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コロナ・ウクライナで破たんのガーナ【フィスコ・コラム】

注目トピックス 市況・概況
2000年代に急成長を遂げた西アフリカのガーナが債務不履行(デフォルト)に陥っています。財政再建の途中にコロナ禍やウクライナ戦争を背景とするインフレ高進や金利高に見舞われ、通貨セディは暴落。新興国の厳しい現実を象徴するケースとみられます。


ガーナ政府は昨年12月、対外債務の支払いに関し一部を停止すると発表し、事実上のデフォルトが決定。対外債務は2019年の270億ドルから2021年に360億ドルと2年間で90億ドルも膨れ上がりました。また、ここ数年のエネルギーや食料品の価格高騰により、昨年11月の国内物価上昇率は前年比+50%超となり、2022年のセディは年初の1ドル=6セディから年末にかけて一時14セディと、半分以下に一時減価しました。


ガーナはかつてのイギリス植民地時代の名残か、西アフリカでは数少ない議会制民主主義国。2001年に発足したクフォー政権の下、政治情勢は安定化に向かいます。それとともに、主力のカカオ豆や金、原油の輸出で経済は成長サイクルに乗りました。ただ、好景気は続いたものの、その頃から公共サービスの拡充などで歳出が拡大し、財政規律が緩み始めました。


2010年代後半になると、金融機関の破産や免許取り消しによる預金者への補償が膨らみます。さらに電力不足解消に向けた投資が財政を圧迫。コスト高が続いたほか、電力輸出も進まず、歳入は計画を下回る状況となりました。米格付け会社ムーディーズは昨年2月にガーナの債券を投機的な水準に格下げを決めました。そこに追い打ちをかけたのがコロナ禍やウクライナ戦争、さらに米金利高によるドル高です。


やはり、2022年に米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめ主要中銀が金融引き締めを強めたことが背景にあるようです。国際通貨基金(IMF)の金融安定報告書によると、新興国リスクを回避する動きが鮮明になり、マネーが流出。スリランカなど西アジアでデフォルトの連鎖が懸念されました。ガーナの場合、開発政策の失敗が根底にありますが、長らく警戒されていた問題がついに表れ始めたようです。


IMFはガーナに対し総額約30億ドルの融資について合意。国内経済の安定化によりインフレ抑制や市場からの信頼回復を目指すことになり、財政健全化に向けた厳しい構造改革が想定されます。これを受けて、セディは持ち直してきています。一方、一部アンケート調査によると、ガーナでは2023年に仮想通貨の購入を希望する人たちの増加が目立っているそうです。やはり国内経済の混乱で、マネーは新しい行き場を求めているのかもしれません。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。



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