国内株式市場見通し:米長期金利を睨みながらの神経質な展開(訂正)
[21/02/27]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 市況・概況
■米長期金利の急騰でリスク回避、日経平均29000円割れ
今週の日経平均は、米長期金利(10年物国債)の動向に大きく左右された結果、大幅な下落となった。それまでの間に調整が利いていたこともあり、週初22日の日経平均は、米追加経済対策などへの期待感に支えられるなか、東京エレクトロン<8035>など値がさ株の上昇に支えられ138円高となった。祝日を挟んだ24日からはパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言を消化する形に。半期に一度の上院での議会証言において、パウエル議長は強力な金融緩和を続ける方針を改めて強調したが、米長期金利が高止まり先行きも警戒されるなか、バリュエーション面での割高感が意識されるハイテク株やグロース(成長)株が総じて大きく売られ、日経平均も484円安となった。翌25日は、上院に続く下院において、パウエル議長がインフレ目標の達成には3年程かかる可能性を指摘したうえで再度金融緩和の継続を強調すると、金利高への警戒感が一時後退。また、米食品医薬品局(FDA)が医薬・日用品大手のジョンソン・エンド・ジョンソンが開発した新型コロナワクチンについて「1回の接種でも高い効果がある」として緊急使用を支持したことで景気回復期待が高まり、この日はハイテク株から資源関連のバリュー(割安)株まで広く買われた。日経平均も496円高と前日の下落分を完全に取り戻す格好に。しかし、25日の米株市場において米長期金利が一時1.6%台まで急騰すると、金利高への警戒感が再燃し、米株市場ではハイテク株を中心に急落。東京市場でもリスク回避ムードが一気に高まり、週末26日の日経平均は1202円安の28966円まで急落した。
■アンワインドの動きに警戒
来週の日経平均は一進一退の展開が予想され、引き続き、米長期金利の動向を睨みながらの神経質な展開となりそうだ。パウエル議長は、「足元で進むインフレは短期的なものにすぎない」、「インフレ目標の達成には3年超の期間を要する可能性がある」などと指摘しており、資産購入についても、「政策目標に対して十分な進展がみられるまで現行のペースでの購入を続ける」としている。このため、インフレ急伸を受けてFRBが早期に資産購入規模の縮小(テーパリング)や利上げに動かざるを得ないのではないかという市場の懸念はやや先走りすぎているとも言える。また、昨年前半はコロナショックで経済が大打撃を受けているため、今後発表される物価関連の指標が前年比で高く算出されることは市場では想定内のはずだ。加えて、FRBは、昨年から「平均物価目標」を取り入れており、一時的に物価目標を超えるインフレ率が実現されても、早期に緩和縮小には動かないことを明確に表明している。FRBは、いまのところ、足元の金利上昇については「経済再開や経済成長への市場の期待の表れだ」とし、特段の警戒感を示していないが、仮にこの先も今のようなハイペースで金利が上がるようなことがあれば、景気回復を図るFRBが黙ってはいないだろう。そのため、目先、長期金利の上昇は続くだろうが、最悪のシナリオでも2%よりは手前の水準で一服するのではないだろうか。ただ、株式市場については、これまでの動きの巻き戻し(アンワインド)などのリスクシナリオも想定して、短期的には高い変動率(ボランティリティー)に警戒しておいた方がいいだろう。これまでは名目金利とともに期待インフレ率も上昇していたため実質金利の上昇は緩やかなものに留まっていたが、足元では期待インフレ率が高止まっており、名目金利の上昇ペースにはついていけていない。実質金利は依然マイナスであるが、急速にマイナス幅が縮まってきている。実質金利のマイナス幅の縮小傾向に対して、これまでの株式市場はあまり大きく調整してきていなかったことを考えれば、調整が長引く可能性もあろう。この先、米長期金利は高くても2%未満、期待インフレ率は2%超の水準で高止まりするとすれば、実質金利は依然マイナスであることが想定され、株式の相対的な魅力はまだ高い。しかし、2月半ばにバンク・オブ・アメリカ(BofA)が公表したグローバルファンドマネジャー調査では、現金比率が過去8年間で最低となっていた。リスクテイクが偏っていたなか金利上昇で急落した今週末には新興国通貨などが大きく売られる現象もみられた。こうしたアンワインドの動きがこの先も広がるようであれば、売りが売りを呼ぶ悪い連鎖となるリスクもあり注視したい。
■インフレヘッジで資源関連物色
物色動向としては、インフレや金利上昇への警戒感からグロース株は総じて軟調継続が想定され、鉄鋼や非鉄金属など資源関連株が相対的には買われやすいだろう。来週は、中国製造業PMIや米国ISM製造業景気指数などの重要経済指標の発表が多いほか原油価格動向のカギを握るOPECプラスもある。予想以上に強い指標結果などが出た場合には、上記のインフレリスクなどを一層織り込む動きとなりやすく、物色動向としても、グロース売りの景気敏感・バリュー買いの様相が強まろう。
■中国PMI、米国ISM、米雇用統計など
来週の主な国内外スケジュールは、3月1日に2月新車販売台数、中国2月財新製造業PMI、米国2月ISM製造業景気指数、2日に10-12月期法人企業統計、3日に米国2月ADP全米雇用リポート、米国2月ISM非製造業指数、4日に米国1月製造業受注、5日に米2月雇用統計などが予定されている。
