国内株式市場見通し:3万円回復を占う重要局面
[21/05/29]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 市況・概況
■戻り基調強め週末大幅高で29000円回復
今週の日経平均は大きく反発した。インフレ懸念が後退し、米長期金利が安定していたことに加え、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン価格も落ち着きを取り戻していたことから、週初から半ばまでは、もみ合いながらも、じりじりと上げていく展開となった。結果、25日には、前の週に超えられなかった28500円を終値ベースで回復。27日は、5日続伸していた反動が意識されたほか、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)指数構成銘柄見直しに伴う需給イベントが警戒され、売り先行となり下落して終わった。ただ、後半には下げ渋って28500円は保持した。週末は、需給イベント通過に伴うあく抜け感から買い戻しが強まり、一気に29000円を回復。朝方の買い先行後も騰勢が衰えることはなく、600円高の29149.41円で大引けた。
個別では、週末こそ大きく上昇したものの、東証1部の主力株は、半導体などのハイテク株や値がさグロース(成長)株から、鉄鋼、海運といった景気循環株まで方向感に欠ける動きのものが多かった。そうした中、アフターコロナ関連の戻りが目立った。遅ればせながら日本国内でもワクチン接種の体制が徐々に整備されてきたことや、ワクチンに関するポジティブなニュースを背景に、JAL<9201>、ANA<9202>などの大手航空から、エアトリ<6191>やエイチ・アイ・エス<9603>などの旅行関連、OLC<4661>といったレジャー関連で大きく上昇するものが見られた。
■雇用統計など米経済指標を見極め
来週の日経平均は弱含みか。目先の戻り一服感に加え、重要な経済指標が相次ぐことから、神経質な動きとなりそうだ。
インフレに対する過度な警戒感は後退してきており、足元の米ブレークイーブンインフレ率(期待インフレ率の指標)も米長期金利も落ち着いている。週末に発表された、米連邦準備制度理事会(FRB)が最も重視するPCEコアデフレーター(4月)は前年同月比3.1%上昇し、市場予想(+2.9%)を上回ったが、長期金利はむしろ低下した。また、ビットコイン価格も徐々にだが落ち着いてきた。テスラのイーロン・マスクや、アクティビスト(物言う投資家)で有名なカール・アイカーンらによる要人発言などが背景にある。さらに、直近はビットコイン価格が下げても株式市場の反応は良い意味で鈍くなってきている。
このように、市場の波乱要因となっていたインフレやビットコイン価格を巡る警戒感は一時後退した。しかし、来週は、全米供給管理協会(ISM)が発表する景況指数のほか、週末には米雇用統計など重要な経済指標が予定されている。結果次第では、再びFRBの金融政策方針を巡る思惑が高まるだろう。結果を見極めたいとする様子見ムードから、指数はこう着感を強めそうだ。
既に4月の米消費者物価指数(CPI)などの結果から、インフレ傾向が強いことは相当に織り込んでいるが、問題は、雇用統計だ。4月の雇用統計は市場予想を大きく下回る内容で、強い数値を見込んでいた予想を裏切り、大きなサプライズとなった。背景には、手厚い失業手当が失業者の労働市場への参加を妨げているなど、供給側の要因によるものだった。ただ、共和党が知事を務める州の多くでは、失業手当の延長を廃止する動きが出ている。また、週次新規失業保険申請件数もパンデミック以降の最低水準を更新し続けている。5月の雇用統計は改めて力強い労働市場の回復を示すかもしれない。
そうなれば、7月のFOMCや、8月のジャクソンホール会合でのテーパリング(資産買い入れ額の減少)議論の開始が一層意識されることになる。週末の雇用統計の結果が織り込まれるのは東京市場では翌週となるため、週を通じて雇用統計を前にした様子見ムードが強まりやすい。今週末にかけて大きく戻してきている分、イベント前の警戒感から弱含みの可能性が高い。
そのほか、米ISM景況指数は製造業・非製造業ともに60ptを上回る強い数値が前月まで続いているが、仮に市場予想を大きく下回るようなことがあると、景況感の改善はピークを打ったとの見方から、景気循環株を中心に利益確定売りに押されるシナリオも想定しておきたい。それでも、好不況の境である50ptを上回る傾向は当面続くと予想されるため、長期目線では過度な不安視は不要だろう。また、最近はテーパリング議論の開始に柔軟な姿勢をみせる高官らの発言があっても、動揺はみられていない。テーパリングに対する耐性を徐々に織り込んでいるとも想定される。そのため、雇用統計の結果を受けて波乱があったとしても、長期的には押し目買いの好機になると考えたい。
■アフターコロナ関連に注目
米国の重要経済指標を前にハイテク、グロース、景気循環まで含め、多くが積極的には手掛けづらいだろう。一方、今週に相対的な強さが目立ったアフターコロナ関連の戻り基調に引き続き期待したい。国内でのワクチン接種率の遅れからこれまで上値の重かったテーマだが、接種率の遅れというネガティブ要因は既に相当に織り込んだと思われる。むしろ、今後は、ワクチン接種スピードの加速を見込んだ買いが期待される。
■米ISM景況指数、米雇用統計など
来週は31日に4月鉱工業生産、中国5月製造業PMI、6月1日に、中国5月財新製造業PMI、米5月ISM製造業景況指数、2日に米地区連銀経済報告(ベージュブック)、3日に米5月ADP雇用リポート、米5月ISM非製造業景況指数、4日に4月家計調査、米5月雇用統計などが予定されている。
