米国株式市場見通し:ウクライナ情勢が焦点、東部での住民投票を週末に実施
[14/05/10]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 市況・概況
週初は、ウクライナ情勢への警戒感や中国の製造業指数を嫌気して下落して始まったものの、4月ISM非製造業景況指数が予想を上回り6ヶ月ぶりの高水準となったことで緩やかに上昇に転じた。その後は主要企業に冴えない決算が相次いだことや、チャリティーイベントで著名ファンドマネージャーが、クラウド関連銘柄などハイテクの一部が割高との見方を示したことが嫌気され軟調推移となった。週半ばになるとロシアのプーチン大統領がウクライナ東部での住民投票延期を要請したことなどが好感される一方で、引き続きハイテクセクターの一角や小型株に売りが続き揉み合う展開となった。週間新規失業保険申請数が予想よりも少なかったことが好感され、ダウ平均株価がザラ場ベースで過去最高値目前に迫る場面もあったが上値も限られた。プーチン大統領の要請を無視し、ウクライナ東部で親ロシア派が住民投票を予定通り実施する見通しとなったことも嫌気された。週末にかけても小動きに終始する展開となる中、ダウ平均株価は過去最高値を更新。一方でナスダック総合指数は週を通じて下落した。
個別では短文投稿サイトのツイッターが上場後の株式売却を禁止する「ロックアップ」期間が終了し大幅下落。携帯端末メーカーのアップルは、ヘッドホンメーカーの買収観測が報じられ下落。ポータルサイトのヤフーは、大株主である中国のアリババ・グループが株式上場申請書類を提出し、自社の企業価値を1090億ドルと予想を大きく下回る水準で見積もっていたことが嫌気され軟調推移となった。またオーガニック食品スーパーのホールフーズは決算が予想を下回り急落した。一方でビデオゲームのエレクトロニック・アーツや医療保険のヒューマナは好決算を発表して堅調推移となった。
プーチン大統領が中止を要請している、ウクライナ東部での住民投票が週末に実施されるかどうかが焦点だ。また15日にはウクライナの大統領選挙が控えており、ウクライナ情勢の緊迫化が警戒される。
1-3月期決算発表シーズンはピークを通過したが、今週は農業機械のディア(14日)、ネットワーク機器のシスコシステムズ(14日)、半導体製造装置のアプライド・マテリアルズ(15日)、小売のコールズ(15日)やノードストローム(15日)などの決算発表が予定されている。来週以降に小売大手の決算発表が多数予定されていることもあり、コールズやノードストロームの決算で個人消費の傾向を見極めたい。
5月9日時点のファクトセット社の集計によるとS&P500構成銘柄のうち454社が第1四半期決算発表を終了し、75%が利益、54%が売上高のアナリスト予想を上回った。一時は前年同期比で減益の可能性も指摘されていた企業利益の成長率は2.2%の増益へと改善している。
決算以外では、アップルによるヘッドホンメーカーのビーツの買収にも注目が集まっている。報道によれば、早ければ今週にも正式な買収発表の可能性がある。
経済指標では4月小売売上高(13日)、4月鉱工業生産・設備稼働率(15日)、5月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数(15日)、5月NAHB住宅市場指数(15日)、4月住宅着工件数(16日)などの発表が予定されている。中でも、イエレンFRB議長が先週の議会証言で住宅市場の弱含みに言及したほか、著名投資家のバフェット氏も住宅市場の回復が想定よりも緩慢だとの見解を示しており、住宅関連指標に注目が集まりそうだ。
<TN>