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ドル円の上昇ペースは鈍化へ【フィスコ・コラム】

注目トピックス 市況・概況
ドル・円は6年超ぶりの高値水準に値を切り上げ、「黒田シーリング」の125円台を目指す展開との見方も出始めました。ただ、日米金融政策の違いに着目したドル買い・円売りは当面続くかもしれませんが、高値警戒感が広がっているのも事実です。


ドル・円は3月11日に年初来高値を上抜けると、それまでのうっ憤を晴らすかのような値上がり基調が続いています。特に3月18日から円売り主導の値動きで一気に約4円も強含み、1週間で122円台まで浮上。2015年6月に黒田東彦日銀総裁が「実質実効為替レートではかなり円安で、一段安はありそうにない」との発言で円安を反転させた水準である125円80銭台が射程圏内に入ってきました。


背景にあるのは米連邦準備理事会(FRB)による引き締め加速の思惑です。3月15-16日の連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25%の利上げに踏み切りましたが、パウエルFRB議長は3月21日の講演で次回5月3-4日の会合で0.5%に拡大する考えを表明。消費者物価指数(CPI)が約40年ぶりの高水準となり、インフレ高進は顕著に。米ゴールドマン・サックスは6月14-15日の会合も0.5%の利上げを予想しています。


足元で実施された世論調査によると、バイデン大統領の支持率は就任以来最低の40%に低下。11月の中間選挙で民主党は相当苦戦を強いられる見込みで、バイデン政権はFRBを通じてインフレ対応を強めるでしょう。ただ、利上げサイクル入り後しばらく金利高・ドル高が継続しても、FRBの政策方針が徐々に織り込まれるようになればドル買いは一巡し、上昇は抑制される見通しです。


対照的に、黒田日銀総裁は3月18日の金融政策決定会合後の記者会見で、現行の緩和的な政策を堅持すると強調しました。同時に、足元の為替の動向については「日本経済にプラスという基本的構図に変わりはない」と改めて円安を容認。それを受け円売り地合いを強め、主要通貨を押し上げました。ただ、この円売りは「日本売り」ではなく、弱い通貨を狙い撃ちした売りで、やがて一巡しそうです。


ドル買い・円売りのトレンドは継続しても、足元の急激な上昇は抑制されるでしょう。懸案のロシアとウクライナの停戦交渉は難航しているもようで、協議が長期化すれば折に触れ有事のドル買いが強まる一方、リスク回避的な円買いが一段の上昇を阻止しそうです。次の上値メドである2015年12月に付けた123円40銭台を目指すとしても、「黒田シーリング」到達にはある程度時間を要すると予想します。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。




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