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今週の日経平均は、米長期金利(10年物国債)の動向に大きく左右された結果、大幅な下落となった。それまでの間に調整が利いていたこともあり、週初22日の日経平均は、米追加経済対策などへの期待感に支えられるなか、東京エレクトロン<8035>など値がさ株の上昇に支えられ138円高となった。祝日を挟んだ24日からはパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言を消化する形に。半期に一度の上院での議会証言において、パウエル議長は強力な金融緩和を続ける方針を改めて強調したが、米長期金利が高止まり先行きも警戒されるなか、バリュエーション面での割高感が意識されるハイテク株やグロース(成長)株が総じて大きく売られ、日経平均も484円安となった。翌25日は、上院に続く下院において、パウエル議長がインフレ目標の達成には3年程かかる可能性を指摘したうえで再度金融緩和の継続を強調すると、金利高への警戒感が一時後退。また、米食品医薬品局(FDA)が医薬・日用品大手のジョンソン・エンド・ジョンソンが開発した新型コロナワクチンについて「1回の接種でも高い効果がある」として緊急使用を支持したことで景気回復期待が高まり、この日はハイテク株から資源関連のバリュー(割安)株まで広く買われた。日経平均も496円高と前日の下落分を完全に取り戻す格好に。しかし、25日の米株市場において米長期金利が一時1.6%台まで急騰すると、金利高への警戒感が再燃し、米株市場ではハイテク株を中心に急落。東京市場でもリスク回避ムードが一気に高まり、週末26日の日経平均は1202円安の28966円まで急落した。
■アンワインドの動きに警戒
来週の日経平均は一進一退の展開が予想され、引き続き、米長期金利の動向を睨みながらの神経質な展開となりそうだ。パウエル議長は、「足元で進むインフレは短期的なものにすぎない」、「インフレ目標の達成には3年超の期間を要する可能性がある」などと指摘しており、資産購入についても、「政策目標に対して十分な進展がみられるまで現行のペースでの購入を続ける」としている。このため、インフレ急伸を受けてFRBが早期に資産購入規模の縮小(テーパリング)や利上げに動かざるを得ないのではないかという市場の懸念はやや先走りすぎているとも言える。また、昨年前半はコロナショックで経済が大打撃を受けているため、今後発表される物価関連の指標が前年比で高く算出されることは市場では想定内のはずだ。加えて、FRBは、昨年から「平均物価目標」を取り入れており、一時的に物価目標を超えるインフレ率が実現されても、早期に緩和縮小には動かないことを明確に表明している。FRBは、いまのところ、足元の金利上昇については「経済再開や経済成長への市場の期待の表れだ」とし、特段の警戒感を示していないが、仮にこの先も今のようなハイペースで金利が上がるようなことがあれば、景気回復を図るFRBが黙ってはいないだろう。そのため、目先、長期金利の上昇は続くだろうが、最悪のシナリオでも2%よりは手前の水準で一服するのではないだろうか。ただ、株式市場については、これまでの動きの巻き戻し(アンワインド)などのリスクシナリオも想定して、短期的には高い変動率(ボランティリティー)に警戒しておいた方がいいだろう。これまでは名目金利とともに期待インフレ率も上昇していたため実質金利の上昇は緩やかなものに留まっていたが、足元では期待インフレ率が高止まっており、名目金利の上昇ペースにはついていけていない。実質金利は依然マイナスであるが、急速にマイナス幅が縮まってきている。実質金利のマイナス幅の縮小傾向に対して、これまでの株式市場はあまり大きく調整してきていなかったことを考えれば、調整が長引く可能性もあろう。この先、米長期金利は高くても2%未満、期待インフレ率は2%超の水準で高止まりするとすれば、実質金利は依然マイナスであることが想定され、株式の相対的な魅力はまだ高い。しかし、2月半ばにバンク・オブ・アメリカ(BofA)が公表したグローバルファンドマネジャー調査では、現金比率が過去8年間で最低となっていた。リスクテイクが偏っていたなか金利上昇で急落した今週末には新興国通貨などが大きく売られる現象もみられた。こうしたアンワインドの動きがこの先も広がるようであれば、売りが売りを呼ぶ悪い連鎖となるリスクもあり注視したい。
■インフレヘッジで資源関連物色
物色動向としては、インフレや金利上昇への警戒感からグロース株は総じて軟調継続が想定され、鉄鋼や非鉄金属など資源関連株が相対的には買われやすいだろう。来週は、中国製造業PMIや米国ISM製造業景気指数などの重要経済指標の発表が多いほか原油価格動向のカギを握るOPECプラスもある。予想以上に強い指標結果などが出た場合には、上記のインフレリスクなどを一層織り込む動きとなりやすく、物色動向としても、グロース売りの景気敏感・バリュー買いの様相が強まろう。
■中国PMI、米国ISM、米雇用統計など
来週の主な国内外スケジュールは、3月1日に2月新車販売台数、中国2月財新製造業PMI、米国2月ISM製造業景気指数、2日に10-12月期法人企業統計、3日に米国2月ADP全米雇用リポート、米国2月ISM非製造業指数、4日に米国1月製造業受注、5日に米2月雇用統計などが予定されている。
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