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英労働党で「分断」【フィスコ・コラム】

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*09:00JST 英労働党で「分断」【フィスコ・コラム】
イギリスの野党・労働党で中東情勢に関する外交方針をめぐり対立が表面化しています。一方、不人気のスナク政権は減税を決定。次期総選挙での政権交代は確実視されるものの、労働党の単独政権発足が困難になれば政治情勢の不安定化でポンド買いは後退しそうです。

 英下院議会に11月15日に提出されたハマスとイスラエルの即時停戦を求める動議の採決で、50人の労働党議員が賛成し、人道的休止を主張するスターマー党首の方針に従わなかったことが問題視されています。「停戦」が交渉に基づく合意、「休止」は戦闘の一時停止との違いがあり、国連でも議論が分かれました。投票結果を受けて、労働党議員10人が「影の内閣」など要職を辞任しています。

 来年にも行われる英総選挙に向けた直近の世論調査では、与党・保守党の20%台に対し、野党・労働党は50%近く。労働党が保守党に大きく水をあける構図は定着し、2010年以来の政権交代が織り込まれています。労働党は左右両派の違いを封印して10年超ぶりの与党への返り咲きを目指し、スターマー氏は党内融和に注力してきました。が、伝統的なイスラエル支持が思わぬ亀裂を生んだと言えるでしょう。

 とはいえ、保守党にとっての追い風とはなりそうもありません。これまで司法相のモラハラ疑惑が浮上したほか、元財務相の納税漏れによる追徴課税、スナク氏自身も公用車でシートベルト不着用など、問題が相次いでいます。わずか45日で退陣したトラス前首相から政権を受け継いだ当初こそスナク氏は難局を乗り切ったと評価されたものの、高インフレによる生活苦を背景に風当たりが強まりました。

 直近ではイスラエル軍のガザ地区への攻撃に反対する抗議デモを「ヘイトマーチだ」と批判した内相を更迭。後任人事で空席になった外相にキャメロン元首相を充て、サプライズを演出しました。ただ、キャメロン氏は2016年の国民投票で欧州連合(EU)離脱を招いて引責辞任し、政界も引退した人物。特に国民から絶大な支持を得ていたわけでもなく、むしろ保守党内の人材難を露呈した格好です。

 スナク氏はインフレ率の半減を公約し、直近はそれを実現。来る総選挙に向け、政権の行き詰まりを打破しようと減税の方針を打ち出しました。ただ、今後の緊縮財政を前提としており、選挙目当ては否めません。労働党は仮に第1党に躍進したとしても党内の分断で単独政権を発足できず、連立を余儀なくされる可能性があります。両党にとって重要局面に差し掛かり、向こう1年はポンド買いを抑える要因となりそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


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