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米ロ新START延長、核兵器拡散に歯止めとなるか【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】

注目トピックス 経済総合
2021年2月5日、米国とロシアの新START(戦略兵器削減条約)が発効した。この条約により戦略核弾頭の配備数を双方とも1,550発、戦略爆撃機や大陸間弾道ミサイルなどの運搬手段の総数を800機・基に制限している。米国のバイデン大統領は1月26日、大統領就任後初のロシア・プーチン大統領との電話会談において、この新STARTの5年間延長に合意した。

2月3日、CNNは、「ブリンケン米国務長官が『新STARTの延長によりロシアの重爆撃機や大陸間弾道ミサイルに2026年2月5日まで検証可能な制限をかけることが可能になる。米国は、この条約の検証体制を通じてロシアの順守状況を監視し、その核兵器態勢についてより深い知見を得られるようになる。そして、この条約により米国や同盟国、パートナー国、ひいては世界が安全になり、核拡散に歯止めがかけられる』との声明を発表した」と報じた。

今回の新START延長の政治的、軍事的意義はいくつかあるが、そのうち最も重要な事項は、「軍縮枠組みの交渉テーブルに、米ロという両軍事大国がついている」ということであろう。さらに、「条約の順守状況について、相互の現地査察や検証を通じ軍事的な透明性が確保される」という意義があり、相互不信による突発的な衝突の防止や新たに開発を目指している戦略核兵器など軍拡への歯止めに寄与することが期待される。

2020年版のSIPRI(ストックホルム国際平和研究所)の報告によると、世界全体で保有する核弾頭数は2019年の13,865発から2020年は13,400発となり、若干減少した。しかし、核保有国はいずれも自国の核兵器システムの近代化を推進または計画していることから、今後の核軍縮の見通しは極めて厳しいと見ている。各核保有国は核戦力について情報開示を進めておらず、国際情勢が不安定化したとも見積もっている。また、配備済みの核弾頭数は米国が1,750発、ロシアが1,570発であるが、米国が6,185発、ロシアが6,500発の核兵器を保有している。さらに中国は290発、フランスが300発、英国が200発の核兵器を保有し、そのほかインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の核保有が報告されている。

米ロによる新STARTの延長は歓迎すべき軍縮枠組みであるが、軍備管理上懸念すべき事項もいくつか見受けられる。まず、新STARTでは配備済みの戦略核について制限がかけられたが、INF条約(2019年に失効)で管理されていた中距離核戦力や戦術核については、全く規定されていない。また、不透明かつ継続的に高い水準で軍備を拡大している中国や、英仏など他の核保有国の軍備管理も行われていない。2021年1月に「核兵器禁止条約」が発効したが、核保有国は参加していない。今回の新START延長により米ロ両軍事大国がイニシアティブを発揮し、核兵器拡散に歯止めをかけ、「核廃絶」に向けた実効性の高い内容の条約に発展していくことを期待したい。


サンタフェ総研上席研究員 將司 覚
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。P-3C操縦士、飛行隊長、航空隊司令歴任、国連PKO訓練参加、カンボジアPKO参加、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動教訓収集参加。米国海軍勲功章受賞。2011年退官後、大手自動車メーカー海外危機管理支援業務従事。2020年から現職。



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