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ドル円は底堅さ維持【フィスコ・コラム】

注目トピックス 市況・概況
米連邦準備理事会(FRB)が金融正常化に傾倒するなか、その影響によるリセッション(景気後退)の懸念が浮上しています。実際、経済指標のなかには想定外に弱い内容も目立ち始め、当面は引き締めシナリオと実体経済との視点移動が欠かせなくなりました。


パウエルFRB議長は5月17日の経済紙主催のイベントに出席した際、インフレ抑止を確認できるまで利上げを続けると、従来以上にタカ派色の強い見解を表明しました。それより2週間前の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で利上げ幅の0.75%への拡大には慎重な姿勢でしたが、秋口以降はその可能性も出てきました。「多少の痛み」を伴ったとしても、中立金利までの引き上げを急ぐ考えです。


ただ、足元の経済指標は強弱分かれ、回復持続か減速か見極めるのが難しい、との声が市場関係者から聞かれます。今月発表された雇用とインフレの関連指標は、確かに弱さも散見されます。直近でも、5月16日のNY連銀製造業景気指数は予想外のマイナスに落ち込み、市場を驚かせました。半面、翌17日の小売売上高は予想と一致したほか、前月の上方修正で旺盛な個人消費を示唆しています。


目を引くのは住宅関連です。17日のNAHB住宅価格指数は下振れ予想よりも弱く、2年ぶりの低水準。18日の住宅着工件数は年率換算で前月比-0.2%、建設許可件数はさらに低い前月比-3.2%でした。新型コロナウイルスまん延を背景に郊外の戸建て住宅が脚光を浴び、木材価格の高騰を招くブームになりました。が、住宅ローン金利の高騰による負担の増大で市場は収縮を迫られそうです。


経済界からは、FRBの金融政策運営によりリセッションは避けられないとの観測が浮上。中国の不動産が低迷し、世界経済に不透明感が広がり始めました。そうしたなか、消費者が生活必需品以外の購入を減らし始め、小売り大手ウォルマートの業績は急激な悪化を示しています。インフレ高進が企業業績を圧迫するとの見方が広がり、NY株式市場ではダウが5月に入り年初来安値を更新しています。


青天井に見えたドル・円相場は、このところ失速ぎみです。それでも、日米金融政策の違いを背景としたドル買い・円売りにより、底堅さは維持されるでしょう。欧州中央銀行(ECB)当局者は7月利上げに前向きな姿勢ですが、まだ確証を持てず、ユーロ売り(ドル買い)も継続の見通しです。足元は安全通貨買いの動きがみられ、ドル選好の地合いがドル・円を支えているとも言えそうです。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。




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