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英総選挙後はポンド売りか【フィスコ・コラム】

注目トピックス 市況・概況
*14:06JST 英総選挙後はポンド売りか【フィスコ・コラム】
イギリスの総選挙に向け、ポンドが上昇基調を強めています。インフレ率の鈍化は緩慢で、英中銀の利下げ時期は後退。ただ、保守党政権の下野と労働党政権発足を市場は確実視。政権交代は十分に織り込まれており、一段のポンド買い要因にはなりづらいでしょう。


2024年のポンド・ドル相場は4月22日に年初来安値の2.2298ドルを付けた後は反転し、1.2780ドル付近に持ち直しています。米連邦準備制度理事会(FRB)当局者が引き締め的な政策方針を堅持しているためドル選好地合いにもかかわらず、ポンドは健闘。英中銀はインフレ指標が想定通り鈍化せず、タカ派的な当局者が早期利下げに否定的な見解を示していることがポンドの押し上げ要因です。


5月9日に開催された英中銀金融政策委員会(MPC)で、現行の引き締め的な政策を維持。16年ぶりの高水準にある政策金利を7会合連続で据え置くことを決定しました。政策決定の過程で利下げの方向性を示す発言が聞かれ、市場ではその時期が8月ごろと推測されています。その後発表された消費者物価指数(CPI)は予想を上回り、利下げ時期の後ずれによりポンドは買いが入りやすい地合いが続いています。


イギリスでは下院議員の任期切れが迫り、7月4日の総選挙が正式発表されました。5月2日の下院補選で、保守党は全敗を喫したほか、支持率調査では労働党が保守党を30ポイントもリード。2022年9月にトラス前政権が発足したものの、政策運営への不安から保守党の支持は暴落しています。このまま選挙戦に突入すれば歴史的大敗は避けられないため、スナク首相は解散に踏み切れなかったようです。


スナク氏は任期直前まで自ら推進した減税とインフレ沈静化による中銀の利下げの相乗効果を通じた景気浮揚を狙うとみられていました。しかし、すでに1-3月期国内総生産(GDP)は前年比+0.2%と昨年10-12月期から順調に回復し、一部の雇用関連指標も改善。下野は避けられないにせよ、成長軌道に乗せたとの見立てにより議席減は最低限に抑えられると判断し選挙日程を決めたのでしょう。


仮にスナク氏のシナリオ通りに景気が回復すれば、ポンドは利下げによる下落から上昇に転じるでしょう。さらに政治情勢のあく抜けによるポンド買いも期待されます。ただ、支持率調査で労働党が保守党を大幅に上回る構図はすでに1年半あまりも続いており、政権交代は既成事実化されています。織り込む期間が長すぎたため、「スターマー政権」発足を確認後はポンド売りの地合いも想定されます。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。



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