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アデランス Research Memo(4):ヘアケア市場には多様な商品・サービスがひしめく

注目トピックス 日本株

■ヘアケア市場の分析

前述のように、アデランス<8170>の業績は2000年頃を境に増益基調から減益基調へと大きなトレンド転換を経験した。同社の業績が2012年2月期を底に再び増益トレンドへと回帰できるのかどうかを判断するうえでは、広義のヘアケア市場におけるかつらの優位性の分析が不可欠である。

(1)かつら(ウィッグ)の代替品市場の概要

○入り口はスカルプケア剤
毛髪の悩みに対するヘアケア市場は、ステージごとにいくつかに分類できる。アデランスでは「心理的ハードルの高低」と「利用人口の多寡」という観点から5つの領域に分類している。最も利用人口が多いとみられるのは、「スカルプケア」と呼ばれる領域で、発毛・育毛を促す薬用シャンプーが中心である。これらは医薬部外品にあたる。この分野には、アンファー社の「スカルプD」やラ・ボーテ・ジャポン社の「リガオス」などがある。これらは、シャンプー1本が3,000円〜4,000円の価格帯で、他のヘアケア方法と比較すれば安価で、開始への心理的・財政的ハードルが低い。ただし、効果の面では実感しにくい面があるため、脱落者を新規開始者で補うサイクルがキープできるかがポイントとなる。アデランスも「ヘアリプロ」というブランドでスカルプケア剤を販売しているが、ヘアリプロは単品販売だけでなく、育毛施術サービスでも活用しているため、売り切りが主体のスカルプDやリガオスとの単純比較は難しい。ヘアリプロ関連は、同社が積極的に宣伝を行っていないこともあり、低減傾向にある。

○「リアップ」とかつらとの棲み分け
スカルプケアの一段上が大正製薬の「リアップ」である。これは一般用医薬品(第一類医薬品)である。リアップの主成分であるミノキシジルは、本来は血圧降下剤として開発され、その際の副作用の多毛症を逆手にとって発毛剤に転用されてきたという経緯がある。元来が医薬品であるため、スカルプケア剤よりも効果があるとされるが、個人差があることは否定できず、スカルプケアと同様に、脱落者を新規開始者で補うサイクルが基本的な事業モデルとなっているようだ。「リアップ」シリーズは5,000円〜8,000円の価格帯にあるため、価格面では施術を伴う育毛サービスよりは手軽といえる。したがって、1999年にリアップが発売された結果、同社の育毛サービスの潜在顧客が一定規模は流れたと考えられる。一方で、リアップ自体も右肩上がりというわけではなく、大きな浮沈を経験しながら年商130億円〜140億円と横ばい圏で推移しているというのが最近の状況である。したがって、現時点では、アデランスの手掛ける各種サービスとの間で、棲み分けができているとみて良かろう。ちなみに、リアップの登場以前は、この市場では第一三共<4568>の「カロヤン」シリーズ(第二類医薬品、第三類医薬品)が有名だった。

○大手かつらメーカーのもう一つの主戦場
育毛サービスは、同社やアートネイチャーなど大手かつらメーカーにとっての主戦場の1つであり、かつらに踏み切る前の潜在顧客をしっかりと囲い込むという意味で重要なサービスである。同社は育毛サービスを「ヘアリプロ」「ヘアシーダ」というサービス名で展開している。ヘアリプロの場合、月1回の12ヶ月コースで約29万円、月2回の12ヶ月コースで約52万円(いずれも初年度の価格)となっておいる。スカルプケアやリアップに比較すると桁が違い、特に50万円という価格帯は、同社のオーダーメイドかつらの価格と肩を並べる水準である。同じ50万円を投じるなら増毛効果が確実なかつらを導入しよう、とはいかないところが、いわゆる心理的抵抗の効果であり、育毛サービス市場がここまで成長した主因であると言えよう。

○医薬品「プロペシア」の市場は限定的とみる
男性型脱毛症(AGA)の場合は、「プロペシア」(一般名はフィナステリド)という医薬品が選択肢として存在する。フィナステリドは前立腺肥大の治療薬として発売されたが、その後の研究で男性型脱毛症への効果が認められて、AGA治療薬としても認可された。プロペシアは医師の処方が必要な医薬品であり、この点で、スカルプケア剤(医薬部外品)やリアップ(一般用医薬品)と異なる。プロペシアの処方には医師によるAGAチェックを受ける必要がある。薬剤費は月間約1万円が平均的となっている。AGAの人には有効であるが、逆に言えばAGAに当てはまらない人にとっては選択肢にはならない。日本では2005年12月に発売された。同社の顧客層に対しても一定の影響を及ぼしたと考えられるが、その影響は具体体には不明である。しかし、近年はプロペシアの売上高が減少傾向にあることや、副作用に対する懸念がインターネットなどで話題になっている状況を考えると、プロペシアが将来的に同社の製品・サービスに決定的なダメージをもたらすとは考えにくい。

○ヘアケア用薬剤類の市場規模は600〜700億円
医薬品、医薬部外品を問わず、「発毛」や「育毛」といった効能をうたうスカルプケアおよび発毛剤・育毛剤の市場規模(前掲した「ヘアケア市場のイメージ図」の2段目、3段目、4段目の合計)は、合わせて600億円〜700億円の市場と業界では推定されている。

○「植毛」は医療行為。高価格でかつら以上に導入のハードルが高い
かつらと同様に増毛効果を確実に得られる手段として「植毛」がある。これは、自毛もしくは人工毛を頭皮に埋め込む医療行為であり、医師が外科手術として行う。植毛は料金が100万円単位と高額になることも珍しくなく、消費者にはかつら以上にハードルが高い。近年は韓国やタイなどに渡航して日本よりも安価で植毛を行う消費者も徐々に増えてきているようだが、国内市場においては、かつらと正面からシェア争いをするような存在にはならないと思われる。同社は、国内では植毛サービスを行っていないが、米国では2001年にボズレー社を買収し、植毛事業を展開している。米国では、ボズレー社の年間売上高がおよそ1億ドルでシェア10%と推定されているため、植毛の市場規模としては約1,000億円(1ドル100円換算)と推定される。一方、国内では、ニドーなどの一般企業以外に、クリニックが施術を行っているケースも多く、植毛の市場規模の推計は難しいが、一部の調査機関の調査をもとに約40億円〜50億円の市場との見方がされているようだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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