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ベトナム市場の復活【フィスコ・コラム】

注目トピックス 市況・概況
*09:00JST ベトナム市場の復活【フィスコ・コラム】
ベトナム株式市場の急回復が目を引きます。指標となるVN指数は今年4月末から上昇基調を強め、3カ月間で15%近く値を切り上げました。背景にあるのは金融緩和。ベトナム政府がインフレを早期に抑止し、成長のテコ入れに乗り出したことが奏功しているようです。


2023年のVN指数は1040ポイント台でスタートした後、旧正月「テト」明け後にいったん下げ、年初来安値を付けます。その後も一進一退の値動きが続くなか、上値の重さが目立ちました。指数はなかなか上昇トレンドを形成できませんでしたが、3月ごろから緩やかに上向き、6月にようやく年初来高値を更新。7月は好調そのもので、約1年ぶりに心理的節目の1200ポイントを回復しました。


昨年のベトナム市場は「悪夢」そのものでした。コロナ禍からの回復を背景に、年初は1500ポイント付近の過去高値圏で推移しました。ところが春ごろから不動産大手の幹部による自社株取引に絡む株価操縦が明らかになり、信用は失墜。投資ブームは潮が引くように縮小していきました。秋になると心理的節目の1000ポイントを割り込み、2020年10月からの上昇分を帳消しにしてしまいました。


足元で株価を押し上げている主要因はベトナム国家銀行(中央銀行)の金融緩和です。同中銀は今年3月、約3年ぶりに政策金利の引き下げを決定。その後毎会合で利下げを重ね、7月まで連続5回も実施しています。ベトナム政府が中銀に要請する形で実行し、政策金利は断続的に引き下げられました。市場では一段の利下げ観測が広がっており、それが指数を大きく押し上げる要因になっています。


世界的なインフレのなか、日本と中国を除く各国中銀は金融引き締めを進めてきました。ベトナム中銀もその1つで、昨年は計2%の利上げを実施しています。しかし、大黒柱の輸出が低迷しベトナム経済は減速。ベトナム中銀は企業や家計の負担を軽減させる目的で、今年は金融政策を逆方向へ転換しました。インフレ指標が中銀目標の+4.5%以内に鈍化したため、緩和政策に舵を切ることができたわけです。


ベトナムの1−3月期国内総生産は前年比+3.3%と、昨年10−12月期の+5.9%から伸びが鈍化。しかし、4−6月期には+4.1%に回復しました。グローバル企業が生産拠点を中国の他地域で確保する「チャイナプラスワン」が寄与しているもようです。台湾や韓国よりも出遅れた分、目先も上昇が期待できそうです。ベトナムの成長が加速すれば、流動性に依存した相場から業績主体の相場に向かうとみられます。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。





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