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ドル107円はいつまで続く?【フィスコ・コラム】

注目トピックス 市況・概況
コロナ危機後の外為市場には奇妙な静けさが感じられます。特に、ドル・円は変動要因が複数あるものの、おおむね107円台を中心としたボックス相場となり、かえって先行きへの不安を広げています。方向感の乏しい相場は今後どちらに振れるでしょうか。


ドル・円は今年2月から3月にかけて新型コロナウイルスの感染拡大による危機を受け、112円前半から101円前半に急落。その後、111円後半に戻す乱高下がみられました。4月以降は徐々に落ち着きを取り戻し、底堅く推移しています。6月には108円半ばに浮上した半面、足元は106円台に下げましたが、おおむね107円台を中心に狭いレンジ内での一進一退が続いています。


値動きだけみれば凪(なぎ)のようですが、実際にはそうとも言えません。足元では欧州連合(EU)の復興基金をめぐる論議がユーロを5月以降に7%超も押し上げました。また、世界経済の早期正常化を左右するワクチン開発の観測は株高要因となり、リスク選好的なムードを広げます。中国の上海総合指数も強含み、7月に入って15%も上昇。これらはいずれもリスクオンのドル売りをもたらす要因です。


それでもドル・円が底堅く推移するのは、ドル売りと同時にリスク選好の円売りが進んでいるためです。連邦準備理事会(FRB)の緩和的な金融政策で実質ゼロ金利となり、ドルはコロナ危機で安全通貨としての役割が一層強まったことから、同様に安全通貨である円に対しては以前にもまして動きづらくなっています。というより、対円での先安観はむしろ後退する方向にあると言えるでしょう。






かといって、ドルが現時点で110円台を目指すとは想定しにくい状況です。7月2日に発表された雇用統計ぐらいまではアメリカ経済の持ち直しを裏付けているように思えたものの、最近発表された新規失業保険申請件数は予想を上回り、雇用情勢の回復の遅れが目立ち始めました。それを受けた米10年債利回りの低下により、リスクオフのドル買いも抑制されています。


実際、FRB当局者の先行きの見方は慎重さが目立ちます。市場関係者の間では、9月15-16日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)で経済見通しが下方修正されるかが焦点です。足元では2022年までのゼロ金利が続くと考えられていますが、実際には複数の州で制限措置の再実施に動いており、経済活動の再開のペースダウンが見込まれます。雇用やインフレの改善状況によってはゼロ金利の延長もありえるでしょう。


7月28-29日のFOMCでは現行の金融政策維持の公算が大きいものの、9月会合に向けより慎重なメッセージとなるかがポイント。8月にはワイオミング州ジャクソンホールでオンラインによるセミナーが開かれます。コロナ禍で1年先さえ読み切れないのに、「10年先に向けて舵(かじ)をとる」とは意味深です。FRBが検討する金融政策の戦略の見直しだとの思惑が広がれば、この夏はドル安の起点となる可能性もあります。

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


(吉池 威)



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