アデランス Research Memo(1):国内女性市場と海外事業の拡充で再評価の局面へ
[14/06/27]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
アデランス<8170>(以下、同社)は、創業以来国内売上No.1を誇るウィッグ(かつら)のトップメーカー。オーダーメイドウィッグ事業「アデランス」「レディスアデランス」、レディメイドウィッグ事業「フォンテーヌ」、ヘアトランスプラント(毛髪移植)事業「ボズレー」、海外ウィッグ事業「ヘアクラブ」の4ブランドを核に、ウィッグの製造販売、育毛サービス、ヘアトランスプラント事業などをグローバルに展開している。
2000年代初頭に業績のピークを付けた後、過去10年以上にわたって同社の業績は下降トレンドを歩んできた。その間には、シェア低下以外にも、2001年の米国同時多発テロや2008年のリーマン・ショック、2011年の東日本大震災など外部要因にも翻弄される不運もあったが、2011年2月期の赤字計上で大底を付け、2012年2月期には底打ちを見せた。それ以降、2014年2月期まで3期連続で増益が続いており、再び黒字基調が定着したといえる。ただ、利益はピーク時の約3分の1の水準にあり、今後はどういう事業戦略で再度成長を実現していくのか、がポイントになってこよう。
国内のかつら市場の将来について、楽観はできない。男性用かつら市場については、人口分布の変化や人々の意識の変化などを理由として、今後も縮小が続くと考えるべきである。減少のペースは加速することも考えておく必要があろう。対照的に、国内の女性用かつら市場は、今後も緩やかな成長が期待できる。しかし、男性用市場の落ち込みを完全にカバーできるほどの成長性を実現するためには、新たなニーズや市場を創出する努力が必要となる。
同社は、ビジネスにおいてはもちろん、株式投資という観点においても、アートネイチャー<7823>と比較されることが多い。ここしばらくは、同社の業績低迷もあって、株式投資においてはアートネイチャーが選好されてきた。しかし、前述したような厳しい国内市場見通しのもとでは、同社の強みが再評価される可能性がある。なぜなら、国内男性市場が縮小する影響は、当該市場でトップのアートネイチャーにも及ぶ一方で、成長が期待できる国内女性用市場と海外市場においては、同社がアートネイチャーも含めた他の日本企業に対して、現に優位に立っているだけでなく、今後もその優位性を保持できると考えられるからである。
同社は2014年度〜2016年度の3ヵ年中期計画を打ち出している。この3ヵ年計画において、同社が最も重要な業績指標としているEBITDAの3ヵ年累計値は263億円以上に達する計画だ。この数値をピーク時の2000年代初頭のそれと比較することは、シェア水準や市場環境自体が大きく変わってしまっているので、適切ではないだろう。そこで、リーマン・ショック直前の2006年2月期〜2008年2月期の3年間と比較すると、同期間のEBITDA累計294億円に対して約90%の水準にまで回復する見通しだということがわかる。表面上の業績に比して、同社のキャッシュ創出力ははるかに回復してきていると言えよう。同社の経営陣がこの資金を用いて適切な投資を行うことができれば、同社が投資に適う、名実ともに業界のトップ企業の地位に返り咲くことは十分可能だとみる。
■Check Point
・ライバルの攻勢で一時低迷するも、リストラを断行し黒字体質が定着
・売上高はヘアクラブ買収で大幅増、経費削減・円安効果も加わり増益確保
・新中計を発表、国内でのシェア奪取と海外事業拡大で収益成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
<FA>