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年末年始のリスクを考える【フィスコ・コラム】

注目トピックス 市況・概況
2020年は穏やかな年明けになるでしょうか。米中貿易協議については摩擦解消への進展がみられるものの、リスクはそれだけにとどまりません。足元で北朝鮮の非核化交渉をめぐり米朝関係の緊張が高まるなか、トランプ米大統領の「指先介入」も注視されます。


2019年は円急騰の「フラッシュ・クラッシュ」で波乱の幕開けとなりました。その後は特別に危機的な状況もみられず、無難な1年と言えるかもしれません。米中貿易協議のプロセスで失望と期待が交錯しやや荒れる場面もありましたが、10月以降は第1段階の合意に関する両国首脳の署名に向け調整中で、年末に向けリスクオンのムードが続いています。米国株が不安定な値動きとなっていた昨年とは対照的に、今年は最高値更新が続き懸念は和らいでいるように思えます。


しかし、朝鮮半島の不穏な情勢に目を向けなければなりません。非核化交渉でトランプ政権に譲歩を求める金正恩朝鮮労働党委員長が党中央軍事委員会の拡大会議に出席した、と12月22日に地元メディアなどで伝えられています。朝鮮人民軍を中心に国家の武装力を高めるための重要な対策を決定する方針のようです。北朝鮮は一方的に交渉期限を年末と主張しており、今月末にも開催予定の会議で「重大な問題」を決定すると予告。これまでミサイル発射実験を繰り返しています。


一方、アメリカではほぼ同じタイミングで、2020年の国防予算の大枠を定めた国防権限法が成立しました。このなかで、北朝鮮への制裁強化が盛り込まれています。これは北朝鮮の石炭や鉄などの貿易を制限するほか、北朝鮮と取引関係のある海外の金融機関のアメリカでの取引に目を光らせるといった内容です。トランプ政権は外交努力による解決を目指すとしながらも、人権問題に言及しさらに圧力をかける狙いです。北朝鮮は重大な挑発と受け止め、両国は緊張が高まっています。


トランプ大統領と金委員長はこれまで首脳会談を2度行ったほか、トランプ氏が南北朝鮮の境界線に金氏を電撃訪問するなど、親密ぶりが話題になりました。トランプ氏はツイッター上でも「チェアマン・キムは・・・」と金氏をたびたび称賛してきました。ところが、この12月に「キム・ジョンウン」と距離を置いた呼び方に変わったのが気にかかります。北朝鮮はアメリカの「敵視政策」撤回を求めていますが、圧力を緩めないアメリカに北朝鮮側が業を煮やし交渉が決裂する可能性もあります。


その場合、以前のような北朝鮮による核実験やミサイル発射などの挑発行為が懸念されます。金政権への影響力の大きい中国を中心に日本、韓国は平和的な道を探っています。しかし、その3カ国も結束力の点で頼りなく、地政学リスクを抑止できるかはわかりません。北朝鮮が言及していた「クリスマスのプレゼント」はなかったものの、「お年賀」には警戒感が必要でしょう。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。




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