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独立問題はなおポンド下押し要因か【フィスコ・コラム】

注目トピックス 市況・概況
ポンドが堅調地合いを維持し、さらに上値を目指す展開です。スコットランド議会選の結果を受け、独立の可能性が低下したとの見方がその背景にあります。ただ、その問題は今後の風向き次第とも言え、折に触れポンドの下押し要因になりそうです。


足元のポンド相場は春先までの勢いを失ったとはいえ、他の主要通貨に対して底堅い値動きが続いています。特にドルに対する上昇基調は変わらず、長年にわたり下値支持線として機能していた重要な節目である1.40ドルを回復しました。目下、2018年4月の直近高値を目指す展開で、その水準を上抜ければ2016年6月の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票前のレベルに戻すことになります。


ポンドの上昇要因は複数ありますが、新型コロナウイルスワクチンが国民の約半数に行きわたった状況が挙げられます。また、イングランドで実施された広範囲のロックダウン(都市封鎖)が解除される方向です。それらによって経済活動の正常化が期待されており、堅調な経済指標を背景に英中央銀行による資産買い取りの段階的縮小(テーパリング)観測も広がり始めました。


5月6日に行われたスコットランド議会選もポンド買い要因の1つ。イギリスからの独立を掲げるスコットランド民族党(SNP)が129議席中最多の64議席を獲得したものの、単独過半数を1議席割り込みました。SNPは前回2016年から1議席上積みしたとはいえ、独立の是非を問う2回目の住民投票に向け、イギリスからの離脱を目指す有権者の割合が注目された選挙での過半数割れはポンドを勢いづかせました。


ジョンソン首相が今回の選挙前に、仮にSNPが議会選で過半数を獲得しても住民投票の実施を認めない意向を示していたことも、ポンド買い安心感につながったかもしれません。SNPとともに独立を目指す緑の党が6議席から2議席増やしたため、両党を合わせれば過半数を上回ります。ただ、いずれにしてもスコットランド独立の機運は盛り上がりを欠き、住民投票は当面実施されないとの見方が支配的です。


住民投票は2014年9月に初めて実施され、結果は独立賛成45%、反対55%。事前の世論調査よりも差は開いたものの、独立への期待は翌2015年5月のイギリス総選挙でSNPの大躍進につながりました。2016年のEU離脱の是非を問う国民投票では、スコットランドは62%がEU残留を支持。これはウェールズ、イングランド、北アイルランドの3連合国を上回る投票結果となりました。


こうした経緯をたどると、独立への熱意は消滅したとは言い切れません。現在はコロナ克服が人類共通のテーマであり、地域の独立よりも優先されたはず。その意味で、経済正常化を進めるジョンソン政権にとって有利に働いた可能性があります。ただ、パンデミック(感染症の世界的流行)の鎮静化が予想される次回の議会選では独立が再び焦点になりかねず、長期的にポンドの下押し要因であることに変わりはないでしょう。

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


(吉池 威)




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