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ウクライナ問題と金融政策【フィスコ・コラム】

注目トピックス 市況・概況
ウクライナ情勢の緊迫化を受け、金融市場は動きづらい展開が続いています。外交努力による解決が困難になれば、安全通貨買いはさらに進む見通しです。一方、地域の混迷がより深まれば、金融政策への影響が意識されるかもしれません。


ロシアのプーチン大統領は2月21日、ウクライナ東部にある親ロ派2地域を独立国家として承認しました。その後、情報が錯そうするなか、ウクライナはロシアが同地域に派兵したとして非常事態を宣言。予定されていた米ロ外相会談は見送られ、外交努力による解決への期待は後退しました。ロシアが24日、ウクライナへの軍事侵攻を開始したことを受けて、安全志向的なドル買い、地政学的リスク懸念による欧州通貨売りが観測されました。米バイデン政権もロシアによるウクライナ攻撃を受けて対ロ制裁に踏み切る方針です。


今後は欧米とロシアによる制裁の応酬が想定され、世界経済の腰折れ懸念からNY株式市場は下落基調が鮮明です。ダウは年明け直後に最高値の36000ドル台半ばまで水準を切り上げていましたが、足元は下げ足を速め、32000ドル台まで落ち込む場面がありました。外為市場では安全通貨の円やスイスフランが買われたほか、ドルにも「有事の買い」が入り、主要通貨はドルに対し下押し圧力が観測されました。

そうしたなか、ドル・円は欧米やアジアの株安を背景とした円買いの半面、日銀による緩和政策継続が円売りを誘発。そして、米連邦準備理事会(FRB)の金融正常化を見込んだドル買いが継続しています。3月15-16日の連邦公開市場委員会(FOMC)を前に当局者から引き締めに前向きな発言が聞かれ、足元では利上げの規模やペースが市場シナリオを上回るとの見方から金利先高観は弱まっていません。


もちろん、FRBをはじめ主要中央銀行による今後の金融正常化は、現時点ではほぼ織り込まれています。一方、ウクライナ問題で原油相場は需給ひっ迫の思惑から一時1バレル=100ドルを突破しました。エネルギー価格の急伸が回復を弱める要因と考えれば、正常化シナリオに影響しないとも限りません。ウクライナでの戦闘が長期化すれば、中銀の政策方針と切り離して考えるのは困難です。


FRBの3月利上げサイクル入りの可能性は引き続き高いとみられており、3月以降に発表される雇用やインフレに関する統計の内容次第では50bpの引き上げを見込んだドル買いに振れやすい地合いが続くでしょう。日銀はなお緩和継続の方針を堅持しており、ドル・円は115円台を中心に推移するとみられます。ただ、ロシアの軍事侵攻は事態の混迷をより深めており、ドルは引き続き上値の重い動きとみます。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。




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