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「果実を摘み取るステージに来た」ANAの経営戦略に迫る!(高井ひろえ)

注目トピックス 市況・概況
皆さんこんにちは!フィスコマーケットレポーターの高井ひろえです。先日、私は東証1部に上場しているANAホールディングス<9202>さんに企業訪問させていただきました!さて、今回はそんな直接取材した内容の一部をインタビュー形式で皆様にもご紹介したいと思います!


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高井:もちろん、ご存知の方も多いと思いますが、改めて御社はどのような事業を展開されているのか簡単にうかがってもよろしいでしょうか?


ANA:主力の航空事業を中心に、旅行事業や商社事業等を展開しております。航空事業では、既存のANAブランドに加えて、ピーチ、バニラエアといったLCC(ロー・コスト・キャリア)2ブランドとのマルチブランド戦略を推進しています。


高井:主力の航空事業の主軸である国内線旅客、国際線旅客、国際線貨物についてご質問です。それぞれ、今の状況から比べて、旅客数や貨物量など、どの程度増やしていく将来見通しなのでしょうか。また、そのために、どういった取り組みをお考えなのでしょうか。


ANA:まず、国際線旅客についてです。2014年度から羽田の発着枠が拡大したことを受けて、ネットワークの拡大を推進してきました。生産量(トータルでの席数キロ)は2013年度を100としたときに2016年度までにおおむね145までに増加しています。今後も、2020年度に向けて再び国際線事業を成長ドライバーとして拡大していく方針です。


次に、国内線旅客についてです。国内は少子高齢化と言う流れがある中で、基本的には便数を維持しながら少しずつ機材の適性化を図り、徐々に生産量を微減させていきたいと考えています。実際、生産量は、2013年度をトップピークとして、毎年1%くらいずつ微減傾向にあります。


大切なのは便数を維持して、お客様の選択の利便性を確保していることです。機材を小さくし、座席利用率(旅客キロ÷座席キロ)を上げています。同利用率は、従来は65%前後だったものが、足元は68%まで増加しており、70%台が視野に入りつつあります。より多くのお客様にご搭乗いただくために、※旅割などのプロモーション運賃も柔軟に投入していく方針です。
※4月のリリースで、「ANAスーパーバリュー」に名称変更を発表

最後に、国際線貨物についてです。実は、皆さんのお乗りになっている飛行機の床下には、貨物が搭載してあります。貨物事業の生産量は、国際線旅客の生産量とほぼ連動して増減します。また、貨物をメインデッキにも搭載できるように改造した中型機も利用しながら、貨物事業として需給適合を図っていく方針です。今後は、首都圏発着の旅客便の増加に合わせて、貨物の生産量も増加させていく考えです。


高井:旅客と貨物、両方において便数の増加が重要とのことですが、世界各国の有望な路線(発着枠)は、競合他社がいる中で、どのようにすれば開拓できるのでしょうか。


ANA:ANAではネットワークの拡大を推進するとともに、機材構成を柔軟に対応することで、景気変動の波に耐えられるよう、経営の安定化を図っています。


大型機を中心に運航していると、空席が目立つときに、どうしても費用が先行してしまい、採算が合わなくなるリスクが発生します。そこで、業界でも先進的な、中型機を中心とした機材構成に移行しているのです。


現在の主力機材であるボーイング787型機は概算で170席ですが、大型機であるボーイング777型機は250、260席程度となっており、座席数が100席近く違うのです。2015年11月にパリでテロが発生して旅客数が減った際には、大型機をすぐに中型機へと変える判断をしました。ビジネスを目的とする需要は回復が早いので、収益性を早期に回復することができました。なお、当時パリ線で使用していた大型機は、旅客数が多かったシアトル線に投入しました。供給サイドから見て、どの規模の機材を選ぶかという選択肢が増えたことは、当社グループにとって画期的なことでした。この中型機、ボーイング787型機を世界で一早くオーダーしたのがANAであり、業界でも先進的な取り組みであるといわれています。


また、かつては大型機しか飛べなかったような長距離を、ボーイング787型機で飛べるようになったことが、新しい路線の開拓につながっています。ロンドン、ニューヨークのような恒常的に多くのお客様が乗るような路線だけでなく、デュッセルドルフ、ミュンヘン、ブリュッセル、サンノゼのような路線にも、直行便を就航させることができるようになりました。

羽田の国際化を皮切りに発着枠も増え、ダイヤも柔軟に組めるようになりました。航空会社の優位性を示すのは、機材、ネットワーク、ダイヤの3点です。これが相乗的に効果を発揮して、ようやくANAも果実を積みとるステージとなり、近年は営業利益で恒常的に1,000億円超を創出できる体質になったのです。


高井:羽田の発着枠に優位性をお持ちで、かつその枠の中でも機材の柔軟な入れ替えをすることにより、搭乗率を上げているのですね。では、より多くのお客様に搭乗いただくために、国内事業・国際事業それぞれでどのように集客を行っていらっしゃるのですか?


