米国株式市場見通し:閑散取引の中、原油相場が落ち着くかに注目
[14/12/20]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 市況・概況
週初は住宅関連指標の中でも先行性の高い住宅市場指数の12月分が予想外に悪化したほか、原油安に歯止めがかからず、石油に依存しているロシアの通貨や株式が急落。信用不安の高まりを背景に米国株価も大きく売られた。週半ばに入り、ロシア中銀の安定化措置により同国株式市場や通貨ルーブルが急反発、信用不安の後退を受けた買いが優勢となった。またFOMC(米連邦公開市場委員会)の声明で、早期の利上げ観測が後退したことで大きく反発。新規失業保険申請件数が市場予想を下回ったことや11月景気先行指数が予想を上回ったことに加え、金融規制改革法(ボルカールール)の一部適用延期の方針が伝わったことも支援材料となった。ダウ平均株価は約3年ぶりに420ドルを上回る上昇を記録した。週末にかけてもFOMC声明による今後の金融政策をめぐる不透明性が解消されたことによる安心感から買いが続き上昇。結局、週を通じて主要株式指数は上昇。
アパレルのアメリカン・アパレル(APP)は最高経営責任者の交代が発表され、大幅上昇。検索大手のグーグル(GOOGL)は一部アナリストの投資判断引き上げを受けて堅調推移。医薬品のファイザー(PFE)は神経痛治療に関する試験結果が良好であったことを受けて上昇。一方、自動車大手のフォード・モーター(F)が、一部アナリストの投資判断引き下げを受け下落。不動産投資信託会社のアメリカン・リアルティ・キャピタルプロパティーズ(ARCP)は、最高経営責任者を含む複数の経営幹部が退任することが明らかになり、大幅下落。レストラン・フランチャイズのダンキン・ブランド・グループ(DNKN)は2014年売上高が予想を下回り、来年度の利益見通しが不透明となったことから下落した。
来週は25日がクリスマスで休場となるほか、年末休暇に入る投資家や市場関係者も多く、週を通じて閑散取引となることが予想される。
先週、原油安やロシアの通貨ルーブルの急落を受けてダウ平均は約1ヶ月半ぶりの安値を付けたが、連銀がFOMCで将来の利上げについて「辛抱強くなれる」とより緩やかなアプローチをとる姿勢を表明したことをきっかけに、大きく反発に転じている。原油価格は1バーレル55〜60ドルのレンジで推移しており、この水準で落ち着くかどうか注視する必要があるだろう。原油や為替相場の大きな変動は短期的には不安要因と捉えられるものの、特に原油安は中長期的には製造業やエネルギーコストの低下につながるほか、個人消費を押し上げる要因となることが期待される。
経済指標では11月中古住宅販売件数(22日)、11月新築住宅販売件数(23日)、FHFA住宅価格指数(23日)など住宅関連のほか、7−9月GDP確報値(23日)や11月耐久財受注(23日)の発表も予定されている。
住宅市場は引き続き低金利環境が続く中で、原油安を受けた個人消費の改善が追い風となる可能性がある。19日に不動産情報サイトのジローが発表した調査によると、米国の住宅市場は2014年に27兆5千億ドル規模となる見通しで、前年比6.7%増となる。成長ペースは鈍化するものの、2015年も引き続き住宅市場は拡大することが期待できそうだ。
年末となることから個人投資家が節税を目的として、含み損のある保有株の損失を確定する動きが強まることが予想される。特に中小型株で年初来や高値からの下落が目立っている銘柄は、個人投資家による売買の影響を受けやすく注意が必要だろう。ただ例年、損益通算の動きは前週までに概ね一巡しているパターンが多く、「クリスマスラリー」の言葉通り、年末にかけて需給は改善傾向となりそうだ。
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