世代内公平”と“世代間公平”の同等重視を実現し、就業促進を経済社会発展の優先的位置に据え、住民所得と労働報酬の両者同時成長を実現、所得格差拡大傾向を転換し、基本公共サービスの均等化を推進、発展成果の恩恵を全人民に及ぼす。

四、“第14次五ヶ年”規画は中国経済発展の新布陣と新目標を提起
経済発展布陣は経済の規模、構造、質、形態、方式等方面に対する総体的概括である。新布陣の構築とは“国内の大循環を円滑にし、国内と国際の双循環を促進する”(習近平の言葉)ことである。新布陣は国家経済全体布陣の循環であり、国民経済の全体循環である。生産、分配、需要、及び輸入と輸出、輸入と生産、輸入と消費の循環を含む国内と国際の循環を円滑にすることが含まれる。国内循環の核心は“閉塞箇所”を打開することである。国外の循環とはより断乎として開放を拡大することである。開放する領域、範囲及び深度を不断に拡大し、輸出を減少して相対的に輸入を増加する。生産面での“世界の工場”の役割をしっかり担いながらも、消費面での“世界のマーケット”の地位も勝ち取り、それによって国内市場を大きくし、中国市場の吸引力を増強して、国内循環と国際循環を相互に促進せしめる。

“第14次五ヶ年”経済社会発展の主要目標は主に、経済発展で新たな成果を挙げ、改革開放で新たなステップを踏み出し、社会文明程度で新たな向上を遂げ、生態文明建設で新たな進歩を実現し、民生福祉で新たな水準に達し、国家統治機能で新たな向上を遂げることが含まれる。中国国内市場をより強大にし、産業チェーンをより現代化し、農業基礎をより堅固にし、経済構造をより最適化し、イノベーション能力を顕著に向上する。

2035年までの長期目標は、中国の経済実力・科学技術実力・綜合国力を大幅に飛躍させ、鍵となるコア技術の重大ブレークスルーを実現する/イノベーション型国家の上位グループに進出し、新型工業化・情報化・都市化・農業現代化をほぼ実現し、現代化経済システムを完成する/国家統治システムと統治能力の現代化をほぼ実現し、法治国家・法治政府・法治社会をほぼ完成する/文化強国・教育強国・人材強国・体育強国・健康中国を完成し、グリーン生産生活方式を広範に形成、二酸化炭素排出をピークに達した後に安定的に低下させ、生態環境を根本的に好転、美しい中国建設目標をほぼ実現する/一人当たりGDPを中進国並みにし、国防と軍隊の現代化をほぼ実現する/人民生活をより美しくし、人の全面発展、全人民共同富裕を実質的に進展させる、ことである。

五、“第14次五ヶ年”規画は中国経済発展の新任務を提起
生態環境整備。“第14次五ヶ年”規画は生態環境整備事業を引き続き部署し、生態文化システム、生態経済システム、目標責任システム、生態文明制度システム、生態安全システムを整備し、産業配置を見直し、省エネ環境保全産業、クリーン生産産業、クリーンエネルギー産業を育成大規模化し、資源の節約と循環利用を促進する。

現代経済を高質発展させる。企業が主体の、市場が指針の、産学研が深く融合した産業体制を確立し、科学研究成果の転化を促進する。

農業農村現代化を推進する。郷村新興戦略を推進し、農民に獲得感、幸福感及び安全感を持たせる。

区域協調発展戦略を実施する。東、中、西及び東北、重点区域・大小中都市等の協調発展に重点を置き、市場一体化発展メカニズムを整備、“点によって面を引っ張り”大区域の高質(発展)を後押しする。

公共サービス均等化。教育優先戦略を実施し、救助・低保(最低生活保障制度)・保険等の社会保障水準を向上、“第14次五ヶ年”基本公共サービスリストを確立する。

イノベーションエコシステムを構築する。イノベーション駆動発展戦略を実施し、税制、ポスト補助金、報奨、調達等の政策実現の為の具体的措置を整備し、人材誘致・人材雇用・人材育成の長期有効メカニズムを刷新、開放的で包容的で調和があり、秩序があるイノベーションエコシステムを育成及び建設する。

都市化発展の質を向上する。都市発展の質と綜合負荷能力を向上し、都市化発展の水準と質を向上、新型都市化戦略と郷村新興戦略を統一的に実施する。

インフラネットワークを整備する。安全で高効率、スマートでグリーン、相互接続の現代的インフラネットワークを建設し、農村の飲用水・道路・電気・住宅・物流・情報ネットワーク等のインフラ建設を強化、都市と農村のインフラ完備度合を徐々に均衡化する。

主要な領域での深い改革を実施する。ビジネス環境の重点領域改革を推進し、民営企業の発展大規模化を支援し、財税制度改革を深め、財税制度改革を推進し、附随する監督管理制度やリスク防止体制を整備する。

対外開放の新布陣を最適化する。共商(共に話し合い)共建(共に建設し)共享(共に享受する)原則を遵守し、対外開放プラットフォームを強化、対外開放領域を拡大し、対外開放体制メカニズムを最適化、全面対外開放戦略の実施を通じて、外部のハイテクとイノベーション要素を導入し、より高い起点から自主イノベーションを推進する。
写真:新華社/アフロ

※1:https://grici.or.jp/



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