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【フィスコ・コラム】イタリア国民投票はユーロ安への号砲に

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12月4日実施の憲法改正の是非を問うイタリア国民投票が、目先のユーロ売り材料として意識されています。否決されればレンツィ政権は退陣する見通しで、来年春のフランス大統領選や9月のドイツ議会選に飛び火する可能性があります。欧州の相次ぐ政治リスクで2002年12月以来、14年ぶりの1ユーロ=1ドル(パリティ)割れが視野に入ってきました。


ここ数年間に欧州で実施された選挙結果から、どのような政治のトレンドが読み取れるでしょうか。2015年を振り返ってみるとポーランドでは右派勢力が、ギリシャやポルトガルなどでは左派勢力がそれぞれ政権交代により与党になっています。各国の政治や経済の情勢が一様でないので、方向性に違いが出るのは当然かもしれません。難民の受け入れ問題をめぐり右傾化する国があるのも事実ですが、共通項は既存体制の打破のようです。さらに言えば、「右」(保守)対「左」(リベラル)ではなく、「上」(与党)対「下」(有権者)という対立の構図になっているのではないでしょうか。


英国は2015年の総選挙で与党・保守党が勢力を拡大したので例外的でしたが、今年6月の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票では、大方の予想に反してEU離脱を決めました。この時の「残留」「離脱」は、必ずしも政党で分かれていたのではありません。野党・労働党の中にも残留派は多くいました。ですから、難民受け入れ問題などで「離脱」を選択したというより、キャメロン政権(当時)が「残留」を呼びかけていたからこそ、有権者は「離脱」を選択したのだと考えます。

こうした反与党的な投票行動は欧州だけにとどまらず、世界的に広がっているように思えます。5月に行われた任期満了に伴うフィリピンの大統領選でも、アキノ大統領が後継指名したロハス氏が敗れる波乱がありました。「犯罪者は殺害する」など過激な発言を繰り返し、かつての強権政治を彷彿させるドゥテルテ氏が当選できたのは、やはり反与党の考えが底流にあったと思われます。また直近の米大統領選におけるトランプ氏の選出も、圧倒的な支持を反映したものでないことは明白です。しかし、クリントン氏は私用メール問題などが材料視されたという以前に、既成政治を嫌う流れにあらがえなかったことが敗因と考えられます。


その流れが続くとすれば、イタリアの国民投票ではレンツィ政権は退陣し、また同日実施されるオーストリアの大統領選のやり直しでは、与党が支援する左派候補を極右候補が下す結果になるかもしれません。そうなれば、フランス大統領選とドイツの議会選というEUの両コア国にも影響が及ぶでしょう。フランスのオランド政権はテロや景気低迷で退陣は必至の情勢です。左派の共和党候補か右派の国民戦線の候補かいずれかの選択になるとみられます。フランスでは国民の45%がEU離脱の是非を問う国民投票の実施に賛成、と地元メディアが今年6月時点で伝えています。


一方、今月20日にドイツのメルケル首相は4選を目指して出馬を表明しました。その際、安心感からユーロが買われたところをみると、ドイツにも反与党の流れが及んだ場合、ユーロは守り手を失うことになるでしょう。有権者が反与党に傾くのは、民意を反映しにくい政治システムへの不満だと思われます。ユーロ加盟国の政府がユーロを存続させるには、遠回りだとしても政治システムの改革が必要と思われますが、金融市場はそれを待てないでしょう。

(吉池 威)



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