米国株式市場見通し:住宅販売やGDPのマイナス予想への反応に注目
[14/06/21]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 市況・概況
週初は6月NY連銀製造業景気指数や5月鉱工業生産及び設備稼働率、6月住宅市場指数が相次いで予想を上回ったことが好感されたものの、イラク情勢への警戒感から上値も限られた。その後、5月消費者物価指数が予想以上の伸びとなったことや、5月住宅着工件数が予想を下回ったことが嫌気されたが、高止まりしていた原油価格が反落したことが好感された。注目のFOMCでは大方の予想通り100億ドルの量的緩和の縮小を決定、景気回復は順調に継続するとの見方を示した。またFOMC後の記者会見でイエレンFRB議長が、株価水準は過去の標準から離れているとは考えていない、と発言したことをきっかけに株価は大きく上昇し、大型株で構成されるS&P500指数は過去最高値を更新した。週末にかけても小動きながら底堅い展開となり、主要株式指数は週を通じて上昇。
医療機器のコビディアンは競合のメドトロニックによる買収提案を受けて急騰。運輸のフェデックスやソフトウェアのアドビシステムズは好決算を発表して堅調推移となった。携帯端末メーカーのブラックベリーも予想を上回る決算を発表して上昇。一方で革製品・アパレルのコーチはアナリスト説明会で慎重な業績見通しを示したことで急落となった。ソフトウェアのオラクルは決算が予想を下回り軟調推移。オンライン小売のアマゾンは、同社製スマートフォンの「ファイアーフォン」を発表したものの、AT&Tとの独占契約としたことなどが嫌気され下落した。
経済指標では5月中古住宅販売件数(23日)、5月新築住宅販売件数(24日)、4月FHFA住宅価格指数(24日)、S&Pケースシラー住宅価格指数(24日)など住宅関連に注目したい。先週モーゲージ・バンカーズ協会(MBA)は、2014年の新築及び中古住宅販売件数の予想を528万件へと下方修正した。予想通りであれば、4年ぶりに米国の住宅販売件数は4.1%減少することになる。住宅価格が急ペースで上昇しているのに対し、中間層の所得水準の上昇が緩やかに留まっている。また依然として住宅ローンの融資基準が厳しく、住宅市場の回復の妨げになっているとの指摘も多い。
住宅関連以外では1-3月期GDP確報値(25日)が注目だ。年率換算でマイナス1.8%と、改定値のマイナス1%から更に下方修正されることが予想されている。先週のFOMCでも連銀は2014年のGDP見通しを従来の2.8-3.0%成長から、2.1-2.3%へと下方修正した。連銀は2012年末時点で2014年のGDPについて3.0-3.5%を予想するなど、一貫して楽観的な見通しを示す傾向があり、最終的な着地点が連銀の予想レンジに落ち着くかどうかは慎重に見る必要があるだろう。
個別企業では、遺伝子組み換え種子などのモンサント(25日)、家庭用品小売のベッド・バス・アンド・ビヨンド(25日)、住宅メーカーのレナー(26日)及びKBホーム(27日)、スポーツ用品のナイキ(26日)の決算発表が予定されている。四半期末を迎えることから4-6月期の業績修正の発表が飛び出しやすい時期となることにも注意が必要だ。
ファクトセット社の調査によるとS&P500銘柄の1-3月期利益成長は2.1%だったが、今期以降は5.2%、9.5%、10.2%の成長が見込まれており、2014年通年では7.7%成長が予想されている。S&P500構成銘柄の多くが売上高成長の鈍化に直面する中で、営業利益率は過去最高水準となっており、既存事業の成長のみで利益成長約8%を達成するのはやや困難だ。低金利の環境下で金融機関を除く米国企業は約1兆7千億ドルの現金を有しており、企業買収・合併が利益成長の源泉となるだろう。またS&P500構成銘柄の1-3月期の自社株買いと配当による株主還元が過去最高の2410億ドルに達しており、特に自社株買いは一株利益ベースでの利益成長を押し上げる効果が期待される。
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