今こそ「円ステーブルコイン」の導入を【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】
[20/12/21]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 経済総合
IMF(国際通貨基金)は2020年11月17日発行の「Reserve Currencies in an Evolving International Monetary System」で、準備通貨としての米ドルの優位性が持続すると予想される一方、(1)COVID-19のパンデミックが準備通貨構成の経済的要因に大きな不確実性をもたらしている、(2)地政学的緊張の高まりが準備通貨の戦略的調整を突然引き起こす可能性がある、(3)デジタル通貨や決済エコシステムなどの技術進歩が新たな準備通貨の出現をもたらす可能性がある、と指摘した。
上記(3)では、シナリオ・プランニングを用いて、準備通貨に対する技術の長期的影響を考察しており、2045年までに準備通貨の構成が変化する3つのシナリオを挙げている。具体的には、「シナリオ1:世界的な中央銀行デジタル通貨の興亡」は、地政学的な分裂が進み、中立的な通貨を介した取引が重視される状況で、世界中の中央銀行が新しい中央銀行デジタル通貨(CBDC)を保有するケース、「シナリオ2:複数の民間デジタル通貨が存在する世界」は、人々が不換紙幣よりも民間の決済プラットフォームを好み、それが貨幣の全ての役割を果たす本格的な民間デジタル通貨となっていくケース、「シナリオ3:世界的な通貨となる個人データに基づく新しい形の貨幣」は、商品やサービスの対価として発行される決済手段「データ・トークン」がグローバルなデジタル通貨となるケース、である。
上記のIMFのレポートは、ステーブルコインが次世代の準備通貨、そして基軸通貨になり得る可能性を検討したものと位置付けることができるだろう。ステーブルコインとは「安定した価格を実現するように設計された通貨」であり、法定通貨担保型、暗号資産担保型、無担保型の3種類が存在する。Coingeckoによると、ステーブルコインの時価総額は266億ドルであり、テザー、USDC、Daiなどドルペッグのものが大半を占める。12月18日、テザーの時価総額は200億ドルを上回り、3ヵ月前からは倍増となった。
中央銀行の法定通貨であるナローマネーと、非中央集権的で通貨に近い性質を有する金などを合算すると44兆ドル規模となる。80兆ドルの世界GDPを、こういった非デジタル通貨が支えている。現在の金融市場が、デジタル金融市場に移行していけば、ブロックチェーンに保管されていくであろう8兆ドルの世界GDPを支えるためのデジタル通貨も必要となる。その金額は4.4兆ドルと試算される(ステーブルコインはこの一部である)。そして、実体経済を従来の金融市場が支えているのと同様に、デジタル経済を支えるためのデジタル金融市場、暗号資産金融市場も本格的に立ち上がる。その総額は85.7兆ドルと試算される。
足元では日本の貿易収支は辛うじて黒字基調を維持しているが、成熟した日本はかつてのような稼ぎを望むべくもない。世界経済の仕組みがダイナミックに転換している中、新たな産業を構築しなければ、近い将来、日本は大幅な貿易赤字を免れ得ないかもしれない。現在は債権国であるが、ライフサイクル的に考えれば、債権取崩国に転落する未来も十分に考えられる。
そう考えると、金融市場のデジタル化を好機と捉え、積極的にデジタル資本の獲得に乗り出すべきところであろうが、残念ながら日本からはデジタル資本が流出している。Crystal Blockchainによると、2020年1〜9月の日本からのビットコイン流出額は23.0億ドルであったのに対して流入額は14.4億ドルであり、トータルでは8.6億ドルの純流出となった。2019年の純流出は11.5億ドルであったが、このペースが続けば、2020年通年も2019年とほぼ同程度の純流出が生じることになりそうだ。
