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【フィスコ・コラム】危機的な状況のベネズエラ

注目トピックス 市況・概況
ベネズエラの政治・経済は混乱を極め、財政は破たんに追い込まれつつあります。通貨ボリバルは非公式レートが公式レートの1000分の1にまで暴落しており、もはや下値を模索するようなレベルではありません。このような状況に陥った国家が立ち直る道はあるでしょうか。


2014年の原油価格の急落で、産油国の経済は苦境に陥りました。とりわけ、原油埋蔵量が世界最大のベネズエラはその影響が深刻です。マイナス成長が続いているほか、緩和的な財政・金融政策や、外貨不足による物資の激減でインフレ率は700%超とみられています。同じ中南米の主要産油国であるブラジルやメキシコがこの3年間で経済を立て直すなか、ベネズエラがさらに悪化したのは高い原油依存度という特性だけでなく、融資額を原油で返済する中国との関係もあると指摘されています。


同国では、ウゴ・チャベス前大統領の死去に伴い、ニコラス・マドゥロ大統領が2013年4月に就任しましたが、経済の行き詰りで支持率が低下します。徹底した反米主義を唱え、社会主義を推進したチャベス氏の下で外相や副大統領を歴任したとはいえ、労組代表から政界入りしたマドゥロ氏にとっては荷が重すぎる問題でした。反政府派が多数を占める国民議会は、同大統領の職務放棄を宣言する決議を今年1月に採択しました。マドゥロ氏は政権維持に躍起ですが、退陣を求める反政府デモは全土に広がりました。


こうした状況下で7月30日、マドゥロ氏は現在の議会とは別に新しい憲法を制定する「制憲議会」の招集に向け議員を決める選挙を強行しました。マドゥロ支持者で占められたこの議会の設置に、反政府派はもちろん、最大の石油輸出先であるアメリカも非難を向けています。その間にも経済情勢は確実に悪化しており、通貨の公式レートは1ドル=10ボリバルで固定される一方、非公式レートは1ドル=1万ボリバル超に達しています。7月末までの3カ月間で6割も減価した計算になります。


ベネズエラのこうした政治・経済情勢を受け、国債も暴落しています。大手格付け会社によるベネズエラ国債の格付けは「投機的」。4月に政府や国営石油会社の30億ドルにのぼる債券の償還をどうにか乗り切りましたが、次のヤマ場は10月です。国債や国営石油会社の社債を日本やアメリカの大手証券が購入する動きがみられるものの、予断を許さない状況に変わりはなく、デフォルトは時間の問題と市場ではみられています。その際にどのような再建の道があるでしょうか。


まず考えられるのは、新政権に移行したうえで債務免除という方法ですが、ベネズエラの場合は中国の特殊な融資が絡んでおり簡単ではありません。変動相場制への移行も解決策の1つです。為替レートの乱高下による混乱は予想されるものの、ビジネス環境の改善という点でこちらの方が現実的との見方もあります。個人的には、ビットコインなど仮想通貨が投資対象としてではなく代替通貨として活用できるか注目しています。通貨が国家のアイデンティティでなくなる日は、意外に早く訪れるのかもしれません。

「吉池 威」



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