今の金相場、良いの?悪いの?もっと知りたい商品先物取引(高井ひろえ)
[18/11/20]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 市況・概況
みなさんこんにちは!フィスコマーケットレポーターの高井ひろえです。商品先物関連のニュースを検索するとまず目に飛び込んでくるのは、次のようなものではないでしょうか。「本日の金先物相場は3営業日ぶりに上昇」「本日の原油先物市場は4日続落」など。このように日単位など短期間での相場ニュースが多いように思います。今回のコラムでは、もっと期間を長く捉えて、年単位で金市場を俯瞰してみることで、今の金相場が上昇相場になのか調整相場なのか、景気サイクルの中でどのような位置にいるのかを考えていきたいと思います。
本題に入る前におさえておいていただきたいのが、金の売買されるタイミングです。もともと通貨というものが金と交換されていたこと(兌換)を考えると、物価が上昇している局面では、金価格は上昇するといえます。(ただし、ニクソン大統領によって、金との交換を保証しなくなったことにより、金本位制は崩れています。)また、経済危機などが起きて株などの金融商品の価格が軒並み下落した場合、投資家は「資金を安全な金融商品に逃避させたい」と思います。そこで金が逃避先として選ばれることが多く、価格が上昇を見せる場面があります。その後、経済が落ち着きを取り戻すと逃避資金が回収されて金の価格は下落しやすくなります。このことを理解しておくと、これからご説明するイベントと価格変動の関係性がわかりやすいです。
では本題に入ります。金相場のチャートを見てみると、1970年代の後半に価格が大きく上昇しましたがそれ以降は低迷しました。オイルショックが起きたことにより経済が不安定になり、資金の逃避先として金が買われたのですが、経済が落ち着きを取り戻すと共に金市場から資金が回収されたことを表しています。ところが2000年代には再び上昇しています。
要因としてはまず、中国やインドの経済成長により中間層が増えたことで需要が高くなったのです。この2国は歴史的、文化的に金と関りが深いですよね。次の要因として、2003年に金のETFが登場したことが挙げられます。機関投資家は、それまで金投資がしたくても現物を引き受けるとなると保管場所の問題があるので取引をすることが難しかったのです。そのためETF登場をきっかけに機関投資家の資金も金市場に流入しました。さらなる要因として、それまで非常に大きく金を売っていた中央銀行が売却側から購入側にまわったことがあります。そして、2007年にサブプライムローンが破綻、2008年にリーマンショックが起きます。あらゆる金融商品が軒並み下落し金が逃避先として買われました。
このように安定資産としての金相場は2013年の初頭まで上昇しました。一方で経済は徐々に回復し、アメリカでは金融緩和政策の出口戦略の議論もされるようになっていきます。また、金利が上昇しマーケットが落ち着くことによって、2015年末まで金市場から資金が流出しました。
ここまでの動きを振り返ると、資金の逃避先として買われた場合、金の価格は一時的に上がるものの、のちに下落するパターンとなっています。金の基礎的なトレンドを確認する上では逃避資金による値動きは一時的なものなので、そうした価格上昇を取り払って考えてみることにしましょう。リーマンショック後の最高値から見ると現時点での金価格は大きく下落していますが、リーマンショック前から見てみると価格も需要も底上げされており、悪い状況ではないということがわかります。
具体的な数値を紹介します。金価格は2008年7月末(リーマンショック前)が1オンスあたり918ドルだったのが、2018年7月末には1224ドルに。また金の総需要は2008年上半期に1425トン、2018年上半期に1960トン。価格も需要も底上げされていますね。金のETF残高は2008年7月末に1016トン、2018年7月末は2394トン。倍以上になっています。これは金へ中長期的に投資している人が増えていることが原因だと考えることができます。金ETFの購入者は「金市場の基礎票」といわれるように中長期的な視点で取引するケースが多いのです。