日本から暗号資産が継続的に失われている状況には警戒感が必要だ。2013年以降の日本からのビットコイン純流出は累計で41.8億ドルに上っており、2017年以降は継続的な純流出が生じている。累計の純流出額が大きいのは、セーシェル、リヒテンシュタイン、日本などであり、純流入額が大きいのは、米国、イギリス、EUなどである。
マネックス証券は、2017年6月以降、日本の個人投資家の「仮想通貨投資の経験」を調査している。2019年12月時点では、仮想通貨への投資経験があると答えた割合が13.1%と、前回18年12月の11.5%から1.6ポイント上昇した。データ数が少ないため断言は難しいが、暗号資産の普及率が上昇し、デジタル化が進展すると、日本からのビットコインの純流出が拡大するようにも見受けられる。
2020年10〜12月のビットコイン流出額も興味深いところであろう。2020年後半にビットコイン価格は急上昇し、2017年末の高値を3年ぶりに更新し、12月17日には23,000ドル台を付けた。既往のビットコインの流出が限られているのは、暗号資産の投資経験が限られているからかもしれない。ビットコインの価格上昇を受けて、日本人の暗号資産への関心が高まり、暗号資産普及率が上昇すれば、それがさらなるデジタル資本の流出をもたらす可能性も考えられる。
「暗号資産の普及率」はデジタル化の浸透度でもあろう。デジタル金融市場が拡大した場合には、資本流出が一気に加速する可能性があるが、実際にデジタル金融市場は急速な成長期に入ったようにも見受けられる。Defipulseによると、DeFiのロック資産総額は163億ドルである。未だその規模は限られるが、2018年末の3億ドル、2019年末の7億ドルからは指数関数的に成長している。
インターネット、スマートフォン、携帯電話の普及率を参照すると、日本からの暗号資産の純流出は2030年時点で84〜86億ドル、2020〜30年の累計では690〜850億ドルという規模感に達する可能性が考えられる。「今後の暗号資産の普及率がS字カーブを描いて上昇する」という想定に立って暗号資産の純流出額を推計しても、2030年時点では96億ドル、2020〜30年の累計では757億ドルと見込まれる。
なお、詳細には立ち入らないが「ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元」で記した通り、デジタル通貨に対する米中の姿勢次第では、流出規模は2,200億ドルに拡大する可能性も考えられる。ここまで来ると、現在の株式や債券を通じた資金流出入の規模を上回り、3.4兆ドルの対外純資産に対する影響すら無視し得ないものとなってくる。
2019年12月、日本銀行の黒田総裁は、「影響力を持ったステーブルコインが現れると、中央銀行の金融政策の効果が弱まり、金融の安定が損なわれることになるので、ステーブルコインの価値が不安定化し、様々な経済に悪影響を及ぼす」と述べた。この状況を、金融版の共有地の悲劇(参加者が利己的な行動を取ることで全体が悪くなること)に例え、金融が統合された世界で金融安定を実現するためには、ステーブルコインに対して「国際的に整合性のとれた規制をする必要がある」と強い警戒感を示した。
ステーブルコインに対する警戒的なスタンスには変更がないが、それでも世界的にはデジタル通貨に対する前向きな取り組みが進められている。基軸通貨の恩恵を享受するアメリカもデジタルドルの発行に前向きではなかったが、2020年6月17日、パウエルFRB議長が「法定デジタル通貨は、真剣に研究する案件の一つ」、「世界の基軸通貨としての地位を保つ必要がある」、「ドルは各国の準備通貨であり続ける必要がある」などと述べた。
日銀のスタンスにも変化が見られる。2020年1月、日銀は他中銀などとデジタル法定通貨の共同研究のための組織を立ち上げたと発表した。7月20日には、決済機構局決済システム課に「デジタル通貨グループ」を設置、10月9日には「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」で、「一般利用型CBDC」に関する日銀の取り組み方針を示している。
