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不透明感広がるベトナム株【フィスコ・コラム】

注目トピックス 市況・概況
ベトナムの主要株価指数VNが今年2度目の大幅安となり、その後も戻りは限定的です。コロナ抑止の優等生だったはずの同国で感染第4波が最悪の被害をもたらし、相場の下げを主導。成長率予想の下方修正が相次ぐなか、目先の動向が注目されます。


VN指数は6月下旬に心理的節目の1400pt台に初めて到達し、次の節目である1500ptを目指す強気なムードが広がっていました。半面、高値警戒感のなか海外勢による売りが目立ち、7月初旬の1420pt付近をピークに失速。それをきっかけに売りが増幅すると、下値支持線とみられていた1300ptも下抜け、7月24日には1240pt台まで水準を切り下げました。


その後は1300pt付近まで持ち直す場面もありますが、全般的に戻りの鈍い展開です。7月19日には米財務省とベトナム中央銀行が共同声明を発表し、米バイデン政権はベトナムの経済ファンダメンタルズに沿って、ドンの変動を容認しています。対米関係の悪化が避けられたため、株式市場では翌20日にそれを好感した買い戻しも観測されましたが、地合いを好転させる決め手にはなっていません。


足元の軟調地合いは、やはり新型コロナウイルス感染第4波が主要因と考えられます。ベトナムは昨年春から夏にかけてコロナ抑止に成功した国として注目されていましたが、ちょうど1年前の7月にダナンで市中感染が広がり、初の死者を記録。その後も制限措置を断続的に実施したものの、第2波、第3波の被害を食い止めることが困難になりました。


7月29日現在、累計感染者数は12万人、死者は600人を超えています。世界的にみれば抑止に成功している方ですが、感染は急拡大。先行きについての楽観論は後退しつつあります。国際通貨基金(IMF)は以前、世界経済見通しでベトナムの2021年成長率を+6.5%と成長加速を予想していましたが、足元ではアジア開発銀行が+6.7%から+5.8%とするなど、有力機関による下方修正が相次いでいます。


最近の株安で売りが強まっているのは主力の銀行や証券、不動産など、高成長の見通しを背景にこれまで相場をけん引してきたセクターが中心となっています。泥沼のような軟調地合いは以前にもありました。今年の年明けに1200ptが視野に入ったところで、1月半ばに急反落すると一気に弱気相場へ転じてほぼ連日の大幅安となり、短期間に20%程度下落しています。


そうした調整が2月以降の強気相場につながりました。この7月の急落も調整になったのは間違いなさそうですが、成長が鈍化するなか8月以降の上昇ペースは緩慢にならざるを得ないとみます。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。




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