米国株式市場見通し:イラク情勢が懸念材料、FOMCへの影響の有無にも注目
[14/06/14]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 市況・概況
企業買収の発表が相次いだことで買いが先行。週前半は主要な経済指標の発表が無かったこともあり出来高も少なく小幅な値動きとなり、S&P500変動率(VIX)指数は約7年ぶりの低水準まで低下した。週半ばになると下院共和党ナンバー2のカンター議員がバージニア州の予備選挙で保守派(ティーパーティー)候補に予想外の敗北を喫したことによる不透明感が嫌気され下落に転じた。5月小売売上高が予想を下回ったほか、週間新規失業保険申請数も予想以上の増加となったことで続落。更にイラクで武装勢力が北部を制圧し、首都バグダッド侵攻を示唆するなど地政学リスクの高まりも嫌気された。オバマ大統領が会見し、米軍による空爆の可能性に含みをもたせたことをきっかけに、下げ幅を拡大した。週末にかけてはイラク情勢を受けた売りが一巡し、半導体大手の業績上方修正が好感され小幅上昇。結局、週を通じて主要株式指数は下落。
9日に株式7分割を実施したアップルは週半ばにかけて上昇した後、売りに押される展開となった。半導体のインテルはビジネス向けPC販売が好調なことを理由に業績上方修正を発表して上昇。C型肝炎治療薬などのアイデニクスは製薬大手のメルクによる買収提案を受け急騰。食品のヒルシャーブランズはタイソン・フーズが買収提示額を引き上げたことで同提案に合意し上昇。レストラン予約のオープンテーブルは、旅行予約サイトのプライスラインによる買収に合意し大幅高となった。一方でイラク情勢を受けた燃料費高騰への懸念からユナイテッド航空やデルタ航空など航空会社各社が下落。ヨガ用品・アパレルのルルレモン・アスレティカは業績下方修正を発表して急落となった。
イラク情勢が引き続き懸念材料となるだろう。特に原油価格の動向に影響を受けやすい航空会社やエネルギー関連株の値動きに注意したい。中長期的にはシェールガス・オイルの恩恵で米国の中東の原油に依存する割合は大きく減少することが予想されているものの、現時点ではイラク情勢の影響は避けられない状況だ。
17・18日に開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)が注目だ。18日にはイエレンFRB議長の会見も予定されている。現在のペースで量的緩和縮小を続けた場合には10月頃に終了する見込みだ。先日発表されたベージュブックや雇用統計は概ね良好であったが、5月小売売上高や住宅関連経済指標には弱い内容が散見されている。またイラクの地政学リスクが高まっていることから、足元の量的緩和ペースを調整する必要があると判断されるかどうかが焦点となるだろう。
経済指標では5月鉱工業生産・設備稼働率(16日)、6月NAHB住宅市場指数(16日)、5月消費者物価(17日)、5月住宅着工件数(17日)、5月景気先行指数(19日)などの発表も予定されている。住宅市場の回復が遅い一因として若年層の学生ローン残高の多さが指摘されており、先週、オバマ大統領は学生ローンの負債で苦しむ若年層の支払いを軽減する法案に署名した。その他にもベビーブーマーの高齢化など構造的な問題もあり、住宅市場の緩慢な成長ペースへの懸念が払拭するか注目したい。
個別企業ではインテリア小売のピア1インポーツ(16日)、ソフトウェアのアドビシステムズ(17日)とオラクル(19日)、運輸のフェデックス(18日)、食品スーパーのクロガー(19日)などの決算発表が予定されている。先週、インテリア小売のリストレーション・ハードウェアが好決算を発表して急騰したこともあり、ピア1インポーツの決算にも期待が高まっている。
決算以外では18日にアマゾンが新製品発表イベントを予定しており、同社製のスマートフォンが発表されるとの期待が高まっている。また携帯通信第4位で、ソフトバンク傘下のスプリントに買収観測が報じられているTモバイルも同日にイベントを予定しており、新たな料金プランやサービス改善の発表が予想される。
(Horiko Capital Management LLC)
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