米国株式市場見通し:住宅関連経済指標に注目、構造的な要因も
[14/05/24]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 市況・概況
週末が連休となることもあり、週を通じて閑散取引となった。週初はアジアや欧州株式相場が下落した流れを受け売りが先行したものの、ハイテクや小型株を買い戻す動きが優勢となり上昇に転じた。通信大手のAT&Tが衛星テレビのディレクTVの買収を正式に発表したことで、通信業界再編の動向に注目が集まった。その後、小売企業の冴えない決算や慎重な業績見通しが相次いだほか、プロッサー・フィラデルフィア連銀総裁とダドリーNY連銀総裁が相反すると受け止められる発言をしたことで前回の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の内容を見極めたいとの思惑から上値の重い展開となった。注目のFOMC議事録では、出口戦略に関する様々な議論はあったものの、即座に金融政策の変更などの行動に移すわけではない旨が強調されたことが好感され、株価も堅調推移となった。予想を上回る小売企業決算が相次いだことや、5月製造業PMI指数が上振れしたことで週後半も底堅い動きとなった。週末にかけては、一部に住宅市場に警戒感が広がっていたが、4月新築住宅販売が予想を上回ったことで上昇し、大型株で構成されるS&P500指数は終値ベースで過去最高値を更新した。結局、週を通じて主要株式指数は上昇。
個別では製薬のファイザーが英アストラゼネカへの買収提示額を引き上げたものの拒否されたことで上昇。宝飾品小売のティファニーやディスカウントストアのダラーツリー、家電小売のベストバイが好決算を発表して堅調推移となった。動画ストリーミングのネットフリックスは欧州でのサービス地域拡大計画を発表して上昇。一方でオフィス用品のステープルズやアパレルのアーバン・アウトフィッターズ、スポーツ用品小売のディックス・スポーティング・グッズなどが冴えない決算を発表して軟調推移となった。
26日(月曜日)はメモリアルデーの祝日で、米国株式相場は休場。住宅市場の先行きを警戒する見方が広がる中で、先週発表された4月新築住宅販売件数が予想を上回り、前月の数値も上方修正されたことが注目されている。今週は3月FHFA住宅価格指数(27日)や3月ケース・シラー住宅価格指数(27日)、4月中古住宅販売仮契約(29日)の発表が予定されており、住宅市場の動向を見極めたいとの思惑が広がるだろう。
住宅市場が低調な要因としては、ベビーブーマー世代が郊外の一戸建てから都市部のコンドミニアム(マンション)へと移る傾向や、若年層が失業率や教育ローン債務の高さで、親元を離れて新たに世帯を形成するのが難しくなるなど構造的な要因が指摘されている。また価格の低い住宅ほど住宅ローンが担保割れしている割合が高く、売却できない為に買い替えも進まない。そして住宅ローンの多くが依然として政府系金融機関のファニーメイとフレディーマックに依存しており、大手行はドットフランク法による金融規制の強化でリスクの高い融資が難しくなっていることも問題と言える。
その他の経済指標では4月耐久財受注(27日)、5月消費者信頼感指数(27日)、1-3月期GDP改定値(29日)、5月シカゴ購買部協会景気指数(30日)などの発表も予定されている。
個別では住宅メーカーのトールブラザーズ(28日)、倉庫型卸売のコストコ・ホールセール(29日)、アパレルのアバクロンビー&フィッチ(29日)などの決算発表が予定されている。アバクロンビー&フィッチは、競合のアメリカン・イーグル・アウトフィッターズやエアロポステールなどが先週発表した決算が予想を下回り急落となったこともあり、警戒感が広がっている。
携帯端末大手のアップルが来週月曜日(2日)にWWDC(世界開発者会議)のイベントを予定している為、週末にかけては同イベントでの新製品や新サービスへの期待が高まりそうだ。MacやiPhoneの基本ソフト(OS X及びiOS)の最新版の発表が確実視されているほか、ヘッドホンメーカーで月額制音楽配信も手掛けるBEATS社の買収が正式発表される可能性もあるだろう。
(Horiko Capital Management LLC)
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