政治的なプレッシャーも強まっているようだ。5月28日の自民党金融調査会の提言「中央銀行デジタル通貨(CBDC)の推進について」では、「CBDCの技術標準を中国に先に握られることは安全保障上の脅威になりえる」とした上で、(1)わが国が主導する形で、国際的な協調の中でCBDCの技術標準を構築していくことが重要、(2)米国も巻き込んだ合意形成を目指すべき、(3)CBDCについて、より具体的な検討を直ちに開始すべき、(4)実証実験についてもスピード感をもって取り組むべき、と提言され、6月25日の自民党政務調査会「ポストコロナの経済社会に向けた成長戦略」では、「リブラ構想や、デジタル人民元の発行が近いことを踏まえ」米国と連携しつつ、CBDCについて、技術的な検証を狙いとした実証実験などを行うべきである」と言及された。これらを受けて、「骨太の方針2020」では「デジタル通貨」について「サプライチェーンの多元化等を通じた強靭な経済・社会構造の構築」の末尾に僅か2行ではあるが「中央銀行デジタル通貨については、日本銀行において技術的な検証を狙いとした実証実験を行うなど、各国と連携しつつ検討を行う」と明記された。
大きな地殻変動が水面下で進んでおり、日本に残された時間は僅かであり、立ち止まっている時間はない。デジタル資本を受け入れる政策をいち早くすすめ、グローバルなデジタル金融市場で円ペッグのステーブルコインを普及させるべきと考える。
日本でも、2020年に入り、ブロックチェーン推進協会、日本暗号資産ビジネス協会がそれぞれ「ステーブルコイン部会」を立ち上げ、ステーブルコインの法的分類や論点の共有、検討すべき課題についての議論が行われている。資金決済法では「通貨建資産」は暗号資産の定義から除外されていることもあり、現状では国内において取り扱いが難しいと見られている。
他方、デジタル通貨に慎重であったアメリカは、ドルペッグの複数のステーブルコインを事実上、既に認めている。ジェミニが発行したGUSD、サークル社が発行したUSDCのいずれもが、ニューヨーク州金融サービス局から認可を受けたものである。アメリカの法律で合法とされた複数のステーブルコインが違和感なく世の中に浸透し、すでに世界中で流通している。
暗号資産業界においてもドルが基軸通貨となりつつある点を考慮すると、試験的であっても、日本も円ペッグのステーブルコインの普及に向けて取り組む価値はありそうだ。
(シークエッジグループCEO 中国問題グローバル研究所理事 白井一成)
図表:非デジタル資産とデジタル資産の市場規模
(出所:フィスコ)
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上記(3)では、シナリオ・プランニングを用いて、準備通貨に対する技術の長期的影響を考察しており、2045年までに準備通貨の構成が変化する3つのシナリオを挙げている。具体的には、「シナリオ1:世界的な中央銀行デジタル通貨の興亡」は、地政学的な分裂が進み、中立的な通貨を介した取引が重視される状況で、世界中の中央銀行が新しい中央銀行デジタル通貨(CBDC)を保有するケース、「シナリオ2:複数の民間デジタル通貨が存在する世界」は、人々が不換紙幣よりも民間の決済プラットフォームを好み、それが貨幣の全ての役割を果たす本格的な民間デジタル通貨となっていくケース、「シナリオ3:世界的な通貨となる個人データに基づく新しい形の貨幣」は、商品やサービスの対価として発行される決済手段「データ・トークン」がグローバルなデジタル通貨となるケース、である。
上記のIMFのレポートは、ステーブルコインが次世代の準備通貨、そして基軸通貨になり得る可能性を検討したものと位置付けることができるだろう。ステーブルコインとは「安定した価格を実現するように設計された通貨」であり、法定通貨担保型、暗号資産担保型、無担保型の3種類が存在する。Coingeckoによると、ステーブルコインの時価総額は266億ドルであり、テザー、USDC、Daiなどドルペッグのものが大半を占める。12月18日、テザーの時価総額は200億ドルを上回り、3ヵ月前からは倍増となった。