<FA>
今週の日経平均は大きく反発した。インフレ懸念が後退し、米長期金利が安定していたことに加え、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン価格も落ち着きを取り戻していたことから、週初から半ばまでは、もみ合いながらも、じりじりと上げていく展開となった。結果、25日には、前の週に超えられなかった28500円を終値ベースで回復。27日は、5日続伸していた反動が意識されたほか、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)指数構成銘柄見直しに伴う需給イベントが警戒され、売り先行となり下落して終わった。ただ、後半には下げ渋って28500円は保持した。週末は、需給イベント通過に伴うあく抜け感から買い戻しが強まり、一気に29000円を回復。朝方の買い先行後も騰勢が衰えることはなく、600円高の29149.41円で大引けた。
個別では、週末こそ大きく上昇したものの、東証1部の主力株は、半導体などのハイテク株や値がさグロース(成長)株から、鉄鋼、海運といった景気循環株まで方向感に欠ける動きのものが多かった。そうした中、アフターコロナ関連の戻りが目立った。遅ればせながら日本国内でもワクチン接種の体制が徐々に整備されてきたことや、ワクチンに関するポジティブなニュースを背景に、JAL<9201>、ANA<9202>などの大手航空から、エアトリ<6191>やエイチ・アイ・エス<9603>などの旅行関連、OLC<4661>といったレジャー関連で大きく上昇するものが見られた。
■雇用統計など米経済指標を見極め
来週の日経平均は弱含みか。目先の戻り一服感に加え、重要な経済指標が相次ぐことから、神経質な動きとなりそうだ。
インフレに対する過度な警戒感は後退してきており、足元の米ブレークイーブンインフレ率(期待インフレ率の指標)も米長期金利も落ち着いている。週末に発表された、米連邦準備制度理事会(FRB)が最も重視するPCEコアデフレーター(4月)は前年同月比3.1%上昇し、市場予想(+2.9%)を上回ったが、長期金利はむしろ低下した。また、ビットコイン価格も徐々にだが落ち着いてきた。テスラのイーロン・マスクや、アクティビスト(物言う投資家)で有名なカール・アイカーンらによる要人発言などが背景にある。さらに、直近はビットコイン価格が下げても株式市場の反応は良い意味で鈍くなってきている。
このように、市場の波乱要因となっていたインフレやビットコイン価格を巡る警戒感は一時後退した。しかし、来週は、全米供給管理協会(ISM)が発表する景況指数のほか、週末には米雇用統計など重要な経済指標が予定されている。結果次第では、再びFRBの金融政策方針を巡る思惑が高まるだろう。結果を見極めたいとする様子見ムードから、指数はこう着感を強めそうだ。
既に4月の米消費者物価指数(CPI)などの結果から、インフレ傾向が強いことは相当に織り込んでいるが、問題は、雇用統計だ。4月の雇用統計は市場予想を大きく下回る内容で、強い数値を見込んでいた予想を裏切り、大きなサプライズとなった。背景には、手厚い失業手当が失業者の労働市場への参加を妨げているなど、供給側の要因によるものだった。ただ、共和党が知事を務める州の多くでは、失業手当の延長を廃止する動きが出ている。また、週次新規失業保険申請件数もパンデミック以降の最低水準を更新し続けている。5月の雇用統計は改めて力強い労働市場の回復を示すかもしれない。
そうなれば、7月のFOMCや、8月のジャクソンホール会合でのテーパリング(資産買い入れ額の減少)議論の開始が一層意識されることになる。週末の雇用統計の結果が織り込まれるのは東京市場では翌週となるため、週を通じて雇用統計を前にした様子見ムードが強まりやすい。今週末にかけて大きく戻してきている分、イベント前の警戒感から弱含みの可能性が高い。
そのほか、米ISM景況指数は製造業・非製造業ともに60ptを上回る強い数値が前月まで続いているが、仮に市場予想を大きく下回るようなことがあると、景況感の改善はピークを打ったとの見方から、景気循環株を中心に利益確定売りに押されるシナリオも想定しておきたい。それでも、好不況の境である50ptを上回る傾向は当面続くと予想されるため、長期目線では過度な不安視は不要だろう。また、最近はテーパリング議論の開始に柔軟な姿勢をみせる高官らの発言があっても、動揺はみられていない。テーパリングに対する耐性を徐々に織り込んでいるとも想定される。そのため、雇用統計の結果を受けて波乱があったとしても、長期的には押し目買いの好機になると考えたい。
■アフターコロナ関連に注目
米国の重要経済指標を前にハイテク、グロース、景気循環まで含め、多くが積極的には手掛けづらいだろう。一方、今週に相対的な強さが目立ったアフターコロナ関連の戻り基調に引き続き期待したい。国内でのワクチン接種率の遅れからこれまで上値の重かったテーマだが、接種率の遅れというネガティブ要因は既に相当に織り込んだと思われる。むしろ、今後は、ワクチン接種スピードの加速を見込んだ買いが期待される。
■米ISM景況指数、米雇用統計など
来週は31日に4月鉱工業生産、中国5月製造業PMI、6月1日に、中国5月財新製造業PMI、米5月ISM製造業景況指数、2日に米地区連銀経済報告(ベージュブック)、3日に米5月ADP雇用リポート、米5月ISM非製造業景況指数、4日に4月家計調査、米5月雇用統計などが予定されている。
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