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アデランス Research Memo(10):海外では北米市場に注力、レディメイドかつら・植毛領域で企業買収

注目トピックス 日本株

■事業の詳細

(3)海外事業

海外展開は論理的に正しい戦略。どうやって成功につなげるかが問題
国内男性用かつら市場のマイナス成長が続く公算が大きい状況にあって、アデランス<8170>が海外に活路を求めるということは理に適った戦略であると弊社では考えている。問題は、同社の過去の海外事業においては、経営への関与度合いが低かったため、市場があるなかで業績を伸ばすことができなかったことだ。救いは、そうした失敗にも関わらず、海外展開を決して諦めてはいないということである。日本市場とは異なり、海外市場では広告宣伝などに多額の投資をして事業を拡大しようとするかつら会社は存在せず、それだけ同社の海外事業の拡大余地は大きいと思われる。ヘアクラブ社を買収したことで、海外でも国内と同様の戦略によって男性市場の拡大が見込めるほか、手付かずの状態である女性向けオーダーメイドでは特に成長が見込まれよう。

○現状の注力市場は北米
同社の海外戦略は、北米、欧州、中国を始めとする3極に及んでいるが、今回のレポートでは、販売の観点から特に重要な北米事業にフォーカスする。

(i)2012年までの概況
○レディメイドかつらと植毛の領域で企業買収
同社は1979年に米国に進出したが、その当時は失敗に終わり、事業を縮小した。国土面積や売れ筋となる価格帯、アフターサービスへの価値観などの点で、日本とは全く市場が異なっており、日本方式を持ち込んでも通用しなかったためだ。その後1980年代後半に再び北米事業を強化した。その際は、初回の経験を踏まえて、レディメイドに特化する形で卸売業者やインポーターなど、主なものだけで5社のかつら関連企業を買収した。また、2001年には植毛のボズレー社を買収した。植毛の分野では2007年にMHR社も傘下に収めた。

○業績面では苦戦が続いてきた
所在地別のセグメント情報(注:2012年2月期以降は開示されていない)に明らかなように、同社の海外事業は、北米が年商100億円規模、欧州が同30億円規模、アジアが同約5億円規模となっている。損益的には、北米は一時的に黒字になったものの、営業赤字基調が定着していた。欧州はコンスタントに1億円〜3億円の営業利益を計上していたが、アジアは内部消去などを勘案すれば実質的には損益トントン程度だったと推定される。

○リーマン・ショック後の2000年代後半にリストラを完了
総括すると、北米においては、進出当初は期待を大きく裏切る結果となったが、その後で強化したレディメイドかつら事業(ウィッグ事業)においては、アデランス・ヘアグッズ(AHG)社を設立し、それまでに買収した5社を統合(2009年)し、植毛事業においてはMHR社をボズレー社に統合(2010年)して、経営のテコ入れを図った。

○欧州は小規模ながら利益体質が定着
欧州は北米に比べて規模が小さく今回はフォーカスしないが、健闘していると言える。同社はドイツ、フランス、ベルギー、イギリス、オランダ、スウェーデンの各国で、それぞれ現地ブランド企業を買収し、そのブランドをそのまま生かして、レディメイドかつらを主体として販売している。欧州は、国ごとに市場構造や消費者の嗜好、ブランドなどに差が大きいため、この販売戦略はこれまで有効に機能している。一方、製品の供給については、同社のフィリピンやタイ等の工場で生産したものを欧州各国の子会社に供給するという体制にしている(ラオス工場が2014年9月から稼働予定)。こうした事業モデルの結果として、欧州地域全体として、営業利益率で10%前後の利益を毎年安定的に計上している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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