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アイスタイル Research Memo(11):ミクシィからのDSP事業取得で広告事業の収益を強化

注目トピックス 日本株

■業績見通し

(2)メディア事業

メディア事業に関しては、国内事業が前期比10%増ペースでの成長が続くほか、海外事業も中国、インドネシアにおける売上が順調に拡大する見通し。セグメント利益は上期比では回復するものの、通期では減益が見込まれる。下期以降の取り組みとして注目されるポイントとして、プレミアム課金サービスの会員獲得施策とミクシィマーケティング社からのDSP「Vantage」事業の取得が挙げられる。

●プレミアム課金サービス会員獲得施策

同社<3660>は「@cosme」から得られる収益基盤の拡充を進めるため、プレミアム課金サービスの会員獲得を強化していく。2013年8月より携帯電話販売店舗での会員獲得をスタートしたことで、会員数は数万人規模にまで拡大したが、新たなプロモーション活動として、同社と会員層が重なる複数の情報サイト運営会社と提携し、相互の有料会員に入会することによるメリットを打ち出した仕組みを導入する。既に女性層を主な会員としている大手情報サイト運営会社との提携がスタートしており、同社ではこうした施策によって会員獲得に一段の弾みをつけたい考えだ。同社のプレミア課金サービスは月額280円(税抜き)となっており、年間の売上高としては2014年6月期で150百万円前後、2015年6月期で300〜400百万円が見込まれ、順調にいけば2015年6月期以降に増益へのインパクトが出てくるものとみられる。

●DSP「Vantage」事業の取得

同社は3月末にミクシィ<2121>の子会社であるミクシィマーケティングから広告配信プラットフォーム事業を取得する。ターゲティング広告などのDSP(注)サービス「Vantage」事業のほか、アドテクノロジー分野に関して高いスキルを保有する人材(35名程度)を迎え入れ、新たに子会社を設立し、広告事業の収益強化を進めていく考えだ。

インターネット広告業界では、広告を単に「媒体」に表示する枠売りの時代から、オーディエンス(利用者)の属性に応じて最適な広告を表示(配信)する時代に変わりつつある。クライアント企業の広告予算が限られる中で、インターネット広告に対する費用配分もFacebookなどのソーシャルメディアの普及によって今後、多様化が進むものと思われる。こうしたなかで、専門サイトとしての「媒体」価値を強みとしている同社にとっても、ターゲティング広告など高成長が続いているアドテクノロジー分野への参入は必然的な流れであったと言える。今回の事業取得により、アドテクノロジー分野の知財や人材も含めて一気にグループ内に取り込めた意義は大きいと弊社ではみている。

ミクシィマーケティングにおいて、「Vantage」のサービスは2013年7月にスタートしたばかりであり、売上実績としてはまだほとんどない。このため今後は、アイスタイルのネットワークなどを活用しながら顧客の獲得を進めていくものとみられる。同システムの性能に関しては、先行企業に対して遜色ないレベルにあるとみられ、「@cosme」で蓄積した膨大な会員やクチコミデータなども活用しながら、クライアント企業から見て投資効果の高い広告配信サービスを提供していくものと期待される。また、同サービスを開始することによって、従来は広告の掲載先が自社グループサイトのみに限定されていたのに対し、他社媒体への配信が可能となるため、クライアント企業の広告予算を今まで以上に最適に運用できることにもつながる。

国内メディア事業の売上は、現時点でその大半がブランディング広告(タイアップ広告)やブランドファンクラブの収入で占められているが、今後はこうしたアドテクノロジー分野の売上構成比も徐々に上がってくるものと予想される。なお、今回の事業取得に伴う2014年6月期の業績への影響としては、当初計画に対して減益要因となる見込み。なお、同社では3月末に同事業に関しての事業戦略を発表する予定となっている。

●EC事業

EC事業の今期売上高は前期比20%増と2ケタ成長を見込む。「@cosme」からの集客効果に加えて、ランキング上位商品の品揃え強化やメーカーとタイアップしたオリジナル商品の販売など「セレクトニッチ戦略」を継続し、増収増益基調が当面続く見通しだ。

化粧品業界では流通規制が細かく制限されており、ECサイトで販売できるブランド数は全体の5%程度と他の業界と比較すると圧倒的に低くなっている。今後、こうした流通規制が緩和されてくれば、品揃えの拡充も進み売上成長ポテンシャルも高まると予想される。

●店舗事業

店舗事業の今期売上高も前期比10%超と2ケタ成長が続く見通しだ。2014年2月末に同社のなかでは大型店舗(70坪)となる「ルミネ有楽町店」を新規オープンした(銀座店を閉店)。新店舗では全国展開するネイルサロンのブースを設けたほか、O2O施策が行えるデジタルサイネージの設置や、ミニイベントの開催が可能な店頭スペースなど集客力を高めるための店舗づくりなどを行っており、基幹店として売上増に貢献していくものと予想される。同社では「@cosme」サイトと連動したキャンペーン活動をリアル店舗でも展開することで、広告効果をより一段と高めて行く戦略を採っている。売上高に占めるプロモーション収入の比率を引き上げることで、利益率の更なる向上も期待される。

●その他事業

その他事業の今期売上高は前期比15%減と唯一減収となる見通しだ。前述したように、料金体系を1月より再度変更しており(順次変更)、またペイパーコールに関しては送客のカウントから除外した影響もあり、この影響が一巡するまで売上高は伸び悩む見通しだ。

一方で、解約率の抑制施策としては、当第4四半期よりサイトのリニューアルを段階的に進めていく。単なる予約サイトの機能としてだけでなく、顧客店舗に対する業務支援ツール(予約管理、顧客管理システムなど)の提供も含めた形でサービスを提供し、解約率の引き下げを目指していく。また、数多くある予約サイトのなかで、利用客が「ispot」のサイトで店舗を検索・予約する流れをつくるため、利用客にとって有益な情報が入手できるような魅力あるサイトに作り替えていくことも重要なポイントとなる。同社ではこれらサイトのリニューアルを進めていくこともあり、黒字化の時期としては来下期を目標としている。

なお、美容サロン・ヘアサロン業界における予約・検索サイトの競合としてはリクルート系列のホットペッパービューティーが最大手としてある。同社は予約管理や顧客管理など業務支援ツールの提供も行いながら契約店舗数を拡大してきた。1契約店舗当たりの月額平均料金は業務支援ツールの利用料も含めて6〜8万円とみられ、「ispot」の1.5万円と比較すると高めの水準となっている。このため、同社においても使い勝手の良い顧客支援ツールや予約サイトが提供できれば、十分契約数の拡大が見込めよう。新規顧客の開拓に当たっては「ispot」が強みとしているエステサロンを中心に開拓していく方針となっている。

(注)DSP(Demand- Side Platform):広告主が広告在庫の買い付けから配信、オーディエンスターゲティングなどを一括して管理できる広告配信プラットフォーム。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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