中央銀行の法定通貨であるナローマネーと、非中央集権的で通貨に近い性質を有する金などを合算すると44兆ドル規模となる。80兆ドルの世界GDPを、こういった非デジタル通貨が支えている。現在の金融市場が、デジタル金融市場に移行していけば、ブロックチェーンに保管されていくであろう8兆ドルの世界GDPを支えるためのデジタル通貨も必要となる。その金額は4.4兆ドルと試算される(ステーブルコインはこの一部である)。そして、実体経済を従来の金融市場が支えているのと同様に、デジタル経済を支えるためのデジタル金融市場、暗号資産金融市場も本格的に立ち上がる。その総額は85.7兆ドルと試算される。
足元では日本の貿易収支は辛うじて黒字基調を維持しているが、成熟した日本はかつてのような稼ぎを望むべくもない。世界経済の仕組みがダイナミックに転換している中、新たな産業を構築しなければ、近い将来、日本は大幅な貿易赤字を免れ得ないかもしれない。現在は債権国であるが、ライフサイクル的に考えれば、債権取崩国に転落する未来も十分に考えられる。
そう考えると、金融市場のデジタル化を好機と捉え、積極的にデジタル資本の獲得に乗り出すべきところであろうが、残念ながら日本からはデジタル資本が流出している。Crystal Blockchainによると、2020年1〜9月の日本からのビットコイン流出額は23.0億ドルであったのに対して流入額は14.4億ドルであり、トータルでは8.6億ドルの純流出となった。2019年の純流出は11.5億ドルであったが、このペースが続けば、2020年通年も2019年とほぼ同程度の純流出が生じることになりそうだ。
日本から暗号資産が継続的に失われている状況には警戒感が必要だ。2013年以降の日本からのビットコイン純流出は累計で41.8億ドルに上っており、2017年以降は継続的な純流出が生じている。累計の純流出額が大きいのは、セーシェル、リヒテンシュタイン、日本などであり、純流入額が大きいのは、米国、イギリス、EUなどである。
マネックス証券は、2017年6月以降、日本の個人投資家の「仮想通貨投資の経験」を調査している。2019年12月時点では、仮想通貨への投資経験があると答えた割合が13.1%と、前回18年12月の11.5%から1.6ポイント上昇した。データ数が少ないため断言は難しいが、暗号資産の普及率が上昇し、デジタル化が進展すると、日本からのビットコインの純流出が拡大するようにも見受けられる。
2020年10〜12月のビットコイン流出額も興味深いところであろう。2020年後半にビットコイン価格は急上昇し、2017年末の高値を3年ぶりに更新し、12月17日には23,000ドル台を付けた。既往のビットコインの流出が限られているのは、暗号資産の投資経験が限られているからかもしれない。ビットコインの価格上昇を受けて、日本人の暗号資産への関心が高まり、暗号資産普及率が上昇すれば、それがさらなるデジタル資本の流出をもたらす可能性も考えられる。
「暗号資産の普及率」はデジタル化の浸透度でもあろう。デジタル金融市場が拡大した場合には、資本流出が一気に加速する可能性があるが、実際にデジタル金融市場は急速な成長期に入ったようにも見受けられる。Defipulseによると、DeFiのロック資産総額は163億ドルである。未だその規模は限られるが、2018年末の3億ドル、2019年末の7億ドルからは指数関数的に成長している。
インターネット、スマートフォン、携帯電話の普及率を参照すると、日本からの暗号資産の純流出は2030年時点で84〜86億ドル、2020〜30年の累計では690〜850億ドルという規模感に達する可能性が考えられる。「今後の暗号資産の普及率がS字カーブを描いて上昇する」という想定に立って暗号資産の純流出額を推計しても、2030年時点では96億ドル、2020〜30年の累計では757億ドルと見込まれる。
なお、詳細には立ち入らないが「ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元」で記した通り、デジタル通貨に対する米中の姿勢次第では、流出規模は2,200億ドルに拡大する可能性も考えられる。ここまで来ると、現在の株式や債券を通じた資金流出入の規模を上回り、3.4兆ドルの対外純資産に対する影響すら無視し得ないものとなってくる。
