2年連続のGW円安【フィスコ・コラム】
[18/04/29]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 市況・概況
ドル・円の方向が定まらないなか、日本はゴールデン・ウィーク(GW)に突入します。その期間中は円高に振れるケースが多いものの、昨年は円安となりました。アメリカの金融政策や北朝鮮問題をリスク要因に、今年はどうなるでしょうか。
足元のドル・円は年初からの下落が一服し、重要水準である108円を回復しています。目先は、大方の市場関係者が想定するレンジの上限である心理的節目の110円を目指すか、あるいは「GW=円高」のアノマリーに従って今年の最高値104円台に逆戻りするか、やや見極めにくい地合いです。アメリカの長期金利や株価は不安定で、その動向によっても円の方向感が変わってくるでしょう。
GW期間中のドル・円の値動きに関しては、確かに円高に振れやすいようです。振り返ってみると、2008年以降の10年間は2013年と2017年を除きいずれも円高となっています。特に、2010年にギリシャのソブリン・リスクによるユーロ圏経済への懸念から、GWを挟んで94円台から87円台まで約7円と急激に上昇したことが「GW=円高」を決定的に印象づけたのではないでしょうか。
2016年のGWも急騰しています。この年は、原油価格の低迷や中国経済の不透明感から世界経済の先行き懸念が強まっていました。同年1月に日銀がマイナス金利政策を導入し、円高阻止のスタンスを示しましたが、春先の主要産油国の増産凍結見送りと熊本地震を受け円買い地合いでGWを迎えます。その後の安倍晋三首相の発言をきっかけに、111円後半から106円前半まで円は強含みました。
逆に円安に振れた2013年は「アベノミクス」の影響が出始めた時期でした。同年3月に就任したばかりの黒田東彦総裁が4月の金融政策決定会合で、2%の物価上昇目標を2年間で実現するため、マネタリーベースを2倍にする「異次元緩和」を打ち出します。その効果が続き、2円あまり押し下げられました。そして、2017年は1年を通じて平穏だった地合いを反映してか、111円前半から112円後半に円安となりました。
昨年のリスク要因は米FOMCと北朝鮮問題、フランス大統領選でした。今年はフランス大統領選以外は同じで、アメリカの景気拡大を背景に連邦準備制度理事会(FRB)は金融正常化の方針を堅持しており、足元の金利差重視の取引ではドル買い(円売り)を誘発するはずです。5月4日発表の4月雇用統計も、3月の悪化の反動から市場コンセンサスに沿った内容が見込まれるため、こちらもドル買い(円売り)でしょう。
最大の違いは、北朝鮮問題が円高要因から円安要因に変わったことです。北朝鮮は最近、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の中止などを表明しており、米朝首脳会談は確かにマイルストーンとなる可能性が出てきました。それに先立って行われる4月27日の南北会談は大きな注目材料で、そこで北朝鮮が核放棄に踏み込んだ内容を打ち出せば、2年連続のGW円安として記憶されるでしょう。
<SK>
足元のドル・円は年初からの下落が一服し、重要水準である108円を回復しています。目先は、大方の市場関係者が想定するレンジの上限である心理的節目の110円を目指すか、あるいは「GW=円高」のアノマリーに従って今年の最高値104円台に逆戻りするか、やや見極めにくい地合いです。アメリカの長期金利や株価は不安定で、その動向によっても円の方向感が変わってくるでしょう。
GW期間中のドル・円の値動きに関しては、確かに円高に振れやすいようです。振り返ってみると、2008年以降の10年間は2013年と2017年を除きいずれも円高となっています。特に、2010年にギリシャのソブリン・リスクによるユーロ圏経済への懸念から、GWを挟んで94円台から87円台まで約7円と急激に上昇したことが「GW=円高」を決定的に印象づけたのではないでしょうか。
2016年のGWも急騰しています。この年は、原油価格の低迷や中国経済の不透明感から世界経済の先行き懸念が強まっていました。同年1月に日銀がマイナス金利政策を導入し、円高阻止のスタンスを示しましたが、春先の主要産油国の増産凍結見送りと熊本地震を受け円買い地合いでGWを迎えます。その後の安倍晋三首相の発言をきっかけに、111円後半から106円前半まで円は強含みました。
逆に円安に振れた2013年は「アベノミクス」の影響が出始めた時期でした。同年3月に就任したばかりの黒田東彦総裁が4月の金融政策決定会合で、2%の物価上昇目標を2年間で実現するため、マネタリーベースを2倍にする「異次元緩和」を打ち出します。その効果が続き、2円あまり押し下げられました。そして、2017年は1年を通じて平穏だった地合いを反映してか、111円前半から112円後半に円安となりました。
昨年のリスク要因は米FOMCと北朝鮮問題、フランス大統領選でした。今年はフランス大統領選以外は同じで、アメリカの景気拡大を背景に連邦準備制度理事会(FRB)は金融正常化の方針を堅持しており、足元の金利差重視の取引ではドル買い(円売り)を誘発するはずです。5月4日発表の4月雇用統計も、3月の悪化の反動から市場コンセンサスに沿った内容が見込まれるため、こちらもドル買い(円売り)でしょう。
最大の違いは、北朝鮮問題が円高要因から円安要因に変わったことです。北朝鮮は最近、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の中止などを表明しており、米朝首脳会談は確かにマイルストーンとなる可能性が出てきました。それに先立って行われる4月27日の南北会談は大きな注目材料で、そこで北朝鮮が核放棄に踏み込んだ内容を打ち出せば、2年連続のGW円安として記憶されるでしょう。
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