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TezosのICO訴訟の行方【フィスコ・ビットコインニュース】

注目トピックス 市況・概況
2017年7月、トークンの新規発行による資金調達方法の一種、ICO (Initial Coin Offering)により260億円相当もの巨額の資金調達を成功させた「Tezos」が、内紛によってトークン配布が滞り投資者から集団訴訟を起こされるという事態に陥っている。

Tezosは、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨がたびたび技術的なアップデートの目的で行うハードフォーク(分岐)をすることなくアップデートを実施できるコインであり、著名なベンチャーキャピタリストも投資を行うなど、将来性が大きく期待されたプロジェクトだった。

しかし、Tezosの開発者であり知的所有の保持者であるオーサー・ブライトマン氏とキャスリーン・ブライトマン氏夫妻が、Tezos財団の社長であるヨハン・ガーヴァース氏の解任を理事会に求めたことが発端となり内紛が勃発。ブライトマン夫妻側は、カーヴァース氏の解任が受け入れられない場合Tezosから手を引くと言い、カーヴァース氏側はブライトマン夫妻が資金を手に入れるためにクーデターを起こしていると主張している。

一向に解決が見えずトークンの配布も行われないという中、プロジェクトに出資した投資家たちがTezosは詐欺だとして、調査及び集団訴訟に踏み切った。

10月の訴訟は、ブライトマン夫妻がTezosのICOを行うためにスイスに設立したTezos 財団及び社長であるヨハン・ガーヴァース氏のICOは不正であるとして、サンフランシスコのカリフォルニア州上級裁判所に申し立てた。

11月にはフロリダの投資家デビッド・シルバー氏がフロリダ連邦地方裁判所にブライトマン夫妻を相手取って集団訴訟を申請した。訴状には「スイスへの寄付という隠れ蓑を使い投資家から資金を集めた今回の行為は未登録証券の発行であり米国の証券法違反」と書かれている。さらに「資金集めに際し、虚偽の表記、事実の隠蔽、違法行為が行われたことで、ICOに出資した投資家がTezosトークンによる投資リターンを得ることは事実上絶望的となった」としている。

投資家を支援しているボストンの法律事務所Block&Leviton社の調査によると、Tezosの内紛により、Tezosトークンの価値は約60%減となり、投資家は不利益を被っているとの結果を公表している。

「スイスへの寄付」というのは、TezosICOがスイスの基金(Tezos財団)への寄付と言う形で資金調達を行っていたことを指す。このため、米国での証券規制法は適用されない可能性が高いのではないかと言われており、また寄付という名目故に詐欺だと言い切ることは難しく、「確実にトークンを貰える」という法的確約はないという見方もある。

こうした経緯の中で、12月にまた新たな訴訟が起こされようとしている。被告人にはブライトマン夫妻、Tezos財団社長ヨハン・ガーヴァース、他2人の取締役、Bitcoin Suisse AG(スイスを拠点とする仮想通貨の金融サービスプロバイダ)が含まれている。

これまでの訴訟はTezos ICOの違法性を訴えるものが主眼だったが、今回の訴訟は違法性の訴えに加え、トークンセール中に発生した資産の一時差し止めも求めている。

訴状では、資産差し止めの理由として、「仮想通貨の熱狂を利用し、未登録で不適格な証券を不当に販売し、スイスの財団を利用することで米国証券法を回避しようとし、投資家から集めた資金を自らの収入に転換し、売却や消費に費やす可能性がある」ためとしている。

今回の一連の訴訟は、ICOに対する米国での解釈と証券取引法について判例を生み出すものであり、結果いかんによってはこの他のICOトークンの価格に影響を及ぼす可能性もあるため、その行方に大きな関心が集まっている。



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