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10-12月期も円高を警戒【フィスコ・コラム】

注目トピックス 市況・概況
早いもので、2019年も残り3カ月。ドル・円は足元でやや持ち直しているものの、米中貿易戦争やブレグジット(英国の欧州連合離脱)などのリスク要因で円買いに振れやすい地合いが続いています。日銀の政策手詰まり感もあり、年末に向けて一段の円買いに警戒が必要となりそうです。


ドル・円は8月下旬に今年最安値を割り込んで一時104円46銭まで下げた後、9月中旬にかけて108円付近に値を戻しています。米中貿易協議での摩擦解消への期待や米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利下げ観測の後退が背景にあります。また、日銀が目先の金融政策決定会合でマイナス金利の深掘りなど一段の緩和的な政策に踏み切るとの観測も、ドルの押し上げ要因となっています。


しかし、戻りの鈍いドルの値動きをみると、心理的節目である110円台に向けて今後も回復基調が続くようには到底思えません。9月17-18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明やドット・チャート(政策金利見通し)を市場は「タカ派」と受け止めたものの、ドルの上昇は30銭程度にとどまり、その後も上値の重さが目立つためです。アメリカの底堅い経済指標も市場心理を改善させられていないようです。


結局、ドルは上値メドとみられていた日銀短観6月調査の想定為替レートである109円40銭には届かず、FOMC直後に付けた108円49銭を高値に再び迷走し始めました。10月1日に発表される日銀短観9月調査の想定レートは、8月の104円台への急落を踏まえ円高方向に切り下がると予想されています。「年末に向けてドルは下落方向が意識されやすい」(短期筋)との声も聞かれます。


下値メドについては、引き続き内閣府がまとめた「企業行動に関するアンケート調査」の99円80銭のようです。日米貿易協議で懸念されていた自動車関税は回避されましたが、10月からの消費増税に伴う駆け込み需要がどこまで株価に寄与できるか注目されています。報道では、家電など中心に勢いが増しているようですが、その後の消費の落ち込みの方が不安要因となり、株高を抑制しかねません。


最近の為替の動向は、政治情勢が与える影響が大きいことが先行きの視界を悪くさせています。イギリスの最高裁はジョンソン英首相の議会閉会を違法と判断したものの、「合意なき」ブレグジットの可能性が残ります。また、トランプ米大統領が来年の大統領選に向け、民主党有力候補のスキャンダルを探すようウクライナ大統領に圧力をかけたとされる問題も発覚。リスク回避の円買いは目先も根強いでしょう。


警戒すべきは、円急騰の場面でそれを抑える材料があまり見当たらないことです。特に、日銀は10月末に公表予定の展望リポートのなかでこれまでの政策について「点検」する方針を示しており、市場は一段の緩和、つまりマイナス金利の深掘りと受け止めています。ただ、副作用が懸念されるレベルにあって、FRBなど主要中銀と比べるとカードが少ないのは事実。それを見越した投機筋による円買いは、非現実的ではありません。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。




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