また、金の価値が再確認されている理由として、リーマンショックで分散投資が十分にされていなかったことが失敗の教訓としてあるため、ポートフォリオに金を入れて分散投資をはかろうという機運が高まりました。リーマンショックは金の役目を再確認するきっかけとなったのです。逃避先としての資金流入を考慮するかしないかで現在の相場の見え方が真逆に見えるのがおもしろいですね。次回以降のコラムでも商品先物相場の動きとそれに与える要因について具体的に見ていきましょう。
フィスコマーケットレポーター 高井ひろえ
<HH>
本題に入る前におさえておいていただきたいのが、金の売買されるタイミングです。もともと通貨というものが金と交換されていたこと(兌換)を考えると、物価が上昇している局面では、金価格は上昇するといえます。(ただし、ニクソン大統領によって、金との交換を保証しなくなったことにより、金本位制は崩れています。)また、経済危機などが起きて株などの金融商品の価格が軒並み下落した場合、投資家は「資金を安全な金融商品に逃避させたい」と思います。そこで金が逃避先として選ばれることが多く、価格が上昇を見せる場面があります。その後、経済が落ち着きを取り戻すと逃避資金が回収されて金の価格は下落しやすくなります。このことを理解しておくと、これからご説明するイベントと価格変動の関係性がわかりやすいです。
では本題に入ります。金相場のチャートを見てみると、1970年代の後半に価格が大きく上昇しましたがそれ以降は低迷しました。オイルショックが起きたことにより経済が不安定になり、資金の逃避先として金が買われたのですが、経済が落ち着きを取り戻すと共に金市場から資金が回収されたことを表しています。ところが2000年代には再び上昇しています。
要因としてはまず、中国やインドの経済成長により中間層が増えたことで需要が高くなったのです。この2国は歴史的、文化的に金と関りが深いですよね。次の要因として、2003年に金のETFが登場したことが挙げられます。機関投資家は、それまで金投資がしたくても現物を引き受けるとなると保管場所の問題があるので取引をすることが難しかったのです。そのためETF登場をきっかけに機関投資家の資金も金市場に流入しました。さらなる要因として、それまで非常に大きく金を売っていた中央銀行が売却側から購入側にまわったことがあります。そして、2007年にサブプライムローンが破綻、2008年にリーマンショックが起きます。あらゆる金融商品が軒並み下落し金が逃避先として買われました。
このように安定資産としての金相場は2013年の初頭まで上昇しました。一方で経済は徐々に回復し、アメリカでは金融緩和政策の出口戦略の議論もされるようになっていきます。また、金利が上昇しマーケットが落ち着くことによって、2015年末まで金市場から資金が流出しました。
ここまでの動きを振り返ると、資金の逃避先として買われた場合、金の価格は一時的に上がるものの、のちに下落するパターンとなっています。金の基礎的なトレンドを確認する上では逃避資金による値動きは一時的なものなので、そうした価格上昇を取り払って考えてみることにしましょう。リーマンショック後の最高値から見ると現時点での金価格は大きく下落していますが、リーマンショック前から見てみると価格も需要も底上げされており、悪い状況ではないということがわかります。
具体的な数値を紹介します。金価格は2008年7月末(リーマンショック前)が1オンスあたり918ドルだったのが、2018年7月末には1224ドルに。また金の総需要は2008年上半期に1425トン、2018年上半期に1960トン。価格も需要も底上げされていますね。金のETF残高は2008年7月末に1016トン、2018年7月末は2394トン。倍以上になっています。これは金へ中長期的に投資している人が増えていることが原因だと考えることができます。金ETFの購入者は「金市場の基礎票」といわれるように中長期的な視点で取引するケースが多いのです。
また、金の価値が再確認されている理由として、リーマンショックで分散投資が十分にされていなかったことが失敗の教訓としてあるため、ポートフォリオに金を入れて分散投資をはかろうという機運が高まりました。リーマンショックは金の役目を再確認するきっかけとなったのです。逃避先としての資金流入を考慮するかしないかで現在の相場の見え方が真逆に見えるのがおもしろいですね。次回以降のコラムでも商品先物相場の動きとそれに与える要因について具体的に見ていきましょう。
フィスコマーケットレポーター 高井ひろえ
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