ANA:路線の選択肢を増やすことにより、お客様に選んで頂きやすいようにしています。国際線のネットワークが増えるとANAブランドがより定着し、出張や旅行を問わず、様々なニーズでANAを選んで頂けるようになります。また、国際線事業においては、スターウォーズの塗装をした航空機を就航したり、アメリカの女子ゴルフのツアーであるANAインスピレーションなどを開催し、海外での認知度も上げようとしています。


高井:より多くのお客様を集客するにあたって、適切なタイミングで適切な運賃をお客様に提供することが必要だと思うのですが、そのためにどのようなことを行っていらっしゃるのですか。


ANA:適切な運賃の提供は重要です。航空券を安価で提供するとお客様は増える傾向がありますが、単価を下げ過ぎてしまうと必要な収入を得られず路便の維持が困難になりかねません。従って、何年間にも渡り、どの時間帯(曜日、時間帯、日付)にどのようなお客様がどのくらい乗っていただいたか等のデータを蓄積しており、それを元に適切な運賃とそれを提供するタイミングを割り出しています。

7,8割はコンピューターが指針を示してくれていて、残りは現場に精通したスタッフの知見を元に決定しています。具体的な施策として、※「旅割」という国内線の商品を用意しており、早く買うと安くなります。空席が出てしまいそうだとデータが示した場合、※「旅割」の数を増やし、増収に寄与させています。
※4月のリリースで、「ANAスーパーバリュー」に名称変更を発表


高井:グループ内でのLCC(ロー・コスト・キャリア)の位置づけはどのようされていくのでしょうか。サービスの差別化はどういったところでされていくのでしょうか。格安航空を伸ばし過ぎると、既存の高級路線が押される懸念があるのではないでしょうか。


ANA:欧米の事例を見ると、航空産業全体におけるLCCの旅客数はだいたい3割くらいで、フルサービスキャリアの旅客数は7割ほどです。一方、日本ではLCCの旅客数は全体の1割ほど、フルサービスキャリアは9割ほどで、歴史が浅く、これからもLCCの需要を伸ばせる余地があります。


日本においては、羽田空港や伊丹空港は、国内線の発着枠が増える計画がありません。ですので、LCCは成田空港や関西空港を中心に就航しているのです。


また、客層でも棲み分けができています。LCCで一番多い客層は20、30代の女性です。6割が女性となっています。一方、フルサービスキャリアは30〜60代の方が多く、男性が半分以上です。

LCCでは、今まで飛行機に乗らず、高速バスを使って都市を行き来していた方が利用し始めるというように、新しい顧客層を開拓することに成功しています。東京に住んでいる孫の顔を見に、これまで高速バスを利用していたお客様が、今ではLCCを使うようになったというお声もいただいております。

10、20年後の航空業界の発展のためにも、グループ内のLCCの立ち位置は非常に重要だと考えています。


高井: ANAの競争力の源泉について詳しく教えて頂き、ありがとうございました。最後に、投資家へのメッセージをお願いいたします。


ANA:2014年度から羽田最大の国際線ネットワークを持ちながら4年がたち、おかげさまでANAの利便性や業績について、ステークホルダー全体に認知していただけるようになりました。この2年間は、次の成長に向けた足固めということで、経営基盤を万全にしていこうという方針です。2020年度には羽田の発着枠が拡大される予定であるが、我々は成長戦略を進めることで、世界のリーディングエアライングループを目指していきます。


高井:今回の取材を通して、御社の強さの源泉について理解することができました。長年の安定的な経営により得られた信頼を土台として優先的に発着枠を獲得していらっしゃるだけでなく、柔軟な機材の変更、そして運賃の調整など、様々な段階において企業価値を向上するための施策を実行していらっしゃり、かつ奏功していることがわかりました。また、LCCと既存路線の間で顧客の奪い合いが起きない理由についても大変興味深くお伺いさせていただきました。ありがとうございました。




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