2019年12月、日本銀行の黒田総裁は、「影響力を持ったステーブルコインが現れると、中央銀行の金融政策の効果が弱まり、金融の安定が損なわれることになるので、ステーブルコインの価値が不安定化し、様々な経済に悪影響を及ぼす」と述べた。この状況を、金融版の共有地の悲劇(参加者が利己的な行動を取ることで全体が悪くなること)に例え、金融が統合された世界で金融安定を実現するためには、ステーブルコインに対して「国際的に整合性のとれた規制をする必要がある」と強い警戒感を示した。
ステーブルコインに対する警戒的なスタンスには変更がないが、それでも世界的にはデジタル通貨に対する前向きな取り組みが進められている。基軸通貨の恩恵を享受するアメリカもデジタルドルの発行に前向きではなかったが、2020年6月17日、パウエルFRB議長が「法定デジタル通貨は、真剣に研究する案件の一つ」、「世界の基軸通貨としての地位を保つ必要がある」、「ドルは各国の準備通貨であり続ける必要がある」などと述べた。
日銀のスタンスにも変化が見られる。2020年1月、日銀は他中銀などとデジタル法定通貨の共同研究のための組織を立ち上げたと発表した。7月20日には、決済機構局決済システム課に「デジタル通貨グループ」を設置、10月9日には「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」で、「一般利用型CBDC」に関する日銀の取り組み方針を示している。
政治的なプレッシャーも強まっているようだ。5月28日の自民党金融調査会の提言「中央銀行デジタル通貨(CBDC)の推進について」では、「CBDCの技術標準を中国に先に握られることは安全保障上の脅威になりえる」とした上で、(1)わが国が主導する形で、国際的な協調の中でCBDCの技術標準を構築していくことが重要、(2)米国も巻き込んだ合意形成を目指すべき、(3)CBDCについて、より具体的な検討を直ちに開始すべき、(4)実証実験についてもスピード感をもって取り組むべき、と提言され、6月25日の自民党政務調査会「ポストコロナの経済社会に向けた成長戦略」では、「リブラ構想や、デジタル人民元の発行が近いことを踏まえ」米国と連携しつつ、CBDCについて、技術的な検証を狙いとした実証実験などを行うべきである」と言及された。これらを受けて、「骨太の方針2020」では「デジタル通貨」について「サプライチェーンの多元化等を通じた強靭な経済・社会構造の構築」の末尾に僅か2行ではあるが「中央銀行デジタル通貨については、日本銀行において技術的な検証を狙いとした実証実験を行うなど、各国と連携しつつ検討を行う」と明記された。
大きな地殻変動が水面下で進んでおり、日本に残された時間は僅かであり、立ち止まっている時間はない。デジタル資本を受け入れる政策をいち早くすすめ、グローバルなデジタル金融市場で円ペッグのステーブルコインを普及させるべきと考える。
日本でも、2020年に入り、ブロックチェーン推進協会、日本暗号資産ビジネス協会がそれぞれ「ステーブルコイン部会」を立ち上げ、ステーブルコインの法的分類や論点の共有、検討すべき課題についての議論が行われている。資金決済法では「通貨建資産」は暗号資産の定義から除外されていることもあり、現状では国内において取り扱いが難しいと見られている。
他方、デジタル通貨に慎重であったアメリカは、ドルペッグの複数のステーブルコインを事実上、既に認めている。ジェミニが発行したGUSD、サークル社が発行したUSDCのいずれもが、ニューヨーク州金融サービス局から認可を受けたものである。アメリカの法律で合法とされた複数のステーブルコインが違和感なく世の中に浸透し、すでに世界中で流通している。
暗号資産業界においてもドルが基軸通貨となりつつある点を考慮すると、試験的であっても、日本も円ペッグのステーブルコインの普及に向けて取り組む価値はありそうだ。
(シークエッジグループCEO 中国問題グローバル研究所理事 白井一成)
図表:非デジタル資産とデジタル資産の市場規模
(出所:フィスコ)
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